After all, tomorrow is another day. --三田の空は澄み、銀杏が歩道に静かな光を落としている。メディアセンターの窓辺に腰を下ろし、正面には沈黙を湛えた旧図書館、左手には秋の光に姿を照らす石造りの塾監局--古き影と光に包まれ、静かにページをめくる。
文学を読むことは、遠い記憶を辿ることに少し似ている。未知の言葉に触れながら、私の輪郭が秋空のように、ほんのわずかに変わっていく。詩の行間に潜む孤独や夢、論理を越えて浮かぶ名もなき問い。
季節は静かに移ろう。銀杏の葉が風に舞い、アスファルトの上で踊る。午後の光が学舎の空気をやわらかく染める。陽は傾き、窓ガラスに映る影がゆっくりと長く伸びていく。校舎の壁が淡く黄金に染まり、やがてその色は群青に溶けていった。足もとに秋の香りが満ち、遠くで講義を終えた声がこだまする。その声の余韻が消えるころ、街の灯がひとつ、またひとつと瞬き始める。
北の空には高く伸びる塔の影。西の坂の先、煌めく街が深い夜にほどけていく。東の海と橋はほのかに光り、南の遠くには静かな港の街が霞んでいる。
ここに根を張っているのか。それとも、見知らぬ世界に憧れているのか。その違和やたゆたいもまた、今の私の一部なのだ。迷いながらも、この場所に少しずつ居場所を見いだしてきた。
プルーストの声が、そっと胸に響く。“La vraie vie, la vie enfin découverte et éclaircie”--本当の人生とは、ついに発見され、照らされるもの。今日の迷いも、明日の光へ。季節とともに、少しずつ言葉のなかに溶けていく。そして今、サークルの代表として、言葉を送り出すよろこびも――丘の下に広がる光の中で、静かに時を待っている。
(金田悠汰)