映画を観ることが好きな学生は多いが、慶大には映画を「観て」「作る」2本立ての活動を行うサークルがある。今回は、学内で唯一のシネマサークル『慶應シネマ研究会』で活動されている長村さん(法2)・村瀬さん(法2)・佐藤さん(法2)に、サークルの活動内容や映画鑑賞・制作の魅力について話を聞いた。
●映画好きが集う 鑑賞×制作の場
―慶應シネマ研究会の活動は
慶應シネマ研究会は、映画を見る部門と映画を制作する部門の2つに分かれています。どちらにも所属することが可能です。まず上映は放課後の時間に教室を借り、スクリーンを使って映画を上映しています。週末はシアタールームなどを借りて夜通しで映画を見るオールナイト上映や、多摩川の河川敷をお借りして野外上映なども行なっています。
制作は、基本的には年に数回行なっています。それに加え不定期で縦型ドラマなどの制作もしていて、現在は次の大きい制作に向けて取材取りやローケーション決めといった準備を行なっています。脚本も既に決まり活動を開始する予定です。他には、夏合宿などいわゆる季節ごとのイベントもあります。
―活動頻度はどのくらいか
上映は基本的に週1、2回です。制作は長期休暇の場合だと集中的に行い、授業時は休日を使って週に1回くらいの頻度で行なっています。他には定例会、勉強会、今後の制作などに関するミーティングがあります。
―現在、会員数はどのくらいか
現在、183人が所属しています。サークルの性質上、映画を見るだけなど様々な楽しみ方があるので、常にいるメンバーは多くて 30〜40人くらいです。
制作の方ですと現場は5、 6人で行なっており、場所取りやキャストさんとの連絡などを含めると、 10人ぐらいで 1つの作品制作に取り組んでいます。
―普段の雰囲気について
映画が好きな人が集まっているので、皆で好きな映画の話やそれ以外のことも含め、同じ温度感で楽しく話す感じです。似たような作品を好きな場合、同じ共通項がある状態で話をするので、自然と仲も良くなりやすいです。初めて入った時から友達を作ることに時間がかからないため、無理に会話を続ける必要もないので、そういった点も魅力だと思います。
上映会だとレンタルスペースを借りて夜通しで映画を見る日もあれば、あまり映画を見ず他の活動を楽しむこともあります。共通の趣味で集まった友達とワイワイ楽しむという感じです。
―上映されている映画はどのようにして決めているのか
上映する映画は季節やイベントによって決めています。新歓期は万人受けしそうな映画を上映しています。夏休み以降は全体グループで見たい映画を募っています。上映する映画については学年の垣根なく、サークル内のニーズに応えつつ、臨機応変にバランスよく選んでいます。
―11月に行われている「まったりしゃべる会」はどのような企画か
普段はどうしても学校を使えるのが2時間弱くらいなので、 映画上映で大半の時間が過ぎてしまい、映画の感想などを語る時間が取れないのが課題でした。そのため、「まったりしゃべる会」では20〜30分のショートフィルムを上映し、それについて30〜40分喋って、その後は好きな映画や映画に対する考え方などについて話す時間をとりました。 9月入会の方も来てくださり、「監督をしてみたい!」など制作に関する話もしました。
―活動をされている中で印象に残っていること
村瀬さん)私が印象に残っている活動は、1年生の5月ごろに行われた上映会です。
上映会では、アメリカを舞台に精神的な問題を抱えた女子高校生を描いた物語が上映されており、自分自身、ストーリーに感動しました。そして上映が終わると、周囲も涙を流している人が多く、初対面同士でありながら感情を隠さずに表現していたことに驚くと同時に、とても嬉しく感じました。仮面を被らず、自分の思いや感情を表現できるところもシネマ研究会の良さだと思います。
長村さん)印象に残っている活動としては、1年の夏合宿です。映画を観るだけでなく、気の合う仲間
たちと時間を共有できたことが強く印象に残っており、シネマ研究会に本気でコミットしようと思ったきっかけでもあります。
佐藤さん)1年生の時に、SFCにおいて撮影を行った制作が印象に残っています。撮影は計画なしに行い、本当に行き当たりばったりで、自転車を借りて繰り返し撮影を行いました。ハプニングがありながらも、とても楽しかったです。
もちろん計画した上で制作には取り掛かりますが、行き当たりばったり的な制作でも実際の上映もでき、記憶に残っています。
―慶應シネマ研究会ならでは映画鑑賞・制作の魅力は
佐藤さん)制作の観点で言えば、自分たちの作品にインスパイアを受けることがあると思います。最近だと映画だけではなくアニメからも脚本や撮影の手法を参考にしています。
村瀬さん)上映の方は、同じ映画が好きでも、お気に入りのシーンや見方は人それぞれ異なっており、様々なことを話す中で気づきを得られるのが魅力だと思います。
また、会員の多くが『Flimarks』という映画・ドラマ専門レビューアプリを使用しています。レビューを長文で書くこともあり、感情を言語化することを日常的にすることは、映画が好きな人独自の習慣だと思います。
●全員でつくり上げる、妥協なき映画制作
―制作される作品ごとの特徴は
