医療系学部を複数抱える慶大だが、その一つである薬学部が東京タワーの麓にある。慶大薬学部は2008年に共立薬科大学(以下、共薬)との合併で誕生したが、前身の共薬から数えると90年を超える歴史がある。また、共薬創立者である小島昇氏も慶大と縁が深い。今回は慶大薬学部の持つ魅力とパワーについて、薬剤師でもある通信塾生記者が薬学部長の三澤日出巳教授を始め、薬学部長補佐の登美斉俊教授、附属薬局長の山浦克典教授よりお話を聞いた。

左より、附属薬局長・山浦克典教授、薬学部長・三澤日出巳教授、薬学部長補佐・登美斉俊教授

 

―近年国より示されている薬学教育モデルコアカリキュラムの改定により、薬学部はより独自性を持った教育が可能となりました。今後どの様なカリキュラムを展開する予定か教えて下さい。

登美 モデルコアカリキュラムが関わる6年制薬学科において、薬剤師になることはゴールではなくスタートラインです。単に薬剤師になるためではなく、その生涯を通じて医療の発展に貢献することを目指した教育は共薬からの伝統です。そして、慶應義塾は未来を先導できる人材の育成を特に重視しています。新たなモデルコアカリキュラムにおいては特に、情報・科学技術を活かす能力や、個別化された薬物治療を実践する能力を磨くことが求められています。情報科学技術の最先端を備えた総合大学としての慶應義塾、そして医薬共同運営講座などを通じて信濃町に拠点を持ち、かつ附属薬局を擁する慶大薬学部は、それら目標を達成するためのカリキュラムを体現できる薬学部です。

 

―慶大薬学部で力を入れている生涯教育について詳しく教えて下さい。

山浦 薬剤師の資質向上を図るための生涯学習プログラムを共薬時代から50年以上に亘り提供しています。現在、全国の薬剤師を対象とする公開講座として、対面形式、オンラインライブ配信形式、実習形式およびワークショップ形式による多彩なプログラムを提供しています。薬学部は、2006年に公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(CPC)より認定薬剤師認証研修機関G04として認証され、研修単位の授与と認定薬剤師の認定を行っています。

 

―今日の医療においては医師や看護師、コメディカルとの連携が不可欠とされています。総合大学である慶大の他大学には無い強みや人材育成について教えて下さい。

山浦 全国約80の薬科大学・薬学部のうち、附属薬局を持つのは7大学のみです。本学附属薬局は2001年に開局した、最も歴史ある附属薬局で、2020年には厚生労働大臣が定める基準をクリアし健康サポート薬局となりました。薬学部構内に設置され、教育施設と保険薬局を両立する附属薬局は本学のみであり、この強みを塾生の教育に活かしています。
また、三学部合同教育では、医学部、看護医療学部と薬学部の学生が一堂に会して学生のうちから交流を深め、将来、患者中心のグループアプローチによる医療が実践できる医療人に成長する教育を行っています。

 

―最後に慶大で学ぶ全ての塾生の皆様へ、薬学部より一言お願いします!

三澤 医療人としての専門教育を受けた薬学部卒業生でも、実際に病院や薬局で薬剤師として働くばかりでなく、メーカーや行政、商社やコンサルなど様々な分野で活躍しています。また慶應の薬学部生は幅広い領域で社会に貢献したいとの強い意思と能力をもち、外部からも評価されています。塾生の皆さん、塾内で出会う薬学部生に積極的に話しかけてみてください。味のある個性的な学生がいっぱいいます。「薬学部で学んだ」ということより、「慶應義塾で学んだ」というアイデンティティーをもつ学生が、「薬学」に取り組んだら何が起こるのか、世の中をどのように変えていくのか、それを世に問うのが薬学部の目標です。「慶應義塾」と「薬学」のケミストリー、これからの薬学部に注目してください。

芝共立の地は慶大・共薬二つの歴史がDNAの螺旋の様に織りなされた奇跡のキャンパスであり、二つのレガシーを受け継ぐ本学薬学部の持つ未来を切り開くパワーを筆者も感じてやまない。

(小関雄介)