9月20日 vs白鴎大学 ○ 98―70
9月21日 vs白鴎大学 ○ 93―91

地元巻き込み盛り上がった筑波大体育館

2部リーグでは恒例行事となっているようだが、7週の期間のうち1週は筑波大の体育館で試合が行われる。秋葉原からつくばエクスプレスが開通し、交通の便が良くなったとは言え東京から遠いことに変わりは無い。その上私の自宅は東京23区の、ほとんど多摩地区と言っても差し支えないような場所にあるため、秋葉原へ行くだけでも一苦労だ。観衆も、明大が会場の時と比べれば少ないだろうと思っていた。
しかし、会場に用意された椅子は全て塞がっていた。到着した時は「ホーム」の筑波大の試合中。筑波大側の応援席は、バスケ部のユニフォームと同じ緑のシャツを来た応援団に占拠されていた。盛り上がりは、明大の時と変わりは無かった。
筑波大のゲームのハーフタイム。微笑ましい光景があった。筑波大チームと地元茨城のミニバスチームとの間でドリブル対決が行われた。結果はミニバスの圧勝(もちろんハンデがあったが)。観客から暖かい拍手が送られていた。
このイベント、地元を巻き込んだ筑波大の取り組みだという。どういう形であれ、このように小さい頃から人の見ている前でプレーさせることは重要だし、昨今言われている地域活性化という点でもプラスになりそうな取り組みだ。2部での普段の試合はもちろん、1部でもこうした取り組みはほとんど無い。各大学が単発的に独自の企画を行うこともあるが、公式戦の中、観客も巻き込んだ形での企画をもっと行ってもらいたい。

慶大から消え去った「先行逃げ切り」の‘形’

さて、慶大であるが、この週の出来も相変わらず、といった具合だった。
初戦は、本来の形である「序盤での先行」が、今年初めて見られた。相手のターンオーバーに付け込み、1Qで33―10。以降は相手もスパートするが、点差は15点差程度に縮まるのみ。最後は28点差を付けて押し切った。
だが、これが続かない。前日の競り合った中盤を再現するかのように、試合は終始決めれば決め返すという、よく言えば目が離せないし、悪く言えばハラハラする展開になった。同点で迎えた試合時間残り4秒、タイムアウト後のオフェンスで混戦からC岩下(2年・芝)がゴール下を決めて2点リード。白鴎大は直後のオフェンス、サイドスローインを繋いでボールはF店橋(慶大・店橋の兄)へ。残り1秒で店橋がゴール正面から放った3Pシュートはあわや、という軌道だったがリングに弾かれた。その瞬間ブザー。連勝ストップは、どうにか免れた。

「一人ひとりがなんとなく集中できていないというか、時々あるね、こういう事が。鈴木(4年・仙台二)が相当声を出して引っ張ろうとしてるんだけど、なかなかうまくいかない……」(佐々木HC)

「(土曜日の初戦は)終盤ちょっとやりあっちゃった感じがあって。メンバーはそのままじゃないですか。それだと(日曜日の2戦目はゲーム前から)競るだろうなと思ってたんですけど……」(鈴木)

春から結果は出ている。しかし、5月から取材をしていていつまで経ってもしっくり来ないことがある。慶大の試合運びだ。格下相手に前半にリードされ、後半に逆転して勝つというパターンが今年は多い。ただ、これは慶大本来の試合運びではない。
慶大の本来のパターンは「先行逃げ切り」。前半から走って点差を広げる。後半に追い上げられても、最後まで粘り、走りきって押し切る、という展開だ。だからこの白鴎大戦は、初戦の試合運びが2戦目でも出来れば、慶大の調子が上向いてきたと見ることが出来た。しかし、2戦目で1点を争うシーソーゲームをやってしまっては意味が無い。

リーグ戦はここまで6戦全勝。慶大の他に6連勝は明大だけだ。だがその明大は、慶大が白鴎大と接戦を演じた直前の試合で順天堂大相手に71点差で完勝。オフェンスもディフェンスも歯車ががっちり合っている。同じ6連勝でも内容は雲泥の差だ。慶大の選手達の表情も浮かない。

