企画

山手線新型車導入では全駅再収録 三浦七緒子さんに聞く、鉄道アナウンスの舞台裏

通勤通学中や旅行中といった日常の生活にすっかり馴染み、多くの人が毎日聞いている電車の車内アナウンス。そんな「いつも電車で聞くあの声」の正体は一体誰なのか、興味を抱いている方も少なくないだろう。JR東日本を始め、さまざまな電車の車内アナウンスを担当する声優の三浦七緒子さんに「アナウンスの裏側」を語ってもらった。

三浦七緒子さん(写真=提供)

アナウンスを通して数百万人に届く自分の声

三浦さんが車内アナウンスを担当し始めたのは、2002年デビューの山手線231系に自動放送が取り入れられてから。当時所属していた声優事務所に車内アナウンスのオーディションの話が来たという。「事前に収録したカセットテープを送付する形式でのオーディションだったが、『医療用電子機器に影響を及ぼす』という言い回しが難しかったのを覚えている」と三浦さんは当時を懐かしんだ。

子どもの頃から最も身近な電車が山手線だったという三浦さん。オーディションに合格し、初めてアナウンスを収録した際には自分の声を毎日数百万人が耳にすることに大きな喜びと責任を感じたという。

 

電車アナウンス収録の秘密

電車アナウンスは、「次は渋谷、渋谷です。渋谷の次は、渋谷にとまります」、「池袋、池袋方面、池袋方面と、池袋方面はお乗り換えです」というようにテンプレートを収録し、後から編集で組み替える。そのため、編集した際に不自然に聞こえないよう、語尾を同じように置いたり、同じピッチで読んだりと細かな点を意識しているという。

昨年3月、JR山手線では49年ぶりの新駅である「高輪ゲートウェイ駅」が開業された。新駅ができた際は、駅名だけでなく、乗り入れや乗り換え、方面など多くの情報が変わってくるため、録り直すことが多々あるという。また、山手線新車両導入の際には全駅分再収録したことも語ってくれた。

 

誰に対して、なんのためのナレーションか

現在、JR東日本の在来線全線(自動放送導入車両)のみならず、横浜市営地下鉄グリーンライン新京成線、愛知高速鉄道線、西日本鉄道、札幌市営地下鉄、青い森鉄道、と全国各地の電車内アナウンスを担当している三浦さん。さまざまな地方の駅名の読み方やアクセントの違いに対し、毎回楽しみと同時に難しさを感じているという。「地元の方が耳にして違和感を抱かないようにしたいですね」とアナウンス収録における思いを語った。

「誰に対しての、なんのためのナレーションか」ということを常に心に留めて収録をする三浦さんは、路線によって声のトーンを使い分けるといった工夫を施しているという。たとえば、通勤通学に利用する乗客が多い山手線アナウンスは、特に情報をしっかり聞き取れる声のトーン。対して、常磐線などのレジャーに利用する乗客が多い路線では、山手線よりも少し柔らかめの雰囲気やトーンを意識しているそうだ。

 

あらゆる人に正確な情報を

声優としてテレビやラジオのナレーションなども多数担当している三浦さんだが、電車の車内アナウンスとナレーションでは意識する点が大きく異なるという。

「車内アナウンスは、伝えなければならないことを正確に。かつ、どんな人がどんな時でも耳障りにならないよう、当たり前に情報として聞いてもらえるように心がけています。逆にテレビやラジオのナレーションは、聞いてくれるターゲットを思い、聞いてくださった方が商品だったり、場面だったりを思い浮かべたり耳に残るといいな、と思っています」

 

「かわらぬ日常」の幸せのきっかけに

最後に、電車を利用する私たちへの思いを語ってくれた。

「いつも変わらず耳に入る、いつもの駅に到着の案内や次の駅への案内が、変わらぬ日常の幸せに気付くきっかけとなれればいいな、と思っています。これからも、乗車マナーを守って電車に乗って、学校にお仕事頑張ってください。そして、旅に行ける日が来たら電車に乗って、旅行を楽しみましょう!その際、微妙に違う声のトーンを感じてください」

 

多くの工夫や秘密が隠されている電車の車内アナウンス。時にはスマホを触る手を止め、外の景色を眺めながらアナウンスにじっくり耳を傾けてみてはどうだろうか。

(義経日桜莉)

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