日吉キャンパスは塾生会館。地下に潜ればそこはミュージシャンたちの巣窟である。大きなギターケースを背負って現れたその人こそ、塩塚萌夏さんだ。オン眉の前髪が、大きな瞳と整った顔立ちによく似合う。オン眉はしばしば非モテの代名詞と揶揄されるが、この瞬間、その定説は破られた。

 

取り出した水色のストラドキャスターは、中学生の頃からの相棒だ。名前も付いているが、「ヒミツ」なんだそう。秘密と言われると余計に知りたくなってしまう。彼女のミステリアスな雰囲気に序盤から翻弄される。

学外でもバンド活動を行い、数多くのフェスやライブハウスで経験を積んできた。今では多い時には月に5~6本のライブをこなす。ボーカルとギターを務め、作詞作曲を手掛ける。日々の小さな出来事を見逃さずに詞に取り込むことを大切にしているという。




家にいるときはずっと曲を作っているそうだ。ギターを弾いているうちにメロディーが浮かんでくるそうだ。30分程度で出来上がるときもあれば、6時間弾いていても浮かばない時もある。「作曲に夢中になって、ギターを持ったまま寝ちゃうこともあります(笑)」。ギターを抱え眠る彼女の姿を想像して思わず口元が緩んだ。

映画好きが高じてミニシアターでアルバイトをしているという。特に好きな映画は『めがね』や『かもめ食堂』のような平和なストーリー。週末によく出没するのは下北沢。好きな場所は「hickory」という古着屋と、「THREE」というライブハウスだ。

好きな男性のタイプを聞くと「細くて、優しい人」とのこと。クールな見た目とは裏腹に、行ってみたいデートスポットはディズニーランド、と女子大生らしい回答が返ってきた。「あまり行ったことがないから、憧れが強いんです」とはにかむ。今すぐ連れて行ってあげたい。あの耳を一緒に付けて、チュロスを無限に買い与えたい。そんな衝動に駆られる。




将来の夢は「プロのミュージシャンになること」と話す。「日常に突きささる音楽を届けたい」。飄々としているようで、その目からは強い意志が伝わってきた。

(バイトリーダー)

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撮影・服部友俊