5月の某日、雨の日。取材は鈴木さんが通う慶應義塾大学・湘南藤沢キャンパス(SFC)にて行われた。校舎の出入口付近で緊張しながらしばらく待っていると、傘を持っていなかったのか、頭にPCを抱えながら小走りで青年がこちらへやってきた。私の目に映ったのは等身大の飾らない学生の姿、鈴木福さんその人であった。

2011年・フジテレビ系列「マルモのおきて」でのブレイクを皮切りにテレビドラマに多数出演してきた鈴木さん。今年に入ってからはテレビ朝日系列「仮面ライダーギーツ」でジーン役を演じるなど俳優として大きな飛躍を遂げている。その一方で、日本テレビ系列「ZIP!」の木曜パーソナリティーを務め、“朝の顔”としても奮闘中。そんな彼に慶大での学生生活、俳優業と学業の両立、さらに将来の夢について話を聞いた。

――早速ですが質問させていただきます。慶大に入って2ヶ月が経ちますがキャンパスライフはいかがですか。

めちゃくちゃ楽しいです。ドラマの撮影の影響で休んでしまうこともたまにあるのですが、講義やグループワークなどを通して周りの生徒と交流することができて、ものすごく楽しいです。

――入学前と後では慶應への印象は変わりましたか。

いやー、僕の中では慶應というよりSFCという別の場所に通っているという感覚なので、世間がイメージしがちな“慶應義塾大学”の学生だという実感はないです。SFC生としての自覚は徐々に芽生えてきていますが、キャンパス内の福澤先生の銅像が目に入らない限り、自分が慶應生だと自覚をすることはあまりないです(笑)。

――数ある大学の中で、慶應義塾大学、そしてSFCを選んだ理由を教えてください。

家族や周りの人の助言もあって、大学に通うということはもともと決めていました。小学生の頃から学校と仕事を両立させることで生活のバランスをとってきたので、そのバランスを崩さずに、より一層楽しむことができたらいいなと思っていました。
なぜSFCを選んだのかというと、高校1年生の時にマネージャーさんが「SFCとかいいんじゃない?」と勧めてくれたのが最初のきっかけでした。そこから漠然と興味をもって、SFCについて調べていくうちに、面白そうだなと惹かれるようになり、高校2年生の夏の面談の頃にはSFC一本に絞っていました。それからはAO入試も視野に入れて小論文などSFCに特化した勉強をしていきました。そのころには、他の大学を見る余裕がなくなるほど、SFCに魅了されていました。

――SFC・環境情報学部のどんな部分に魅了されたのですか。

皆さんも感じていると思いますが、テレビや映画といった映像コンテンツの媒体は、テレビ中心からスマートフォン中心に移行しています。そんな時代において、自分も激しい変化に対応していかなければいけません。そんな中で、環境情報学部が掲げる、「時代に対応できる人材を」というアドミッションポリシーを目にしたことが決め手の一つになりました。

――これからSFCで具体的にどんな勉強をしていきたいですか。

1つは表現についてです。俳優としてお芝居をする上でも、ニュース番組のコメンテーターとして発言する上でも表現力は重要です。仕事に活かすためにも、表現について多角的に研究できればと思っています。
2つ目はパターンランゲージについてです。パターンランゲージとは簡単にいえば、「世の中のコツを抽出し、言語化する」ということを指します。子どもの頃から映像業界の現場に携わってきた身として、なにか映像業界や芸能界に還元できるものはないかと考えていた時に、このパターンランゲージに出会い、映画製作のパターンランゲージを作っていきたいと思いました。

【ここで鈴木さんは話すか迷うと前置きをしつつも、一つの野望を語ってくれた。】

今の日本の芸能界って海外に追いつこうとする傾向がある気がしています。でもそれだと海外に勝てないし、追いつこうとした分、海外も進むから結局追いつけないと思うんです。だから海外を真似するのではなく、新しく「日本流」を創って、それを深めていかなければならないと思います。その「日本流」を創っていく上での一つの案として、パターンランゲージを提示していければなと考えています。

――なるほど…。「日本流」を創っていく上でパターンランゲージは具体的にどのように必要になるのでしょうか。

ある方から、ハリウッドなど、海外の作品では、俳優や監督、カメラマンや照明といった技術スタッフ含めみんなが お互いのことを理解した上で撮影に臨むと聞きました。要するにその場での共通言語があるわけです。そのため、円滑に撮影が進むし、より深めて作品を作ることができます。でも日本にはそれがないんです。それぞれの職人が集まって、お互いのことが分からずにぶつかり合うため、話が進まなかったり、妥協が生まれたりしてしまう。そこで、お互いの主張を収めることができて、みんなの真ん中にある共通言語として、パターンランゲージが使えるのではないかと思います。

