6月20日は「世界難民の日」。難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、国連機関やNGOなどによる活動に理解と支援を深めるため、2000年12月4日の国連総会で決議された。今年で20回目を迎える。

日本における難民認定率は0.4%と、諸外国と比べても異常に低い。日本では難民の定義自体や難民手続きに関するルールが非常に厳しい。出入国在留管理庁によると、2020年に日本で難民認定を受けた外国人は47人にとどまった。その上、未曾有のコロナ禍が難民に追い打ちをかける。認定NPO法人難民支援協会 代表理事の石川えりさんに、コロナ禍の難民支援について聞いた。

コロナ禍の難民の現状

難民とは、紛争や人権侵害から命を守るために母国を離れ逃げてきた人のことだ。主に国境を越えて逃げることで彼らの命は守られてきたが、新型コロナウイルス感染拡大によって、国境を越えた人の移動が制限されている。支援の現場においても、世界的に国境を越えられないことは深刻な問題だ。

日本国内に避難してきた外国人の生活もコロナ禍で困窮している。在留資格が不安定な人は従来より就労が許可されず、福祉にもアクセスできない。周囲の支援者の失業等により、支援の継続が困難になったり、モスクや教会が閉鎖されたりするなど、周囲のコミュニティに頼ることも難しいのが現状だ。

コロナ禍の難民支援

難民支援協会は、現在、緊急事態宣言中も難民支援を続ける。事務所を週4回開けて対面の支援を継続するほか、電話などを活用したオンラインでの支援を強化している。シェルターの提供や食料の配送、就労支援、病院同行などにも取り組み、支援の形態は多岐にわたっている。また、日本語話者でない難民のために、多言語での情報発信にも力を入れる。

 

入管法改正案への懸念 「#難民の送還ではなく保護を」

5月18日、出入国管理法の改正案の今国会での成立が見送られ、これ以上審議を進めないとの合意がなされた。入管法改正案には、3回目以降の難民申請から強制送還できるようにするなど、日本に逃れている難民の保護を揺るがす内容が多く含まれていた。

改正で切実な影響を受ける人々は、在留資格の不安定さなど、さまざまなリスクから声を上げることが難しい。声を上げられる人が少ない中、支援する団体として「彼らの思いを背負って懸念を伝えていくという使命感」があった。

難民支援協会では、ツイッターで「#難民の送還ではなく保護を」というハッシュタグを活用し、人々の声を集めるキャンペーンを実施した。難民保護の課題を知ってもらい、多くの人に懸念点を考えてほしいとの思いがあった。

このキャンペーンは著名人を含め多くの人が参加し、大きな反響を呼んだ。「多くの方が一緒に声を上げてくださったことが心強いし嬉しい」と石川さんは振り返る。

難民支援のためにできること

「難民の方々の存在や難民認定の厳しさなどの現状を知って、ぜひ一緒に考えて発信してほしい」と石川さんは語る。

「世界難民の日」の6月20日、難民支援協会では事務所からのトークライブhttps://www.refugee.or.jp/report/event/2021/06/refugeeday21/)を行う予定だ。広報部の伏見さんは「難民支援協会の活動や難民について知ることができる貴重な機会。特にコロナ禍で様々な活動が制限されている若者にも見てほしい」と話す。

難民問題の改善には、一人一人が関心を持つことが重要だ。世界難民の日をきっかけに、難民について考えてみてはどうだろうか。

(大平莉緒)

 

【石川えりさん 略歴】1976年生まれ。上智大学卒。1994年のルワンダにおける内戦を機に難民問題への関心を深め、大学在学中、JAR立ち上げに参加。大学卒業後、企業勤務を経て2001年より難民支援協会(JAR)に入職。2008年1月より事務局長となり2度の産休をはさみながら活動。2014年12月に代表理事就任。上智大学非常勤講師。一橋大学国際・公共政策大学院非常勤講師。