コロナ渦になり、国際交流をしたくてもできない学生もいるのではないだろうか。しかしこの困難を逆手にとって活動をしている学生もいる。そこで、いくつもの国際交流イベントを企画、運営する塾生、松平忠尚さん(政2)に話を聞いた。

松平さんは、慶應義塾大学の福利厚生機関である国際関係会に所属し、幹部役員として活躍している。また1934年より続く日米学生会議に、日本人代表28名の1人として参加するなど精力的に国際交流活動に取り組んでいる。

なぜ国際交流に取り組むのか。きっかけは高校1年生の時のアメリカ留学にあるという。留学先では、現地の学生が普段から政治について熱心に話し合っていた。その様子に衝撃を受け、議論に参加してみると、自分の中の「あたりまえ」が一気に相対化され、見える世界が一変したのだという。

この「あたりまえの相対化」の体験が彼をワクワクさせたと同時に、国際交流の体験が、様々な問題解決の糸口となる可能性を感じたのだ。

帰国後、国際交流が盛んな環境で、移民政策などの日本の政治問題を考えていた松平さん。しかし大学入学直後、国際交流活動が滞っている義塾の状況に強い危機感を持ったという。そこで、「アフターコロナに繋がる国際交流活動」の基盤を作ろうと、国際関係会の幹部に就任した。

国際関係会の大きなプロジェクトとして、松平さんが代表を務めるインターナショナルウィーク(以下IW)がある。

これは、世界23か国の26団体が加盟する国際交流機関、IWCOの東京支部として、海外提携大学から学生を招待するプログラムだ。世界各国の学生による文化、社会、経済的交流を推進するため、約二週間にわたり行われる。

IWCOの幹部メンバーとのミーティング(写真=提供)

今年は新型コロナの感染状況から、義塾に留学している海外の学生を対象にオンラインで行った。例年のようにキャンパスにいる留学生に参加を呼びかけることもできず、参加者を集めるのも一苦労だ。しかし彼は、運営メンバーとともにSNSを使い、「留学生の知り合いはいないか」と片端から友人に声をかけ、国際寮に住む友人にもプログラムを宣伝しに行ったという。そして、今年の2月と8月に無事、当時の代表とともにプログラムを開催することができた。8月に開催されたイベントには、リピーター参加者はもちろん、口コミによって30名もの留学生、50名程の塾生が参加し、猛然と宣伝活動をした成果も得られた。

 

プログラム内の企画も塾生で考えているという。クッキングデイやカルチャーデイなど、日本文化を知ってもらうため、体験型コンテンツをいくつも準備した。この状況下での開催について松平さんは、「泥臭く、諦めずに挑戦し続ける姿勢が大事でした」と語った。

 

また国際交流は手段の一つであり、その場限りにとどまらせてはいけない。江戸時代の近江商人が大切にしていた三方よしの考え方が、国際交流活動でも大切だと松平さんは語る。交流の場を提供する日本人側(売り手)と、そこにやってくる留学生側(買い手)が満足できるイベントを目指すのはもちろん、そこで得たものを社会に還元すること(世間)を忘れてはならない。これこそが国際交流の意義なのだ。

そこで彼は、ズームを閉じた後にも繋がる何かを生み出せるよう模索した。キャリアとして海外で活躍されている方に登壇してもらうキャリアデザイン会や、早稲田大学国際交流虹の会との合同イベントの開催。同じ志を持つ仲間とともに、慶大の日本人学生を対象としていくつもの「成長の場」を提供し続けている。

 

こうした様々な活動を、仲間をけん引しながら成し遂げている松平さん。常に、自分も他のメンバーもワクワクしながら成長できることを目指しているそうだ。国際交流の魅力とビジョンを熱く語り、全てのイベントを成功に導いてきた姿からは、彼の人望の厚さ、国際交流への情熱が伺える。

今年の春から夏にかけては、第73回日米学生会議に日本人代表として参加し、米国の学生と社会問題

 

について議論を交わす日々を送った。日本の学生同士の議論では解決できなかった問題も、異文化の学生と話すことで解決にいくらか近づける。たとえ学生であっても、本音の議論をすることで社会を変えられるかもしれないと、大きな可能性を感じたという。

松平さんの活動はこれだけにとどまらない。IW東京支部の代表を務める傍ら、IWCO の幹部にも立候補した。ソーシャルメディアのマネージャーを務めながら、今まで行った活動を外部に発信していこうとしている。

IWで知り合った、カナダからの留学生との日常的な交流(写真=提供)

最後に、塾生に向けてメッセージを三点語ってくれた。一つは、自分の意志を強く持って行動していくべきであるということ。大学生は何色にも染まれる。自分が染まりたい方向に進めば、社会に出るまでに自分だけの強い色を放つことができるのだ。そして次に、コロナ渦という状況を逆手にとること。今まで見えなかったことに目を向け、「コロナ渦だからこそできること」に挑戦していくべきだという。最後は、国際交流の魅力についてだ。新たな価値観との出会いは、まるで火花が飛び交うような面白さがある。そこで生まれた火種はあなたの今後を変えるきっかけになるかもしれない。是非取り組んで欲しいと語ってくれた。

コロナ渦をチャンスと捉え、皆さんも新たな一歩を踏み出してはいかがだろうか。

 

(家塚彩夏)

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