 

話はうってかわって、鈴木さんの学生生活について聞いてみた。

 

――サークルや同好会など、SFCでやってみたい活動はありますか。

実はサークルには何個か入りました。なんのサークルかは内緒ですが、結構いろいろなサークルに顔を出しています(笑)。あとはSFCには野球サークルがないので、野球好きの仲間と一緒にサークルを立ち上げようかという話はしています。そこの仲間とグローブのメーカーを作りたいっていうのが個人的な夢です(笑)。とにかくやりたいことが多すぎて4年間では足りないというのが心配事です(笑)。

――大学内で声をかけられることはありますか。

ありますあります(笑) 。場所によって迷惑になっちゃうなという時は断っているのですが、握手とかは全然OKです(笑) 。素の状態で学校にいるので、たまに「福くんってほんとにいるんだ」と驚かれることもありますが、話しかけてくれるのはとても嬉しいです。

――今履修している科目で面白い授業はありますか。

それこそ、前半科目で終わってしまいましたが、パターンランゲージの授業は面白かったです。あと、創造社会論もめちゃ楽しかったです。
スポーツビジネスの授業では、野球の球団やサッカーのクラブチームをどう運営していくのかということをメインで勉強している のですが、「ZIP!」のスポーツコーナーや今後の活動で、この授業で学んだことが活きたら良いなと思ってます。

――大学に入ってからライフスタイルで変わったことはありますか。

仕事柄、元々そうだったのですが、今まで以上に起きる時間がバラバラになりました。ドラマの撮影や「ZIP!」の生放送があるので、全体的に早起きになりましたね。

「ZIP!」の生放送が終わった後も、大学へ直行して授業を受けているという鈴木さん。思うように睡眠がとれない日もあるほどのハードな毎日を過ごす中、学校に通うことができるバイタリティの根底にはなにがあるのだろうか。

――学校と仕事を両立することができる要因はなんですか。

1番はどちらも全力で楽しんでいるということですね。あとは、学業と仕事を両立することでどっちにも活きることがあるんですよ。
例えば、歴史上の人物を演じる際、学校で歴史の授業を受けて、前提知識を得た状態で撮影に臨むことで、演技の幅は全然変わってきます。また「ZIP!」などの番組で世の中で起きていることについて詳しくなることで、学校の授業で活かされることも多くあります。学業と仕事のどちらも行き来することで自分が高まっているなというのは感じますね。

【ここで鈴木さんは俳優業を“継続”することへの熱い想いを語ってくれた。】

もしかしたら、これから大学にかける時間を増やしていくかもしれませんが、一つ僕の中で決めていることがあります。それは、学校を理由に俳優業を休業しないということです。このことは中学生の時に決めてからずっと守ってきました。大学生になった今でも、様々なことを経験し、自分のスタイルを作りながら、学校と仕事のどちらも頑張るというスタンスでやっていきたいです。

――中学生の時にそんな決断ができるなんて凄いですね。なにかきっかけはありましたか。

僕って「マルモのおきて」のイメージがすごい強いので、いつになっても「最近よく出てるね」って言われるんですよ。そうではなく、将来なにか、インパクトの大きな役を貰った時に「なんだかんだアイツずっと出てね?」って言ってもらえるように、常になにかしらに出続けるということを大きなテーマとしています。

 

最後に鈴木さんのこれからの目標、塾生へのメッセージについて聞いてみた。

 

――俳優だけでなくパーソナリティーも務めるなど様々な場で活躍されていますが、これからはどんなことに挑んでいきたいですか。

もちろん、肩書きは俳優なのでそこをメインでやっていきたいです。かといってバラエティーに出ないということはしないし、僕にできる仕事は全部全力でやるというスタンスでやっていければなと思っています。

――ズバリ、将来の夢はなんですか。

元々は仮面ライダーになりたくて、その夢が叶った今、次の夢はまだ漠然としていたんですが、創造社会論の最終レポートで自分の未来を想像した時に、やりたいことの整理ができました。まだナイショですが(笑)。
「この作品に出たい」というのはそんなにないのですが、大きな映画やドラマにコンスタントに出ることができるように、俳優として大きく成長していきたいです。なおかつ大学での学びを活かして、なにかやりたいと思ったことを叶えていく努力をしていきたいと思っています。

――最後に同世代の塾生へ向けてメッセージをお願いします。

先輩、同級生問わず、学校で会ったら声をかけてください(笑)。仲良くしましょう!

 

 

 

(吉浦颯大)