志願者数が前年度より微減となった慶大。各大学で入試改革が進む大学が目立つ中、慶大はほとんど入試制度を変えなかったことから、「成績上位層からの支持を受けているのが大きい」と駿台教育研究所の石原賢一進学情報部長は分析する。上智大や青山学院大など、共通テスト導入により入試方式が変わった大学は、安全志向を求める受験生の影響もあり、軒並み志願者数の減少が目立つ。

緊急事態宣言下から始まった今年度の大学受験。時間に余裕のある浪人生と比べ、限られた時間の中で勉強しなければならない現役生が不利だと思われがちだが、今年は実態が違うのだと石原氏は指摘する。

「成績上位層は、部活や学校行事のない自粛期間に集中して勉強できた生徒が多い。一方で浪人生は、学習姿勢を矯正する夏前が勝負となるが、その大切な時期に予備校が閉まっていた。実は浪人生の出遅れの影響の方が大きい」

浪人生は予備校入校後、夏ごろまでに進路アドバイザーとの面談などを通じて正しい勉強法を確立する。現役生が追い上げを見せる秋以降、成績が頭打ちにならないための勝負の期間だ。ところが、予備校が閉鎖されていたことで今年は夏前まで自宅学習が中心となり、浪人生は正しい勉強法でのスタートダッシュが遅れたのだ。

このことは結果として如実に現れている。秋以降の模試では、現役生が浪人生を上回る強さを見せる事態となったが、石原氏によればこのような逆転現象は「ここ数十年では初めてのこと」だという。

「世間の予想とは違い、難関大を目指す現役生に勉強の遅れはほとんど見られない。今年は『強い現役、弱い浪人』という傾向が顕著で、合格率は間違いなく現役生が浪人生を大きく上回るだろう」

今年度は入試制度が大きく変わる予定であったため、昨年度受験生の間では浪人を回避しようとする傾向が見られた。実際、今年度から施行された共通テストでは、浪人生が前年度比で約2割減少となった。

例年以上に数の少ない浪人生だが、今年は更なる苦戦を強いられそうだ。

(水口侑)