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「70歳で慶大大学院に通った塾員」が語る大学教育の意義

近年多様化する大学での学びの形。大学生が学内で講義を受ける意義が軽薄になりつつある一方で社会人大学院生が増加し「大学(院)で学ぶ重要性」が見直されている。

「学びの機会は自分からつかみにいくもの」。いくつになっても挑戦を忘れず大学教育の本質に向き合い続ける、71歳の元塾生を取材した 。

日本の大学教育の現状と課題

身の回りの友人・自身の大学の講義への向き合い方を思い出してほしい。単位をとることが目的化し、本質的な学びを追求しているとは到底言えないだろう。

日本国内での大学教育の課題として、主に講義内での双方向性に欠けること、生徒の主体性を引き出せていないこと、さらに社会人基礎力の習得が促されていないことなどが挙げられる。

大学教育を享受する側は、どのような環境を選ぶべきだろうか。またどのような姿勢で大学生活を送るのが良いだろうか。

学びの場の理想形「半学半教」が叶うSFCの研究会

理想の学びの場の一例として、吉村さんは自身が所属していた総合政策研究科の研究会を挙げた。

同会には第一に多様なバックグラウンドを持つ学生が集まる。吉村さんのように実務をしながら研究を行う塾生もいる他、地方創生に実際に携わる研究生も所属する。こうした多様な研究員が互いに切磋琢磨し意見を交わすことで、教授と学生間の実にとどまらない 双方向的なコミュニケーションが成立している。

第二に速読と熟読の両者を大切にし、学術的な知識量・語彙力向上が目指されている。こうしたインプットとアウトプットの2本柱に加え、互いに教え合う文化がある。まさに「半学半教」の学びの理想形が達成できている。

吉村さんは「大学はアカデミックな学びを得るためだけの場所ではない。コミュニティ内の関わり合いを通じ、社会に出る下地を身に着ける重要な機会である」と付け足した。必要な力とは、相手の意見を引き出し寄り添う「傾聴力」、相手の発言から真意を見抜く「洞察力」、さらに組織内で気配りを忘れず振る舞う「部下力」の3点だ。

大学教育で三つの社会人基礎力を身に着けることで、実際に社会に出たときの組織内での信頼や将来の自身の活躍につながるだろう。

このように「社会に出ることを見据え、必要な力を逆算して自分から学びに行くこと」が大学教育への向き合い方に必要ではないか、と吉村さんは話す。

経営のプロが語る大学で身に着けるべき社会人基礎力

では大学教育の質向上のために、大学側には何が求められているか。

吉村さんは自身のビジネス経験をもとに、大学と学生の関係をビジネスに置き換えて説明した。

「今の大学教育に必要なのは学生をクライアントとして、相手の立場になって考える『学生視点での教育構想』だと考えます。学生が大学教育で得たい学びについて考えを巡らせ、そこから逆算して講義内容などを考えることで初めて学生の学びが最大化されるのではないか」と話した。

塾生へのメッセージ

大学教育について「ぜひ自身が社会に出て役立つ形の学びを手に入れてほしい。『半学半教』の環境に身を置き、社会人になって役立つ力が身につくよう、大学での学びを最大限吸収してもらえたら」と話した。

最後に「私自身『生涯現役』という言葉を大事にしています。何かを始める上で遅すぎることはないと思います。迷っていたらまず挑戦してみてほしい」と締めくくった。

(南部亜紀)

吉村秀二(ヨシムラシュウジ)氏

(写真=提供)

【略歴】福岡県福岡市出身。1950年生まれ。中央大学大学院修士課程(総合政策研究科)修了後、東証一部上場企業の取締役などを務めた。現在、国内で経営コンサルタント会社を経営。2021年3月、慶大大学院修士課程(政策メディア)を修了した。

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