今月から新たに始まるコラム連載『学生記者の視点』。弊会会員が気になるニューストピックを厳選し、学生記者ならではの視点で考察していく。第1回のテーマは、「高市内閣の是非を問う」だ。戦後80年を迎えた昨年、日本で初となる女性首相・高市首相が誕生した。政権発足以降、ガソリン税の暫定税率廃止、自民党・国民民主党による年収の壁 178万円への引き上げへの合意など様々な政治改革があった。こうした中、若者は現在の政策や政治状況をどのように受け止めているのか。
それを探るべく、政治への関心が高い弊会会員 18人を対象にアンケート調査を実施した。回答者の内訳は、4年生4人、3年生2人、2年生8人、1年生4人である。キャンパス別では日吉キャンパス所属が9人、三田キャンパス所属が9人だ。性別は男性 12人、女性5人、無回答1人である。本記事では、弊紙1月号にて掲載された記事を基盤とし、より多くの意見を紹介する。
なお、これより扱う意見は2025年12月16日時点までに寄せられた意見であり、最新の政策を反映したものとは限らないこと、全ての意見はあくまで弊会会員の所感であり、「慶應生全体の意見ではない」ことに留意されたい。
内閣支持率は約55%
本アンケートでは、「高市内閣を支持するか」および高市内閣の各政策について全10問を設問し、「支持する」「どちらかといえば支持する」「どちらかといえば支持しない」「支持しない」の4択で回答してもらった。
まず、「高市内閣を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が5人、「どちらかといえば支持する」が5人、「どちらかといえば支持しない」が5人、「支持しない」が3人となり、支持率は55.5%となった。
支持派の理由としては、「市場原理主義・小さな政府を目指す新自由主義(小泉・安倍ライン)の経済政策と一線を画しているため」「高市総理及びその後見人の麻生副総裁は旧宮家の男系男子の皇籍復帰案を支持しているため」「外交関係のこじれなど全面的に支持するところではないが、経済政策を明瞭化しても好転できる突破力を感じるため」といった声が挙げられた。
不支持派からは、「台湾有事発言など、国際協調に対する意識が低いように見受けられるため」「プライマリーバランスの軽視など、財政規律を重視しない姿勢をみせているため」「ポピュリズムに偏りすぎて理論が伴っておらず、外交が不安なため」「高市内閣で示されている積極財政の方針は、経済が刺激され好循環が生まれるのではないかという期待感がある一方で、財政赤字の拡大や国債の増加を招くのではないかと感念しているため」「ジェンダー政策において非常に保守的で、イデオロギーに縛られ現代社会に適した政策立案ができていないと感じられるため」といった意見が寄せられた。
経済財政政策は約 66%が支持
「高市内閣が展開する、財政出動を拡大する経済財政政策を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が4人、「どちらかといえば支持する」が8人、「どちらかといえば支持しない」が2人、「支持しない」が4人となり、支持率は66.6%となった。
支持派からは、「今は多少のリスクを考えても、積極財政を行うべきだと思うため」「公共インフラの整備は安全保障上急務だと考えるため」「石破政権の政策はジリ貧、現在の水準を維持できるかどうかは今の投資によるものだと考えるため」「石破政権のような慎重に長期的な日線で改善を目指す姿勢は、かえって何もしていないように感じられることもあり、高市政権の積極的な姿勢の方が魅力的に感じられるため」「基本的には物価上昇を適度に抑えつつ可処分所得を上げることこそ重要と考えており、そのためにはトヨタがやっているように賃上げ圧を上げるのは重要だし、適度に企業を活気づけつつ企業と渡り合う必要があり、そのためには積極財政政策もどちらかといえば有用であると考えるため」「補正予算の歳出総額の約64%が国債によって賄われている以上、プライマリーバランスの観点から見れば、予算規模は過度に膨らんでいるのではないかという愚念が残るが、物価上昇によって国民生活が厳しさを増している現状において、政府が公共投資や補助金などの政策手段を用いて経済を活性化させることは重要であると思うため」といった意見が見られた。
一方で不支持派からは、「好景気になりつつある今積極財政を行うのではなく、不景気になった際に備えるべきであると考えるため」「長期的な経済成長に繋がるものではないし、そもそも限りない経済成長を求める考え方には賛同できないため。だったらその予算をもっと社会保障に充てて欲しい」といった見方が示された。
物価高対策は約72%が支持
「高市内閣が展開する、生活コストの負担を軽減させる物価高対策を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が6人、「どちらかといえば支持する」が7人、「どちらかといえば支持しない」が3人、「支持しない」が2人となり、支持率は72.2%となった。