例えば新人制作では、1年生で高校から映像を学んでいた人もいれば、映像制作に初めて取り組む人もおり、技能に差があります。そのため、外部で上映することは主要な目標にせず、制作の方法を学んだり、新入生同士の親睦を深めることを目的に取り組んでいます。
一方で、夏季制作は新人制作で培った経験を活かして、20〜30分の長さの映画を制作します。夏期制作では、大学付近の公園や茅ヶ崎といった遠出をして撮影を行います。撮影許可や日程調整など大変なことが多いですが、本格的な制作をすることができます。
―脚本・撮影・照明・音響など映画づくり全てをサークル内で担っているのか
他大学の制作では、カメラマンなどプロの方を雇って撮影することもありますが、慶應シネマ研究会では機材や人員が揃っているため、制作に関わる全てをサークル内で回しています。
―制作過程で大変なこと、また印象に残っているエピソードは
1番大変なことは、脚本やサークル自体に対する方向性の違いだと思います。それぞれがサークルや作品づくりに強い情熱を持っているからこそ、方向性の違いが生じた際には意見がぶつかり合い、激しい議論になることもあります。
例えば今回の制作では脚本家が2名おり、その間で作品の方向性に対する意見の相違が生じて対立が起きてしまいました。また、脚本家と監督が違う場合だと、脚本の意図を作品に反映させるのが難しく、丁寧なコミュニケーションが求められます。他にも、撮影には演者・カメラ・音響など多くの人手が必要となるため、必要なスタッフ全員の予定を調整して揃えることも大変です。
―制作の中で心がけていることは
心がけていることは、なるべく妥協しないことです。脚本に関しては作品の根底になるものですので、脚本が決まった後も期間をとって脚本家と撮影との兼ね合いなどを調整しています。
撮影の段階では撮影場所の下見も行なっています。特に音声や照明も大事にしており、映像が良かったとしても音声や照明が不十分な場合は、撮り直しをしています。音声や照明などは全て欠けてはならない存在だと思っているので、細部まで妥協せず、全体を生かしてくことを大切にしたいと思っています。
―映画制作は何年生を中心に取り組んでいるのか
現在、制作中の作品は脚本も監督も1年生が取り組んでいます。脚本も1年生が積極に出してくれるなど、学年関係なく対等に役割を決め制作に取り組んでいます。
―現在制作中の映画について
まだ公開前なので詳しいことは言えませんが、大まかには大学生の集まりの話で、そこで起きる事件に対して、仲間たちが対処すべく試行錯誤するという感じのストーリーです。ホラーが中心ですが、笑えるシーンも結構あり、バランスのとれた作品になっていると思います。
―完成した作品はどこで上映されるのか
まずはサークルの中で会員の皆さんに見てもらいたいと思っています。また、東宝シネマをはじめ学生団体の試写会など多くの上映会に積極的に出したいと考えています。
―活動で1年生と関わる中で心掛けていることは
1年生と関わる主な活動は新人制作です。新人制作では、撮影や編集の仕方について2年生が教えています。また脚本についても、1年生が執筆した脚本の実現可能性や撮影の可否などを話し合いながらブラッシュアップしています。新人制作で編集や撮影といった専門的な知識を出来るだけ伝授し、夏期制作は学年隔てなくみんなで取り組むことを目指しています。
●映画の魅力をより多くの人に届ける
―慶應シネマ研究会では週1回のPodcastも配信しているとのことだが、それはどのような内容なのか
Podcastは先輩方が2人で担当されており、何かしらのテーマに沿って話をするという企画です。担当されている先輩はサークル内でもトップレベルに映画に詳しく、話も上手いです。
内容は映画の紹介から自分の考えを語るなど、さまざまなテーマで放送しています。映画や制作に対する熱意がありつつも、聴きやすいオープンなPodcastになっているので、シネマ研究会に入っていない方でも楽しめると思います。
●映画をより身近な存在に
―今後の展望は
村瀬さん)映画というのは身近なもので、より気軽な存在であっていいと思っています。そのため、塾生の皆さんがもう少し映画について気軽に触れて語れる環境を作っていきたいと思っています。具体的には中庭や学内のシアターなどを借りて、より大きい規模で上映会を開催したいです。
佐藤さん)制作では、SFCなどキャンパスにおいて撮影を行うことがあります。キャンパス内での撮影は自由度が高く多様なシチュエーションの撮影ができるため、今後もキャンパスをはじめさまざまな場所での撮影を行ないたいと考えています。
―映画が好きな塾生やこれから慶應シネマ研究会への入会を考えている塾生へのメッセージ
村瀬さん)何本見ているか、いつから好きかといった点は関係なく、好きな映画が1本あればそれは映画好きだと思います。学年といった垣根を超えて活動していますので、壁を感じずに来て欲しいです。
佐藤さん)制作に関しては必ず優勝を目指さなければいけないといったお堅い物ではなく、芸術活
動の一種なので、映画が好きな方に限らず幅広い方に興味を持っていただけると幸いです。
また、シネマ研究会のSNSでDMを頂ければ撮影現場の見学なども対応しますので、興味のある方はぜひご連絡いただきたいです。
