【映画評論】奇跡のシンフォニー

奇跡のシンフォニー [DVD]街に耳を傾けてみる。様々な音が一体となり、まるで音楽のように聞こえてくる。そんな経験はないだろうか。楽器に触れ、気の向くままに音を鳴らし続け、無邪気な喜びを覚えたことはないだろうか。

11年と16日間、養護施設で暮らしてきた11歳の孤児エヴァン。しかし彼は、心に聞こえてくる音で両親と通じ合っている、と信じて疑わなかった。ある日、音に導かれるようにニューヨークへと向かうエヴァン。そこでストリートミュージシャンのグループと出会い、彼は初めて楽器に触れる。そしてストリートで演奏を始めたエヴァンは才能を開花させていく。自分の音楽が両親の元に届くと信じて演奏し続ける彼に奇跡は起こるのか……。

自然の奏でる音、さらに都会の喧騒すらもメロディと感じるほど鋭い感性を持つエヴァンを演じるのは、『チャーリーとチョコレート工場』、『ネバーランド』で人気子役となったフレディ・ハイモア。その演技は素晴らしいものだった。

エヴァンは街の音でも楽器の音でも、出会うたびに幸せそうな表情をするが、音を感じているために、あまり喋らない。しかし、フレディは表情や独特の空気だけで見事に天才エヴァンを演じてみせた。特に彼の眼の持つ雰囲気には引き込まれる。

一方、映画の展開としては少しありきたりかもしれない。出来すぎだと思う人もいるだろう。しかし、飽きを感じさせないほど、場面ごとに合った音楽が場面を彩っていく。

チャイコフスキー、バッハなどのクラシックはもとより、ジャンルを超えたロックやゴスペル、さらに日常の音。様々な音が巧みに用いられている。聞き入っていくうちに劇場にいる自分も、音の中に溶け込んでいくかのようだ。さらに、音楽は映画のストーリーを感動へと昇華させていく。音楽の持つ力をまざまざと見せ付けられた。

この作品には魔法もドラゴンも出てこない。しかし、音によって起きる奇跡はまさにファンタジーと呼ぶにふさわしい。特にクライマックスの1曲はこの作品全体を象徴する素晴らしい出来である。

音楽がBGMとしてではなく、物語の中心として前面に出てくる映画は新鮮味も感じられる。音楽好きの人でも、そうでない人でも楽しめる映画だろう。スタッフロールの音楽もじっくり聴いて帰ってほしい。

(太田翔)