【500号Project 伝-慶應の足跡-】コンサドーレ札幌 社長 野々村芳和氏

あなたは「伝」という漢字に何を思うだろうか。伝達、伝説、伝統…。今年7月に迎える塾生新聞500号を記念して、「伝」をテーマに社会で活躍されている慶應義塾と所縁ある人物に焦点をあてていく。

8回目は、Jリーグクラブ、コンサドーレ札幌の社長を務める野々村芳和氏だ。

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1972年生まれ、静岡県清水市(現静岡市)出身。 慶応義塾大学を経てジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)に加入。2000~01年にコンサドーレ札幌で活躍し、キャプテンも務める。引退後は、同チームのアドバイザーや解説者として活動するほか、株式会社クラッキを設立し、同社の代表取締役社長に就任。2013年3月22日より現職。近著に「職業サッカークラブ社長」(ベースボール・マガジン社)がある。

地域から世界へ
チームとファンをつなぐ

今年6月、ブラジルでFIFAワールドカップが開かれる。慶大とサッカーの関わりは深く、日本サッカー協会会長の大仁邦彌氏を初め、塾員には日本サッカーに貢献する人が多く存在する。Jリーグクラブ、コンサドーレ札幌の社長、野々村芳和氏もそのうちの1人だ。

サッカークラブの社長の仕事は、新規の観客を集めるため、メディアへの出演や公演を行うこと、またスポンサーの獲得など、多岐にわたる。しかし、それらは突き詰めていくと、「コンサドーレの魅力をどうやって伝えるか」ということにつきる。

魅力にはさまざまなものがある。サッカー自体、世界中でトップスポーツとして楽しまれており、魅力的だということは間違いない。サッカーを軸に日本と世界をつなげることもできる。ほかにも選手やスタッフ、サポーター、地域の人と、数万人の規模で1つのものを一緒に作っていけるということも大きな魅力だ。

しかし魅力があっても、伝わらなければ意味がない。「クラブは地域と世界をつなぐことができる」。そのことを伝えるために、野々村氏が行ったことに東南アジアのスター選手の獲得がある。

昨年、コンサドーレは、ベトナムの英雄と呼ばれるレ・コン・ビン選手、そして今年にはインドネシア代表のステファノ選手を獲得した。東南アジアのスター選手が試合に出ることで、現地でコンサドーレの試合が放送される。すると、東南アジアの人たちに北海道のことを知ってもらえる。加えてレ・コン・ビン選手は、安倍首相がベトナムの国家主席との会談で名前を出すなど想像以上の反響を呼んだ。これはコンサドーレが世界と北海道をつなぐ架け橋になったという点で、地域にサッカークラブがあることの大きな意義を伝えた事例だと野々村氏は語る。

そして野々村氏が伝え続けていることがもう1つある。熱心なサポーターは「お客さん」ではなく「パートナー」ということだ。

昨年、サポーターから、試合開始に向けて応援を盛り上げている中でのキックインセレモニーは応援を中断することになるからやめてほしいという要望があった。しかし、このセレモニーは日頃応援してくれる企業などの来賓が行うものだ。そこで野々村氏は、「言っていることは理解できるが、チームを強くしたいならスポンサーを大切にしなくてはいけない」ということを伝えた。すると、サポーターはホームでの最終戦でトップスポンサーへの感謝の気持ちを大きな横断幕で出してくれたという。それを見て野々村氏は「そういうことをやってくれるのはとてもいいこと。チームがどう成り立っていて、どうやったらチームが強くなるか、多くの人がだんだん理解し始めている」と感じたという。

Jリーガー出身の社長は野々村氏で2人目だ。「サッカーの魅力を十分に知っていて価値もわかっている。自分の商品、つまりサッカーに自信がもてるのは大きい」と野々村氏は話す。コンサドーレの魅力、そしてサッカーの魅力をより多くの人に伝えるべく動き続ける。 (寺内壮)