新しい環境、新しい人間関係、4月は出会いの季節だ。慶大では附属高出身者、いわゆる内部生の存在が大きい。外部生にとって未知である内部生。彼らがどのような高校生活を送ってきたのかを、内部出身者の情報をもとに内部の各高校を調べてみた。

慶應義塾高等学校
一際目立つ変わった校風
慶應義塾高等学校(塾高)は1948年設立の男子校で、当初は第一高等学校と第二高等学校に分かれていた。現在のように一本化されたのは1949年で、もともとあった麻布新堀町(現在の港区南麻布)から現在の日吉の第一校舎に移ったのもこの年だ。
1学年720人で、慶應義塾普通部、中等部からの進学が4割を占め、残りは高校受験生。2000人超の大所帯で、ほとんどが慶大に進学するため内部生の最大派閥と言える。
また、その人数の多さからか在校生が全員集まる行事はほとんど存在しない。修学旅行というものもないが、選択旅行という制度があり、これは長期休暇の期間中にいくつかのプランから選択して旅行に行くというものだ。3年の間に選択旅行に1回行くことが修学旅行の代わりを果たしている。
塾高には校則と言える校則はほとんどないが、変わった校則が1つ存在する。喫煙防止を目的としたもので通称「ワンボックス」という。トイレの個室に2人以上で入ることを禁止しており、発覚すると1回目でも無条件で停学処分になる。あっても年に1ケースなのだが、男子校であることから処分者が出るとさまざまな憶測を招く校則でもある。
また高校独自の校歌があることは意外と知られていない。しかしながら、入学式、卒業式といった行事で歌われるのは塾歌であり、校歌が歌われることはないため、1回も歌うことなくほとんどの在校生は卒業していく。そのため在校生、OBにもほぼ存在は認識されていない。
塾高が一風変わった高校であることに疑いの余地はない。塾高上がりの塾生に話を聞いてみてはどうだろうか。きっと面白い話が聞けることだろう。

(寺内壮)




慶應義塾湘南藤沢高等部
レポート課題に強み
慶應義塾湘南藤沢高等部(SFC高)は1992年に設立され、慶大附属の高校として一番新しい学校である。校舎は慶大湘南藤沢キャンパス内に位置する。また、国内にある附属校の中で唯一の男女共学校だ。
高校とはいえども、記述一題の試験が実施されるなど、日ごろの授業などの雰囲気が大学に近いものがある。また在学生は全員遺伝子分析の実験を高3時に取り組む。この分析をするための機械は、全国の高校で二校しか持ってない貴重なものである。
SFC高の独自イベントとして、旅行週間というものがある。これは中高の6年間を通して、毎年国内に旅行する行事であり、北海道や四国など高校時代に日本各地を巡ることができる。
SFC高の学生は模擬卒論などをはじめ、レポート課題に多く取り組んでいる。高校時からレポートを書くことに慣れているため、レポート課題に困った人はSFC出身者に協力してもらってはどうか。

(小林知弘)




慶應義塾志木高等学校
多彩な言語を学べる環境
慶應義塾志木高等学校、通称志木高は、埼玉県志木市にある。もともとは農業高校であるという歴史から、志木高の敷地内には豊かな緑が残る。今でも校舎裏の畑では授業の一環でさまざまな作物を育てている。
1学年の人数はおよそ250名、A組からF組の6クラスである。塾高の3分の1ほどであるが、部活は塾高に負けず劣らず活発である。昨年度はバスケ部が関東大会に初出場するなどした。
志木高の一番の特色は「ことばと文化」という総合授業である。イタリア語やドイツ語などのメジャーな言語から、スワヒリ語やヘブライ語などのマイナーな言語まで、23の言語の中から好きなものを選んで学習することができる。もしも志木高生に会ったなら、高校時代に何の言語を学んでいたのか尋ねると面白い話を聞くことができるかもしれない。

(森俊貴)




慶應義塾女子高等学校
幾度となく苦しめる伝統課題
慶應義塾女子高等学校(女子高)は、一学年約190名、4クラス編成の小規模な高校である。校舎は慶應義塾大学三田キャンパスから徒歩3分程に位置する。
女子高では部活動、生徒会活動が盛んだが、中でも学校行事がとりわけ充実している。演劇会、運動会、十月祭の「三大行事」では実行委員を中心として女子高ならではの盛り上がりを魅せる。
そんな女子高生を毎年幾度となく苦しめるのが長年続いている伝統的な課題だ。長恨歌の全文暗唱、一から独自に物語を作り上げる80枚創作、研究員さながらの論文を執筆する国語科レポートである。
そしてもうひとつの最大の敵は異装検査である。女子高の異装検査は先生ではなく生徒会によって年数回、抜き打ちで行われる。校舎に入ると、他の生徒に連絡ができないよう携帯を一時的に預けさせられ、生徒会役員が生徒をひとりずつチェックしていく。化粧、アクセサリー、カーディガン等は禁止されているが、髪色やスカート丈に制限は設けられていないなど独特の校則がある。行事期間の異装は行事での減点につながるので、女子高生にとっては非常にシビアな問題だ。
また、教師による名言も数多く存在する。その中でも「男は踏み台、使い捨て」のフレーズをモットーに、卒業生は皆共学である慶大に進学していくと言っても過言ではない。
このような個性的な伝統を数多く持ち、OGにいつまでも愛される高校が女子高である。

(大橋真葵子)




慶應義塾ニューヨーク学院
授業の7割は英語だが・・・
慶應義塾ニューヨーク学院(NY高)は慶大附属校としては唯一国外に位置する学校である。ニューヨークというビッグネームとは裏腹にニューヨーク州のはずれにあり、木々に囲まれシカなどの動物を見かけることのあるのどかなキャンパスである。
在学生の9割近くは寮生活をしており、その生活は寮則に縛られている。ルールを破るとチェックをつけられ、最終的に部屋謹慎、部活動停止などの処分が科せられる。
その一方で、校則はほとんど無いといえる。もちろん喫煙、飲酒は当然認められていないが、独特の校則として毎週水曜日に制服の着衣義務がある程度で、髪を青色に染めるなどかなり自由な校風だといえる。
また、NY高生は帰国子女といえるほど英語が流暢でない人が多々いる。授業は7割ほど英語で行われるため、全く駄目ではないが、英語の課題をNY高出身者に任せることは懸命と言えないだろう。

(森下玲一郎)