「うーん……まあでも、なんと言うか……課題が出て、変に上手くいっちゃうよりは良かったのかな、と。今日も終わった後、何回も色んな話もして、オフェンスもディフェンスももっとやらなきゃいけないのは(選手みんなが)分かったと思ってるし、本当に勝たなきゃいけない相手はこの先に来るんで、その前に修正する機会があるのは非常に良かったと思います」(鈴木)

慶大がここまで明大よりも優位な点は、皮肉っぽい言い方かもしれないが課題がハッキリしていることだ。チームの起点となる堅いディフェンス、リバウンドをもう一度組み立て直す。明大との直接対決は2週間後。まずは次週の拓大戦までにどこまでチーム状態を上向かせることが出来るか。

筑波大撃破!2部リーグで大暴れの国士舘大

前述の通り、これでリーグ戦は第3週までが終了。慶大と明大が下馬評通りに白星を重ね6戦全勝としている。しかし、ここまで「主役」となっているのは今季2部に復帰したばかりの国士舘大だ。開幕戦では慶大を崖っぷちに追い込んだ。勝ちきれなかったが、翌週の早大戦に連勝し、勢いに乗っている。

3週目も、力を見せた。相手は慶大、明大と上位を争う筑波大。会場がその筑波大の体育館ということもあってか土曜日の初戦は終始リードされて敗れたが、翌日は接戦に。筑波大の豊富なインサイド陣を相手に、慶大戦同様C#13馬が奮闘すれば外からは#4寺嶋、#5立花、#10吉満のシュートが決まる得意の展開。だが、2点リードの残り12秒、マイボールのスローインをカットされて追いつかれた。延長戦の末敗れた慶大と同じ展開であった。

「(開幕戦は)あのミスで負けてしまったので。あの時のミスをしないようにしていたんですけど……」(吉満)

だからこそ、吉満の心に火がついた。この前はシュートを打てずに延長戦に入ってしまったオフェンスが繋がる。ボールは吉満へ渡る。「前(開幕戦)は僕のキャッチミスで負けたので、取り返そうと思っていた」吉満が放ったボールがバスケットに吸い込まれると、国士舘大ベンチ、応援席からこの日一番の大歓声が上がった。「(この日は)今まであまり入っていなかったのでホッとした」と吉満は笑う。直後の筑波大オフェンス。ボールは吉満と同じ福岡大附大濠出身のPG#13片峯へ。しかし、残り1秒ではどうすることも出来ない。遥か彼方のゴールに向けて投げられたボールはボードに当たり、リングをかすめることなく床に転がった。筑波大は上位との対戦を前に痛い初黒星を喫し、国士舘大が3勝目をあげた瞬間だった。

「春に良い結果が出せなくて、4年生と一緒に意識を変えなきゃいけないと思いました。練習中に何度も意識を変えようという気持ちを持って、それで徐々に意識が変わりみんなが高まっていって、それがこの結果に繋がったんじゃないかな、と」

トーナメントは3部リーグ所属の駒沢大に初戦で敗北。だが開幕戦の記事でも書いたように、もともと能力の高い選手が揃っているチームだけに、チームが噛み合えば恐い存在ではある。開幕戦に慶大が「噛み合わせてしまった」という側面もあるだろうが。
上位校との対戦が全て終了しないうちに3勝を挙げたことで、国士舘大としては2部と3部を行ったり来たりという近年の状況を打開出来そうだ。可能性は低いが、残り試合を全て勝てば入れ替え戦進出もありうるし、2部リーグでも5位以内に入ればインカレに出場できる。「自分達の力が通用するところまで、残りの全部の試合を頑張りたい」と吉満。インカレでの1部チームとの対戦が、今から楽しみになってきた。

2008年9月23日(更新)

文・写真・取材 羽原隆森