辻愛沙子氏に聞く、政治のハナシ~2022参院選に向けて~(前編)

【プロフィール】
辻愛沙子(つじ・あさこ)氏

株式会社arca代表取締役社長、一般社団法人GO VOTE JAPAN代表。arcaでは、クリエイティブディレクターとして活躍、GO VOTE JAPANでは、選挙時の投票率を上げるための取り組みを実施している。毎週水曜日、news zeroに出演中。


#政治  #ジェンダーギャップ  #社会課題  #クリエイティブアクティビズム #newszero。彼女自身・彼女の活動を特徴づけるハッシュタグは数えきれないほどたくさんある。クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんだ。この社会について思うことがあったらすぐ行動に移す。そんな彼女はいったい何者なのか、そして多種多様な活動の先にどんなゴールを見据えているのか。来る参院選に関連して彼女なりの政治の捉え方、そして彼女のアイデンティティと挑戦への意欲に迫る。

(このインタビュー記事は4回に分けてお届けします。)

 

インタビュー記事前半は政治のハナシ。その前編では、辻さんの選挙への意識に注目する。

なぜ、選挙に行くべきなのか

大前提として、日本は全世代的に投票率が低く、未来に対して当事者意識を持つ日本人は多くはない。その原因は、政治が自分たちの生活と結びついておらず、変化を実感できない感覚にある。変化をほとんど実感しなければ、自分たちの生活と政治が密接に結びついているという感覚が醸成されず、人々は政治をどこか遠い存在のものと捉えるようになる。その結果、投票率は全体的に低い状態が続いている。

 

この状態は日本特有のものとも捉えられる。例えば韓国では、今年3月の大統領選での投票率は70%台後半で、若者の投票率も高い。韓国の大統領選では、女性にも兵役を課すか、など生活に直結する関心事項が取り上げられる。この状況が人々(特に若者)の間での当事者意識を呼んだといえる。さらに、韓国のように国民の一票が国の長である大統領を決定するような国は、有権者が直接大統領を選ぶ責任を持つことになる。対して日本では、総理大臣を直接選ぶことは不可能であるため、日本人が選挙権を持つということの責任を自覚しづらい環境があるともいえる。

 

とはいえ、政治システムを大幅に変えることは非常に難しい。日本は日本らしい方法で投票率を上げる策を考えねばならない。まず人々は、長期的な成果を期待して、選挙を“投資”の機会だと捉える価値観が必要だ。平成時代になってから消費税が徐々に上がったように、政治が人々の生活にもたらす変化はゆっくりと現れてくる。遠い将来にしか成果が見えないかもしれないが、とりあえず自分が今送る生活について考えてみよう、くらいの気持ちで選挙と向き合う寛容な姿勢が求められている。ここで重要なのが、「あなたの一票が政治を変える」といったスローガンに圧迫され変に緊張しないことだ。普段は生活に必死で考えないようなこと選挙を機会に自分がどう思っているか、と考え、社会のことに対する自分の意見を静かに表明する場として選挙があるのが望ましい。

 

 

若者の主体的な政治参加にむけて

次に、令和の時代を生きる若者の投票を促す策について聞いた。昔は、皆がテレビなどの共通するマスメディアを利用していた時代だった。それに対し、現代では、インターネットやSNSの発達や趣向の多様化により情報のパーソナル化が進んだ。その結果、情報を得るルートが人によって異なるような世の中になった。テレビや新聞のみから情報を得る人もいれば、インターネットのゴシップサイトを頼る人もいる。ユーチューブから情報を得る人ですら、人によって見るチャンネルがバラバラだ。統一した情報源がないので、同じ情報をみんなが受け取ることが少なくなったのが今の時代である。これは決して悪いことではなく、むしろライフスタイルに合わせ情報を選択できるようになり、個々人の選択肢や多様性が増えた点で、望ましい世界の形成に向けた流れと捉えられる。多様な発信方法が認められている世界だからこそ、個人が主体的にアクションを起こしていくことが求められる 。

 

ここで一つ問題がある。日本人の若者の自己肯定感が他国の若者と比べると極端に低いことだ。日本財団が継続的に行っている“18歳意識調査”からも分かるが、日本という国や、自分自身の将来への不安を抱えている若者が圧倒的に多い。自己肯定感の低い若者は、主体的に行動することに後ろ向きになりがちである。この状況と投票率を照らし合わせて考えると、選挙に向けた若者向けの様々なキャンペーンは、若者の主体性を奪わないものである必要がある。なぜなら、学校のテストと違い、他人から与えられた正解の無い投票において、自分の納得する一票を投じることこそが非常に重要だからである。

 

では、若者が投票に行く空気はどのようにしたら生み出せるのか。その策の一つが、辻さんがGO VOTE JAPAN(HP : https://govote.jp/)で昨年の衆院選の際に行った、チェックボックス式で関心テーマ(ジェンダー平等、年金、気候変動など)を選び、それを用いてSNSで投票宣言できるというシステムだ。

GO VOTE JAPANが取り入れたシステム(GO VOTE JAPANのHPより抜粋)

 

なんとなく選挙ってよく分からない、という若者でも、意識はしていなくとも日頃の生活の中で政治や社会について考えている。そういった若者が、自分の考えていることや興味のあることを整理し、気軽に発信できる場を作ったというわけだ。普段はSNSで「政治や社会について発信することがない!」というような若者でも、GO VOTE JAPANの名前を盾にして、このシステムを“言い訳”にSNSで発信できる。このように、多様な小さな「声」が可視化されることが非常に重要である。

 

SNSなどのツールを通して、誰もがいつでもどこでも本音を発信できるこの時代にこそ、各人の主体性が求められる。その多くの主体的な発信の中で、選挙に一回行ってみようかな、といった感覚が生まれることが必要だ。

 

政治のハナシ後編では辻さんが望むこれからの政治の姿に迫る。

 

(持松進之介)