「採用時に学歴も金融知識も重視しない」 現役金融庁職員に聞く 知られざる「国家公務員」の世界

国民の生活を支える霞が関の中央省庁。そこで働く「国家公務員」と聞いて何を連想するだろうか。エリート、安定した給料、堅苦しい、激務。挙げればきりがない。そもそも、「官僚の仕事はブラックボックス」と思われることも多いだろう。

そんなベールに覆われた国家公務員の魅力に迫るべく、学生人気の高い金融庁に勤務する現役職員、伊藤麗花さん(総合政策局秘書課課長補佐・慶大法学部政治学科卒)に話を聞いた。

【プロフィール】
慶應湘南藤沢高等部、慶大法学部政治学科卒業。平成24年入庁後、監督局銀行第一課係員、総務企画局企画課調査室係長、北京大学大学院留学を経て現職。

 

なぜ金融庁を志望したのか

星の数ほどある職業の中からなぜ国家公務員、それも金融庁を志望したのか。伊藤さんは、東アジア国際政治を研究するゼミと、日中韓のビジネスコンテストを運営するサークルでの経験が大きく影響したと話す。「ゼミやサークルの活動を通じて、国の立場で日本とアジア、世界の国々をつなぎ、経済交流ができるような仕事に就きたいと思うようになった」

国際業務が多い金融庁は、金融と国際的な仕事に魅力を感じていた伊藤さんが、まさに追い求めていた職場だったのだ。

 

国家公務員の魅力

金融庁を「非常に風通しの良い職場」と表す伊藤さん。国家公務員は「国民の経済活動や生活を広く支えるスケールの大きさが魅力」だと語る。

国民の日々の生活に関わる国家公務員の仕事に、簡単なものは当然ない。特に、金融業界は勉強しないと分からないことが多く、法学部政治学科出身だったことも相まって、入ってからの勉強量の多さは相当なものだったという。

職業柄、自身の仕事が新聞に掲載されることも多くあり、伊藤さんは「国民の生活を支える仕事をしているという実感と責任感が沸く」と仕事のやりがいを感じている。

若手のうちから国際経験を積めるのも国家公務員の魅力の一つだ。伊藤さんは、それを象徴する出来事として、入庁2年目で海外監督者の国際会議に一人で出席したことを挙げた。

日本当局の代表として発言したが、その際のスピーチ原稿や資料は上司の助言を受けつつ全て一人で作成したという。「周りを見渡しても自分が一番若かった」と伊藤さんは笑顔で当時を振り返る。

 

国家公務員とワークライフバランス

伊藤さんには現在2歳の娘がいる。今年の4月に保育園が見つかり育休から職場復帰したが、育休期間は1年半とかなり長めにとっていた。「産休や育休はどの省庁も企業もあるが、金融庁は非常に取りやすい雰囲気がある」と語る。

復帰後は短時間勤務で働いており、定時が朝10時半から夕方4時半までだという伊藤さん。「霞が関広し、といえども採用担当の総合職で時短勤務している職員はいないのではないか」。そう思うほど、女性が「働き続ける」ということに対して非常に理解のある職場だと感じているという。

 

好奇心を持つことの大切さ

「国家公務員」というと、学閥、特に東大卒が広く幅を利かせているという偏見を持ちがちだ。しかし伊藤さんは、少なくとも金融庁に関しては、採用時に学歴を大きく判断材料にすることはないと否定する。実際、採用時のエントリーシートには大学名を記入する欄がないという。では学生に一体何を求めるのか。その答えは「好奇心」という意外なものだった。

ここ数年の間にフィンテックなどの金融サービスが話題となったことを受け、対応する部署が新設され、組織体制自体も大きく変革したのだそうだ。伊藤さんは、「金融は技術革新と密接につながっている分野。スピードの早い技術革新に対応するためには、好奇心を持って新しいことに積極的に学ぼうとする姿勢が、仕事をする上で大切だ」と語る。

一方で、金融庁は学生に対し、「金融行政官」としての専門的な知識は求めず、学生は新聞程度の知識を持っていれば十分だと伊藤さんは話す。実務で使う金融知識は大学で学ぶ内容とは大きく異なり、入庁後に改めて勉強する必要があるからだという。

これはつまり、「大学時代に金融を専攻していたか否か」は、金融庁での仕事には影響しないということだ。「金融は専門的に見えて間口が広い。お金はあらゆる分野に関係しているため、大学で勉強したことは何らかの形で入庁後必ず強みになる」と伊藤さんは語る。実際、理工学部や法学部系統出身の職員が数多く存在している。

 

学生時代にすべきこと

では、国家公務員を目指す大学生が、学生時代にするべきことは何であろうか。伊藤さんは慶大時代に転機が訪れた自身の経験を踏まえて次のように語る。

「勉強でもそれ以外でも興味を持ったことは失敗を恐れず積極的に挑戦することが大切。それが人生の選択のきっかけの一つになり得る」

また、一般企業の説明会も見て回った自身の経験から、国家公務員以外の世界もぜひ見ておいてほしいという。「『なぜ自分は国家公務員になりたいのか』という志望動機が明確になるので、様々な業界を見ておくことは大切。また仕事をする上で所属する組織の環境も大事であるため、そういう意味でも就活の早期化に流されず、焦らず色々な世界を見てほしい」と伊藤さんは語った。

 

なかなか身近に感じることのない「国家公務員」という職業。今回の取材を通してその一端を垣間見ることが出来た。

(水口侑)