《好きの1ページ》第4回 小さなカプセルの大きな世界

街中を歩いていて、ガチャガチャが何十台も並んでいる様子に遭遇したことはないだろうか。ガチャガチャは安価ながらも、その凝った作りと何が出てくるかわからないワクワク感で子どもから大人まで多くの人々を魅了している。

記者が興味を持っているものについて深堀りしていく連載企画「好きの1ページ」。第4回である今回は「ガチャガチャ」に焦点を当てる。電通テックとタカラトミーアーツの共同ブランドである「パンダの穴」の制作に携わった、電通テック社員の飯田雅美さんと小野愛佳さんにお話を伺い、個性的な商品を作り出す秘密を探った。

 

「黒和さん」

「黒和さん」は、ベーカリー「黒和堂」の窯の奥に住む、クロワッサンを模した家族を表現している。

制作を主導した小野さんは、新商品を企画する際に世界共通で知られているものをモチーフとしている。「黒和さん」では、世界共通で食べられているパンを取り上げた。アイデアを深める際は、ネーミングから入ることが多くクロワッサンは「黒和さん」という人の名前でダジャレのように表現できると思ったという。

キャラクターはクロワッサンに見えるようにしなければいけないため、いろいろなお店のクロワッサンを買って研究したそうだ。「クロワッサンの層と層の間や焦げ目、裏側の少し焼けてない部分にこだわった」と小野さんは話した。

クロワッサンを模した家族を表現した「黒和さん」(写真=提供)

 

「今日は何キロ?」

「今日は何キロ?」はパンダの穴が株式会社タニタとコラボして作った商品である。タニタが発売している体重計・体組成計に乗ったさまざまな動物たちが表現されている。

この商品では、動物ごとの体重計・体組成計についてのストーリーが作り込まれている。商品を企画した飯田さんには、体重計・体組成計を広告にするには、ストーリーから商品の情報が導かれるようにしなければいけないという思いがあった。動物たちが載っている商品の特徴を調べて、動物たちの性格、更にストーリーを考えていく。普通だったらありえないような設定がこのガチャの良い部分だと考えているという。このようにして考えられたストーリーを1つ読むと、次は別の動物のものも読みたいと思い、追加で買う人が現れる。最終的には、全種類をコンプリートするために何度も回してもらうことも期待している。

動物のポーズにも工夫がある。飯田さんは、「体重計に乗っているところは普段人に見られない姿であり、その姿はすごく無防備に感じる」と語る。動物が2本足で立ち、下を向いてバランスをとったり力が入っていなかったりするような、普段見ることができない動物の姿を表現した。

体重計に乗った動物を表現した「今日は何キロ?」(写真=提供)

 

ブランド名の由来

飯田さんは「パンダの穴」というブランド名を考える際、動物を含んだ名前で、かつ一見すると意味が分からないけれど、実は意味があるものにしたいと思ったそうだ。

発売した商品が人気になって欲しいという想いから、動物園の人気者である「パンダ」を取り入れた。「穴」という文字は、全てのガチャガチャは共通して穴からでてくる商品であることに由来する。これらを合わせたところ、「パンダの穴」という奇妙な響きのあるワードが生まれたという。

「パンダの穴」ロゴ(写真=提供)

 

新商品の開発

「黒和さん」や「今日は何キロ?」などのユニークな商品はどのようにして生まれたのだろうか。

「『独特な感性』を一つの武器としています。個人個人の感性に着目しており、同じ感性を持つ人は一人もいません。感性は自分の中にあるため、それを引き出すには自分の感性と向き合うことが必要です。自分が面白いと思ったものを外に出していく作業は、独特な感性を表現する最も効率的な方法です」と飯田さんは話した。

ガチャガチャは広告を打ち出せないため、商品そのものの魅力でしか購入者とコミュニケーションがとれない。店頭では100台以上が一気に並ぶため、その中から1商品を選んでもらうのは大変である。ほかでは見たことがないものは、見た瞬間に「何だコレは?」と驚く。今流行っているものや、人のまねをしているものではどこかで見たことがある商品になってしまい、このような感情が生まれない。数ある商品の中から購入してもらうためには、見た瞬間に驚きを感じてもらわないといけない。

「『独特な感性』を活かした商品を発売すれば、購入者が見つけた商品をSNSで自然に拡散してくれるのではないか」と飯田さんは考えたという。広告を出さないことで、自分で商品を見つけた実感が当事者に生まれるというメリットもある。

 

ガチャガチャの企画に関わる方々にお話を伺い、小さなカプセルの中には、企画者の「独特な感性」が詰め込まれていることがわかった。ガチャガチャを見かけることがあったら、コインを握りしめて面白い商品との出会いを楽しんでみてはどうだろうか。

(山本里夏)