先日、文在寅氏が第19代大統領に就任し、新政権が発足した韓国。日本ではこれに先立ち、あらゆる報道機関で韓国大統領選挙が取り上げられた。その中でも目立ったのは、文在寅氏が反日家であるという報道だ。

先月17日、慶大三田キャンパスで「文在寅大統領誕生と新政権の課題」をテーマに、現代韓国研究センター主催の公開シンポジウムが開かれた。ここで有識者たちがしきりに述べたのは、日本の報道に対する疑問だ。韓国では文在寅氏が反日家という認識はない。日本での報道を見て驚く韓国人や、日本人の専門家も多いという。

「垣根は相手が作っているのではなく、自分が作っている」。古代ギリシャの哲学者として知られる、アリストテレスが残した言葉だ。人はあらゆる可能性を自ら遠ざけてしまうことがある。

我々は日々の生活の中、互いをどれほど理解出来ているのか。それは人間関係、はたまた国際社会にも当てはまる。一部分だけを見て判断することは、一体いくらの可能性を逃しているのだろう。

紙の上から離れた問題は、答えを導くのが難しい。より多くの側面を見て、深く理解しようとする姿勢は、きっと新しい可能性につながるはずだ。
(井上晴賀)