支持派からは、「特に値上げが頭著である、ガソリン代・電気代・ガス料金に対する補助金の延長は、物価高によって国民生活が圧迫されている以上必要だと思うため」「自身の生計を直接助けてくれると実感できるため」「医師の診療報酬をあげる必要があるとは思わないが、生活必需品の高騰を防ぐためには高市内閣が展開するような対処が必要だと考えるため」「限定的な減税なら妥協できるため」といった意見が見られた。
一方で不支持派からは、「石破政権とは違い、支援の基準を明確化している以上、当てはまらない層には少々の不公平感があると思うため」「支援策によって財政を圧迫することは将来的な国民の負担増加につながるおそれがあるため」「物価高を打破するためには賃上げがメインだと思うため」といった意見が見られた。
危機管理投資・成長戦略は約83%が支持
「高市内閣が展開する、防衛力を増強させる危機管理投資・成長戦略を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が8人、「どちらかといえば支持する」が7人、「どちらかといえば支持しない」が1人、「支持しない」が2人となり、支持率は83.3%となった。
支持派からは、「安全保障分野はいざ有事となった際外国には頼りづらい以上、一定程度自国内で完結するように整えていくことは必要であると考えるため」「このような分野は国が積極的に関与していかないと成長しないと思うため」「国際市場の動向を考えれば然だと思うため」「安全保障については、日本を取り巻く安全保障環境はかつてなく厳しくなっており、中国や北朝鮮の脅威は顕著になっている状況の中で、防衛費の倍増など安全保障への重点的投資を行うことは当然のことであると考え、AIなど次世代技術分野に関しては、今後日本が国際社会において競争力を維持するために必要不可欠なことだと思うため」「半導体やAIは経済安全保障の要であり、他国との競争に勝つためには国家主導での大規模かつ迅速な投資が不可欠だと考えるため」「石破政権はこの点に関して非常に劣っていたと思われ、対照的にただやっているだけの高市氏の方が政策の明確化が進んでいると感じるため」といった意見が挙げられた。この論点に関して、反対派からは具体的な理由に言及している回答はなかった。
教育・社会制度改革は約83%が支持
「高市内閣が展開する、中間層まで支援の幅を広げた教育・社会制度改革を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が8人、「どちらかといえば支持する」が7人、「どちらかといえば支持しない」が1人、「支持しない」が2人となり、支持率は83.3%となった。
支持派からは、「出生率の低下いかんに関わらず、自分自身が中間層なため、授業料や奨学金などに関する政策がもし自分の代にあればきっと助かると思ったため」「『貧乏人の子沢山』で人数だけ増やされても困る。低所得者層よりも子供を育てる余裕のある中間層をメインに支援していくべきだと思うため」「国際人権規約等の速やかな履行のためには妥当であると考えるため」「支援を拡大することで、教育機会が担保されやすくなるから」といった意見が挙げられた。
一方で不支持派からは、単純に「自分が得をしないから」という意見も挙げられた。「どちらかといえば支持する」と回答した者の中にも、奨学金の対象を中間層へと大幅に広げることについて、「補正予算などで大型の歳出が続く状況下において、さらなる財政負担を生みかねない点は懸念する。財政出動を際限なく拡大するのではなく、本当に必要としている人に重点的に支援を届ける形で運用すべき」との意見があった。
地方・中小企業支援策は約44%が支持
「高市内閣が展開する、より金銭的支援を拡大させた地方・中小企業支援策を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が3人、「どちらかといえば支持する」が5人、「どちらかといえば支持しない」が6人、「支持しない」が4人となり、支持率は44.5%となった。
支持派からは、「日本の経済構造を見れば中小企業の支援は理にかなっているため」「政策としてしなければならないことだと考えているため」といった意見が挙げられた。
一方不支持派からは、「技術が流出するリスクなどはあるが、賃上げの圧に耐えられないような経営を行っている中小企業を延命させる方が社会のためにならないと考えているため」「生産性の低い企業や自治体まで延命させることになりかねない以上、支援対象を厳選し、自立可能な地域や企業へ投資を集中させるべきだと思うため」「地方創生自体は有効な政策ではあるが、むやみに財政出動を拡大させることは健全な財政運営とは言えないと考えている。その点、石破政権が掲げた『対象を厳選した重点投資』の方が、財政の持続可能性という観点からもより望ましい政策運営であると思うため」といった意見が挙げられた。「石破政権が掲げた『地方創生 2.0」を引き継ぎ、地方と都市の格差是正に向けた施策を一層充実させるべきである。そして、地方が活気づくことで日本全体が活力を取り戻すような政策に積極的に取り組んでほしい」との提言もあった。
外交・安全保障政策は約61%が支持
