昨年度は、史上初のオンライン開催となった三田祭。今年度は、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた上で、感染拡大防止策を講じながら対面形態にて開催される。第63回三田祭の実行委員長を務める清水勝輝さん(文3)にこの異例の三田祭にかける思いを聞いた。

▼対面開催に踏み切った理由はなんでしょうか?

対面を漠然と求めていました。去年のオンライン三田祭を経験して、もちろんその良さにも気づけましたが、やはり塾生の熱気や来場者との一体感は対面でしか実現しえないと思いました。対面かオンラインかの二者択一で迷うよりは、どうすれば対面で開催できるかを考えていましたね。

 

▼昨年から復活したキャッチコピーですが、今年のキャッチコピーはありますか?

はい。「想いを紡ぐ。心を繋ぐ」です。このコロナ禍で多くの人が会えず、孤独感に悩まされている。そうしたなかで、共通の悩みを抱えながらも今まで関わることのなかった人たちが、お互いを思い合い、三田祭という場で一つになる。そのようなイメージを意識しました。

 

▼コロナ禍において、三田祭実行委員会というグループを維持管理するのは、かなり大変ではありませんか?

はい。もちろん感染拡大防止と対面開催の両立も難しい判断でして。これは他大学の事例を参考に、チケット予約制を導入し入場制限を課すなどして対応に努めていますが、なにより財務面や精神面での負担が大きいですね。

昨年の三田祭は、カメラや音響など配信環境の整備を全て外部に委託したことで多額のお金がかかってしまって。コロナ禍で企業協賛も減ったので赤字が続いています。加えて、200人いる実行委員らのつながりも薄くなって、組織全体としてのモチベーションが低下してしまいました。特に新入生は、入学当初からリモート生活を強いられていましたし、相当なストレスを抱えていたはずです。

 

▼それらの課題は、どのように解決されましたか?

まず財務面では、細かな施策を試しました。収入を増やすため企業にひたすら電話をかけ交渉をしたり、OBの方々に寄付金を募ったり。経費削減のために本部の企画費を削ったりもしました。

 

▼委員内での反発もあったかと思います。

少なからず不満はあったし、現に今もあると思います。そこは、財務状況を説明し理解を示してもらうしかなく。ただ、それだけでは不十分なので委員らの精神面を支えるために委員長面談も行いました。少しでも心の安らぎになればと、希望の下級生には30分ほどコミュニケーションの場を設けたんです。

ほかにもオンラインイベントを不定期に開催して、とにかく三田祭実行委員会との接点を失わせてはいけないと思いました。お互いの心がつながらなければ、組織としての一体感は生まれません。

 

▼聞けば聞くほど委員長という仕事の大変さが伝わります。なぜ清水さんは三田祭実行委員長に立候補されたのですか?

やっぱり三田祭が好きだからですね。バンド演奏やお笑いライブなど、好きなことを追い求めた学生たちの輝かしい成果発表の場ですし。三田祭には毎年さまざまな芸能人がゲストとして来てくれますが、僕は2年生の頃にタレントのおのののかさんを招きました。他にも、慶大出身のトリンドル玲奈さんや、過去にはデヴィ夫人も来てくれていて。本当にアイデア次第で無限大の可能性がある学園祭だと思います。

 

▼ウィズコロナの時代において新たな三田祭のカタチが求められていると思います。清水さんは、本年度の三田祭をどのようなものにしていきたいですか?

実は今回の三田祭は来場制限の一環として、来場者を塾生や一部の塾員に限っているんです。外部の方々に来てもらえないのは残念ですが、裏を返せば参加者は皆、慶應義塾という学校に属している。仲間意識はよりいっそう強固になるし、全力で青春を捧げる塾生の情熱を今まで以上に感じ取れると思います。これまで三田祭に興味がなかった塾生にこそ、ぜひ足を運んでもらいたいですね。

 

第63回三田祭は、11月20日から同月23日までの4日間、2年ぶりに三田キャンパスにて開かれる。対面でしか生み出されない、活気に満ち溢れた三田祭の空気感を、ぜひとも現場で味わってほしい。

 

(野田陸翔)