慶應塾生新聞会 三田オフィス

〒108-0073  東京都港区三田3-4-8

佐野ビル4階

Tel : 03-3454-7966

Fax: 03-6435-2573

《塾員インタビュー》コロナ禍でも舞台は成長し続ける 宝塚歌劇団 小池修一郎氏

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの舞台・コンサートが中止や延期となっている。長らく好きなアーティストに会えない時間を過ごしている人も多いだろう。

多くの観客が一堂に会し、役者同士の世界と歌に魅せられるミュージカルも、新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響を受けている。今回は「エリザベート」や「ロミオとジュリエット」など数々のミュージカル作品を手掛ける、宝塚歌劇団演出家・特別顧問の小池修一郎氏にインタビューした。

Photographer LESLIE KEE(SIGNO)

2020年2月21日から東京での公演が始まった宝塚歌劇雪組公演「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」。セルジオ・レオーネ監督の映画をベースに、20世紀初頭のアメリカ移民の人生を小池修一郎氏がミュージカル化した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定されていた公演期間中に2度の中止を余儀なくされた。

夢の宝塚の舞台で2度の中止

この公演は、私が宝塚歌劇団理事として最後の公演となりました(注:現在は宝塚歌劇団特別顧問)。なので、自分の中でも一つの「総括」として臨んだ作品でした。また、宝塚という夢の舞台に、ほろ苦い人生の集約を込めるという隠れた命題もありました。結果として、もっと苦い現実を味わわされたわけですが、それも「人生」なのだと思います。ことにコロナ禍では、世界中が危機に瀕しているのですから。

苦い現実とは、公演期間中の中止が2回あったことです。2度目の公演中止は「やっと再開できた!」と思っていた矢先の出来事だったので、その分ショックも大きかったです。また2週間近く休んで、やっと公演を再開できた宝塚の出演者たちが、今後も続く外出制限の中、モチベーションを維持できるのか心配でした。でも、千秋楽として元々予定されていた3月22日のみ上演することができました。出演者も観客も、凄い集中力と熱量を舞台に注ぎ、劇場中が感動で満たされました。これもまた「人生」だと、痛感致しました。

コロナ禍で生まれるエンターテインメントのちから

目下、コロナ禍は2年くらいで収まるとの予測が主流ではないでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大と戦う現在の状況を、戦争に例えると、今は空襲を浴びながらも、灯火管制の下、市民みんなで敵が去るのを待っている状態だと思うのです。

すると「戦後」は、みんな解放感に浸りたくて、エネルギーを爆発させるようなものが流行ると思います。舞台や映画だけでなく、音楽やダンスも。同時に、「あの時こうだった」という「戦争回顧もの」のドラマが沢山作られるだろうし、各国政府の欺瞞を暴くものも出てくるでしょうね。すべて第2次大戦後に起こったことをベースに語っています。

一方、コロナ後は「静」を求める文化になるという説もあります。感染症の恐怖は続き、ソーシャル・ディスタンスを守った生活様式になる、と。これはまるでSFのように、どんな世の中になるのか想像も付きませんが、あまり面白くなくなりそうですね。

今、男女の出会いもアプリという携帯の中の社会で行われてしまい、直接の出会いが少なくなっていると言われています。あなた方学生もそうかもしれませんね。ちょっと、大昔のペンパル(文通の友達)に似ている気がします。美形の友人の写真を送って、履歴も盛って、文通をしながら、愛を育んでいくのです。いざ会ってみたら、想像と異なりガックリみたいな話は山ほどありました。僕は、今のマッチングアプリはどうなんだろうかと、斜に構えてしまいます。実際怖くて使ったことがないもので……。

人々が街に集うことがなくなると、ますます人間関係はネットの中だけになり、どんどんバーチャルなものになってしまうのではなかろうかと、60年代に物心つき、70年代~80年代に青春を送った者としては思ってしまうのです。その反面、人と人が出会って恋や友情、愛と憎しみが生まれ、ドラマが生まれることに対し、執着しているのかも知れません。いずれにせよ、短期的には先に申し上げた「戦後の解放感」が求められるとしても、その後「感染症同居時代」がずっと続くのならば、人はより「つながり」を求めるようになるのではないでしょうか?

数々の名作を生み出してきた小池氏が「今」届けたい舞台

個人的には、人外伝の作品群は、時代が変わっても作り続けられているので、ニーズはあるのだと思います。ドラキュラ(「蒼いくちづけ」(1987年/2008年))、悪魔(「天使の微笑・悪魔の涙」(1989年)/「ロスト・エンジェル」(1993年))、狼男(「ローン・ウルフ」(1994年))など、時代に関わらず、人々から愛され続けるでしょうね。ただ、そうなると、極め付けはやはり「死」が出てくる「エリザベート」ということになるのでしょうか? この発想をしたミヒャエル・クンツェさんは、まさしく天才だと思うし、恐らく彼に対する「神の啓示」があったのでしょうね。個人と社会の崩壊と再生という視点が、混乱の時代にはよりマッチしていると思います。