私たちにとって身近で親しみのある“音楽”。その音楽を多様な角度から見つめてみる連載、音楽カケル。ようこそいらっしゃいませ。

私たちの生活には音楽が溢れている。今、どんな音楽があり、どんな音楽が人気なのか。さらに、長い間親しまれている音楽にはどんな魅力があるのか。そして、何を通して音楽に触れているのか。トレンドを生み、時代を作っているともいえる若い世代、その代表格でもある大学生の意見や考えを通して“わたしたちの音楽”のカタチを探り、言語化する。そして、その輪郭を明確にし、客観的に捉えてみよう。ということで、第1回のテーマは「音楽×日常」だ。

 

聴く側から見る音楽

塾生新聞会会員に質問を投げかけ、その回答から得られる事実を掘り出していく。まずは、音楽を聴く側としての質問から“わたしたちの音楽”を言語化する。

始めに、好きなアーティストを挙げてもらうと、国内外問わず多くの名が連なった。複数票を得たのは、嵐、宇多田ヒカル、King Gnu、TWICE、Ariana Grande、サカナクション、スピッツ、Taylor Swift、back number、The Beatles。日本以外には、主にアメリカ韓国のアーティストが親しまれているようだ。(表1)

表1(()内は獲得票数)

好きな曲も、多く挙げられ、日本国民なら知っているといっても過言ではない有名曲から最近よく耳にする曲まで幅広い回答を得られた。(表2)

そして、その曲の何が好きかという質問に対しては、リズムが最も多く、次に、歌詞曲調が続いた。その他として、「アーティストのイメージに合った雰囲気」が好きだという声があった。(図1)

表2

 

図1

若者といえども、流行りの曲から昭和時代の曲、邦楽から洋楽まで、好きな曲の幅は広く、偏りはないようだ。また、曲を評価するうえで一番のポイントはリズムということだろうか。では、流行り一昔前、それぞれの曲について詳しく意見を聞いてみよう。

そもそも、今流行りの曲は何かと尋ねたところ、最多で票を集めたのは「Make you happy(NiziU)」であった。(表3)

表3

 

どの媒体からその曲を知ったかという質問では、動画サイトが40.9%と割合が最も高かった。(図2)

図2

 

また、普段使用している媒体を問うと、圧倒的な差をつけて、音楽アプリが77.3%で主流のようであった。音楽アプリを選んだ人の意見は以下の通り。(表4)

表4

音楽アプリの後に動画サイト(36.4%)が続き、また、少数ではあるが、CDやレコーダー、ウォークマンの声が聞かれた。これらは、使いやすいという意見と、CDについては、CDでしか聴けない曲があるという意見があった。

続いて、懐メロの曲について聞いた。一昔前からあり、かつ、現在も親しまれている曲といえば、の質問には、SMAPや中島みゆき、The Beatlesが複数票を得た。ここで選ばれた曲の理由として目立ったのは、「歌詞の良さ・共感性」と「シンプルさ・覚えやすさ」という意見であった。特に、歌詞に関しては、人生の中で誰もが経験することにリンクするという点における共感性のようだ。(表5)

表5

以上の結果を踏まえると、音楽を聴く側として言えることは以下の点である。

①若者の好みの曲は、時代・国境を越えて幅広い範囲に渡っている

②若者の曲の好みの基準は、リズムにウエイトが大きい

③若者が長く親しむ曲の評価ポイントは、歌詞の共感性とメロディーの覚えやすさ

④若者は音楽アプリや動画サイトなどデジタル機器で音楽に触れている

 

(次ページ:歌う側、時間軸、そして問題意識という視点からわたしたちの音楽を探る)