私は慶大を受験した際に、ひどく不安を感じたことを覚えている。地方の学校から、たった1人で上京して試験に臨んだ。駅も街も見慣れず、受験会場に向かう途中ですれ違う受験生たちは、みんな自言に満ちて見えた。
会場に着くと、周りでは友達同士で話している人も多く、余計に「自分は場違いなのではないか」という気持ちが強くなった。同じ試験を受けに来ているはずなのに、完全にアウェイで逃げ出したくなった。
そんなとき、私が意識していたのは、「ここまで来た事実」だった。この場所に立つまでに、どれだけ勉強してきたか、どれだけ悩んできたか。それは、周りの誰とも比べる必要のない、自分だけの積み重ねである。
休み時間には、周囲を見ないようにして、イヤホンをつけて深呼吸をした。問題の出来を考えるより、「次の試験でやるべきこと」だけに意識を向ける。孤独を消そうとするのではなく、「1人でここに来られた自分」を肯定するようにしていた。
今振り返ると、会場で感じたあのアウェイ感は、実際よりも大きく見えていただけだったのかもしれない。慶大には、地方から来た人も、1人で不安を抱えながら受験した人も、たくさんいる。あのとき会場で感じた「アウェイ感」は、決して自分だけのものではなかった。
地方から1人で試験に向かう受験生は、自言を持って自分の力を出し切ってほしい。不安を感じるのはここまで本気できた証拠である。アウェイに感じる場所に立てている時点で、あなたはもう十分に強い、ということを伝えたい。
(塩野爽空)