「高市内閣が展開する、日米同盟の強化を中心とした外交・安全保障政策を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が6人、「どちらかといえば支持する」が5人、「どちらかといえば支持しない」が4人、「支持しない」が3人となり、支持率は61.1%となった。
支持派からは、「昨今の厳しい極東情勢を踏まえたうえで、国防の米国依存から脱却を図るためにも国防力強化は必須であり、憲法九条の速やかな改正も必要になってくると思うから」「外交努力は大前提として、防衛力の強化は見逃せないと思うから」「国際情勢が緊迫化する中、防衛力の抜本的強化は平和維持のための抑止力として不可欠だと考えるため。サイバー防衛の創設も現代戦において急務。」「北朝鮮の核開発や中国による台湾有事の懸念など、日本を取り巻く国際安全保障環境は一層厳しさを増している。このような状況下において、抑止力および対処能力の強化は不可避であり、防衛費を GDP比2%水準~拡大する方針や、AI技術を活用した防衛態勢の高度化、さらにはサイバー防衛部隊の創設は、国家の安全を確保するうえで当然の措置であると考えるため」といった意見が挙げられた。支持派の中には、全面的な賛同の意を示したうえで、「対米隷従は是正すべきである。地位協定の改正など、一国で独り立ちできるような制度設計を行って欲しい。」との意見もある。
反支持派は、「不用意な発言から外交危機を迎えかけたので、防衛費も据え置きでいいのではと思う。」「防衛費GDP比2%水準という目標ありきの予算にするべきではないと考えるから。」といった意見を示した。
政治・制度改革は約44%が支持
「高市内閣が検討している議員定数の削減や、政治資金パーティーの透明化の上での条件付き容認などの政治・制度改革を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が6人、「どちらかといえば支持する」が2人、「どちらかといえば支持しない」が2人、「支持しない」が8人となり、支持率は44.4%となった。
支持派からは、「政治活動にはコストがかかるのが現実であり、透明性が確保されるのであれば、資金調達の手段を一律に禁止する必要はないと考えるため」「国民の政治不を払拭するために有効であり、『政治とカネ」の問題に終止符を打つという観点からも良い取り組みだと思うため」という意見が挙げられた。
一方不支持派からは、まず政治資金について「禁止より公開という方針には賛成だが、議論がほとんど進んでいないように感じるため」「政治家の裏金問題の本質は、裏金を貰っておいて仕事をしていないことであると考えており、裏金を受け取っていようと真面目にやっていれば問題ないと思っている。これらの政策は、我々が認識している裏金問題の本質をはき違えていると感じられるため」「高市政権の人事を考えるに、これらの政策も全くの茶番だと思うため」といった意見、議員定数の削減については「議員人数が少なくなると現職が当選しやすくなり、新人や諸政党の意見が通りづらくなるのでは、という懸念があるため」「歳出削減の効果がほとんどないのに対してデメリットが大きすぎるため」「現在の東京一極集中の状況を踏まえると、定数削減は地方選出議員の減少につながりかねず、結果として都市圏と地方の格差を一層拡大させる恐れがあるため」「議員定数法案の提出理由に合理的な根拠がないのにも関わらず拙速に結論が導かれており、挙句「1年以内に結論が出なかった場合、自動的に 45議席を削減する」という強制措置まで盛り込むことで連立政権維持のために定数削減を扱っているとも捉えられるため」「自民党と日本維新の会による何の意味もないポピュリズム的な愚策であるように感じられるため」といった意見が見られた。これらの意見を踏まえ、「時間をかけてでも、与野党、そして国民が納得できる形で丁寧に議論を積み上げていくことこそが求められる」との提言もあった。
ジェンダー政策は約38%が支持
「高市内閣が示す、選択的夫婦別姓や同性婚への反対や男系男子による皇位継承を重視する等の『伝統」を重視したジェンダー政策を支持するか」について尋ねたところ、「支持する」が3人、「どちらかといえば支持する」が4人、「どちらかといえば支持しない」が3人、支持しない」が8人となり、支持率は38.9%となった。支持派からは、「2700年以上も続いた皇統を危険に晒すことにほかならないと感じるから」あまり関心がないから」といった意見が挙げられた。不支持派からは、「旧態依然であるため」「特に選択的夫婦別姓は欧米を中心に広く導入されており、日本のように夫婦同姓を義務付けている先進国は他にないのが現状である以上、『保守』というイデオロギーに縛られ、現代社会に合わない制度や政策を制限するのは合理的ではないと考えるため」といった意見が挙げられた。とはいえ、選択的夫婦別姓、同性婚、皇位継承それぞれに対して異なる見解を持っている会員も多く、一概に「ジエンダー問題」として捉えることができないトピックであることがうかがえる。
今回紹介した意見は弊会会員18人のものに限られており、数字として出た支持率にも偏りがある可能性は否定できない。しかし、このようなとある塾生の視点」を共有することで、塾生全体の政治参画への主体的な意志が育まれることを願う。