
【フラタニティ・ソロリティの様子】
長い大学生活の選択肢の一つとして「海外留学」はとても人気だ。情報収集の大変さや多額の費用、語学力の壁を理由に諦めてしまう学生も少なくない。
今回は現在アメリカのダートマス大学に交換留学中の塾生、陳のぞみさん(経4)にインタビュー。実際の留学生活の様子や留学前の準備について聞いた。
〇フラタニティ・ソロリティについて詳しく教えてください。
―男子学生のクラブが「フラタニティ」、女子学生のクラブが「ソロリティ」と呼ばれます。加入には面接があり、所属後は「ハウス」と呼ばれる建物で定期的にパーティーやミーティングが開催されます。メンバー同士は「Brother」「Sister」と呼び合い、困った時には助け合う関係になります。
最近では、全ジェンダーを受け入れるクラブ※1も増えており、私は女子限定のクラブと性別を問わないジェンダーインクルーシブのクラブの両方に所属しています。
〇授業や教授との関係についてはどうですか。
―慶大の授業で読んだ論文の著者がダートマス大学の教授であると知り、そのことを伝えたところとても喜んでくださり、親しくなれました。教授は日本の新聞社から取材を受けたこともあり、その話を私に教えてくれ、新聞記事をメールで送ってくれたことが印象深いです。アジア人が少ないため、顔を覚えてもらいやすいのも良かった点です。
〇大学生活のスケジュールを教えてください。
―月・水・金は12時50分〜13時50分に授業があります。火・木は10時15分〜12時と14時25分〜16時15分の授業を受けています。
課外活動では、ソロリティでの週末パーティー、日本語授業のティーチングアシスタント、ヨガ、ジムでのトレーニング、オーケストラの練習などに参加しています。大学主催のカルチャーイベントにもよく参加していて、今日はみんなで韓国のキンパを作って食べました。日本の文化イベントもあります。
〇大変だったことを教えてください。
―秋は昼夜温度差が激しく、冬はとても寒いので、私は留学中何回か風邪を引きました。日本の薬局から自分の慣れている風邪薬を持っていくことを勧めます。
〇長期休暇はどのように過ごしていますか。
―冬休みは6週間、春休みは2週間あります。寮に住むためには別に申請しなければいけないため、旅行をしたり、帰省したりして過ごしています。
〇留学を通して得た学びは何ですか。
―私は日本と台湾を行き来して育ったこともあり、もともと「アジアを越えて外の世界に出たい」という思いがありました。
実際に留学して強く感じたのは、「日本で当たり前のことでも世界では当たり前ではなく、世界には本当にいろいろな人がいる。皆想像を絶する悩みや苦しみがあり、それでも頑張っている」ということです。例えば、私が国際コミュニケーションの授業でペアを組んだ学生は、メキシコから来た不法移民の子で、パスポートを持っていないためアメリカから出ることも仕事に就くこともできず、大学も限られたところから選ばなければなりません。父親はメキシコに強制送還されてしまったと聞き、とても驚きました。
これまでの自分は「透明な檻」に閉じ込められていたように感じ、もっと広い世界で生きていきたいと思うと共に自分が広い世界で生きる可能性や選択肢があるということに感謝しなければいけないと思うようになりました。
〇留学生活で印象に残っていることはありますか。
―世界中の学生と「世界中の出来事」について議論できたことが、何より印象に残っています。メキシコの移民問題、ウクライナ戦争の影響など、ニュースでしか見たことのないような話を、実際にその当事者から聞くことで、自分の視野が大きく広がりました。
〇将来のビジョンを教えてください。
―将来的には、仕事でもプライベートでも世界中の人と関わることができる生活を送りたいです。
例えば、グローバル企業のアジア支社で働いて、欧米に負けない成果を出したいです。アジアはまだ経済やテクノロジーなどでアメリカに遅れているところもありますが、これからのポテンシャルを信じて、私も微力ながら日本や台湾の発展に貢献したいと思っています。

※1:従来、フラタニティ(fraternity)は「男性のみ」、ソロリティ(sorority)は「女性のみ」の学生団体とされてきたが、現代ではより多様性を重視する動きが高まっている。男女共学のクラブ(coeducational Greek)やトランスジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダークィアなど、性自認が多様な人々をメンバーとして歓迎するクラブ(gender-inclusive Greek)も増えている。
(狩谷東之介)