辻愛沙子氏のインタビュー記事もいよいよ最終回。4回のインタビュー記事の前半2回では、参院選に関連した話を取り上げた。後半の前編では、彼女自身にフォーカスし、彼女の思考に迫った。

連載記事の最終回となる今回は、辻さんへのインタビューを通じ記者が考えたことを記し、全4回の記事を総括する。

この論考では、「私たちはどう生きるか」というテーマで未来の日本社会の在り方を考える。

私たちはどう生きるか

参院選2022前後に辻さんのTwitterは激しく動いていた。誰かが選挙に行きますと投稿宣言した投稿のリツイート。誰かが選挙の争点に関連する意見を投稿したもののリツイート。時に自分自身の意見、政治の未来への憂いをツイート。議員を名指しで批判することもある。参院選の前後に限らない。社会的な意味を持つ言動・出来事が目に留まると、即座にSNSやメディアで発信する。一般のユーザーとTwitter上でやりあうこともある。彼女はホットな話題に関する意見、論点の提示をすべく、「すぐに」社会に訴えるのだ。

そのスピーディーな行動の原動力はやはり、彼女特有の経験に裏付けられたこの社会への危機感のように感じられる。日本を相対化してみるとこの国にうんざりする。そんな思いが彼女の心の奥底にはありそうだ。例えば、World Economic Forumが先日発表した2022年のジェンダーギャップ指数のランキングでは、日本は146か国中116位。G7(主要7か国)の中では、“いつも通りの”ビリ。GDPでは世界第3位の経済大国の日本が、格差解消・国民の生活しやすい環境づくりに遅れていてはならない。世界の国々と比較し、日本の問題点を発見することが彼女を突き動かしている。

よりよい社会を作るには、「誰か」が「いつか」動けばよいのではない。「みんな」が「日頃から」「主体的に」動いていくことが必要なのだ。今回の連載記事第1回で、辻さんが主体的な政治参加を求める姿を届けた。彼女は、多くの「みんな」の中で目立っている一人にすぎない。だから、他の「みんな」は彼女やほかの目立っている誰かについていけばいい、という短絡的な思考に陥らず、自らの人生経験に裏付けられた意見・信念をもって行動していかなければならない。その際、さまざまな“社会問題”について、「みんな」が“当事者”となり得ることを忘れてはならない。問題だらけの斜陽社会を生み出してはならない。

しばしば、若者は不適切な発言や行動をした政治家や求めている政策を行わない政治に過敏に反応して不平不満を言う。にもかかわらず、「政治に興味がない」、「選挙の日なんて選挙に行くより遊ぶ方が大事だ」なんて言って大切な一票を投じることを避ける。20代以下の若者の投票率は全体の投票率から15%程度低いというのが常態化している。果たして、これが正しい民主主義なのだろうか。文句を言いたいのに、社会に声を届けて代表者を選ぶことのできる機会を自ら逃すことは、ある意味民主主義を破壊する行為なのである。もっと選挙に敏感になってほしい。もっと未来の政治について考えてほしい。

ただし、この日本社会の問題は、政治に関する話に限らない。経済、文化などさまざまな点で日本は課題に直面している。国際社会の中で日本がいかに立ち位置を確立し、成長するのか。多くの国民が日常的に未来の日本社会について想像し、当事者意識を持った多様な視点・価値観がぶつかり合うとき、この社会全体の意識は変革していく。

独特の経験と多様な視点を持つ辻さんの姿は、多くの人々に勇気を与えてきた。特に、若者からの人気は絶大だ。クリエイティブアクティビズムを掲げ、多岐にわたる活動や社会への発信を行う彼女の影響力は今後ますます高まるだろう。そんな彼女からは、今後も目が離せない。

(持松進之介)