【バスケ】田上×小林対談形式インタビュー・二人の原点~今まで~これからを語る(下)

 二人が4年生になってからの一年は、昨年の4月からこのKEIO SPORTS TIMESでも追ってきたとおり。6月の関東トーナメント優勝、早慶戦での敗北、リーグ戦準優勝。インカレ連覇ならず。そんな最後の一年を、田上は「結果がほしかったのでよかったとは言えないが、後悔はしていない」と振り返る。慶大バスケ部が、慶大バスケ部なりに100%の努力を尽くした結果だからこその、キャプテンとしての感想であろう。

【岐路、再び】

 毎日を共にした小中学校時代、別々の道を歩んだ高校時代、慶大での4年間を経て、いま二人は再び岐路に立たされた。そんな二人の“これから”についてきいてみた。

―これからの進路ですが、小林さんは日立でバスケを続けるということなんですけれど、田上さんはバスケに未練というのは?

日立サン��ッカーズへの入団が決まっている小林。慶大で培った爆発力が期待される。
日立サンロッカーズへの入団が決まっている小林。慶大で培った爆発力が期待される。

田上「う~ん……」
小林「ふふっ(笑)」
田上「なになになに!?」
小林「ここで未練あるって言ったらどうなるんだろうな~(笑)」
田上「いやいやいやいや。未練、未練なぁ……。う~ん。僕の気持としては、未練はあんま無いっすね。僕のなかでバスケは始めて14年くらいたつんですけど、本当にバスケばっかやってきた14年って感じで、他のものを二の次にしてやってきたもんで。まぁよくみんなが遊びにいってるときとか、しめしめみたいな感じで体育館に行って、どれだけシュート打つかが勝負だなぁみたいな感じのスタンスでやってて。親からももっと遊べとか、友達からもよく言われるんですけど。でもやっぱ“俺はこの一つに打ちこんできたんだ!”みたいのがあってもいいんじゃないかっていう風に思ってて。まぁこの14年間やってきた僕の人生の第一章がここで終わるんですけど。次は、一つの軸があったとしてもいろんなことにチャレンジするというか、良い意味でいろんなことに手を伸ばしていきたいなと思っています。バスケの経験は次の第二章に活きるはずなんで」
―田上さんの場合は最初から商社を狙っていたという感じですか?
田上「いやもう全然」
小林「最初あれか?テレビ局とか」
田上「そうだね…まぁコロコロ変わってたけどね。まぁバスケとかも、なんだろうなぁ。僕がプレイすることで、慶應のスタイルっていうのが出てるプレイを見せて、応援席が喜んでみたいな。そういうところが自分の原点ではないかなと思っているので。仕事でもそのスタンスっていうのは変わらなくて、どんなとこでも頑張って貢献できればいいなっていう感じだったんで。結構これ後輩とかには言うんですけど、僕ら今までバスケバリバリやってきたじゃないですか。で、今の時点で初心者が『バスケ始めたいです』ってやって来て、その人を見たときに明らかにセンスがないなって感じだったら、そこで入部させないで、他の道に行かせてやるっていうのもその人にとっては良いことだと思っていて。就活の面接ってそういうことじゃないかなって考えていて。社会で何十年働いてきた人が、僕を見て落とすってことは、多分僕はその会社に向いてないんじゃないかと。受かったとこが、僕の向いているとこなのかなぁみたいなスタンスだったんで。まぁ商社に向いているかは甚だ疑問ですけどね(笑)。まぁそのフィールドで頑張ってみようという感じで。とりあえず英語の勉強頑張らないと(笑)」
―さっきここ来たときもTOEICの勉強を。
田上「もう…必死(笑)」

取材直前までTOEICの勉強をしていた田上。バスケット意外のことに対しても、そのひたむきな姿勢は変わらない。
取材直前までTOEICの勉強をしていた田上。バスケット以外のことに対しても、そのひたむきな姿勢は変わらない。

―大祐さんは日立に決めた理由というのは?
小林「僕も最初はせっかく慶應という環境に来たので、いろんなことに手を出せる立場にいるので、そのチャンスを大いに活かした方がいいのかなとか思ってたんですけど。でも途中で“慶應だから”とか、“体育会だから”とか、“大企業に入らなくちゃいけないんだ”みたいな自分の中でしょうもない固定観念にかられてたなっていうことに次第に気が付きはじめて。やっぱやりたいことやるのが一番いいんじゃないかって考えた上で、上にいけるフィールドがあるのにも関わらず一般企業に入ったとして、これからなにをしていけるのだろうかみたいなことを考え始めて。だってそうですよね。文武両道といえどバスケットを一番にやってきたわけですから。そういった意味でやっぱり上に挑戦してみたいなって気分にすごいなり始めて。それがキッカケかな、上のリーグに行こうとした。自分らしさと言ったらバスケットボールだと思うんで。最終的には日立に行きたいと心から思えるような状態になりました」
―泰滋さん(酒井泰滋。小林が1年生時の4年生)も日立にいらっしゃいますよね。
小林「そうですね。泰滋さんがいたことも日立を選んだ理由の一つになりましたし、あと日立と慶應のバスケって結構似てるなと思ってて。外国人に頼るんじゃなくて、日本人で勝つと。能力は低いけどディフェンス頑張るみたいなプレイスタイル。そういったものが通じてるなと漠然と考えてて。でまぁ、JBLに行くなら日立。それ以外には行きたくないと思っていたんですね。夏ぐらいまでは就活一本だったんですけど」
―お互い就活をされてたということですけれど、バスケと就活って結構大変そうだなというイメージがあるんですが。
田上「そうですねぇ。僕自身は就活でバスケがおろそかになるとか、あり得ないと思っていたんですけど……大変でしたねぇ」
―スーツで試合に来ていたりもしてましたよね。
田上「練習終わって、10時くらいに終わるじゃないですか。で、家帰って11時半とかで。そっからまたESとか書いて、4時くらいに寝て、で学校行って……それがず~っと続いて。で、やっとオフだと思ったら面接で。いやぁ~あの時期には二度と戻りたくないね(笑)」
小林「ふふふ(笑)」
田上「キツかったのはチーム始まって、2月の終わりくらいから3月4月ぐらい。チーム引っ張りたてで、右も左もわからないときに面接とかも入ってきて。いろんな問題が重なっていました。引退を迎えられるとは思わなかったです(笑)」
小林「逆に他の4年生とかもいろいろ考え方が違うんで。普通に就活を優先して、それで『なにやってんだよ』みたいな、そういったお互いの……こう……ね?なんかあったよね?ヤな関係みたいなの」
田上「ギスギスしたね(笑)」
小林「ギスギスした」
田上「でもそういうの慶應とかの難しいとこだよね」
―慶應ってバスケの能力があっても、企業に行く人が多いですよね。一度佐々木先生にインタビューに行ったときも、『社会から求められるのはうれしいけど、コーチとしてはもうちょっとスポーツの世界に行ってほしいかな』っていうことも言ってました。
田上「そうだよね。先生の理念ってすごいじゃないですか。日本のバスケが世界に通用する、世界を越えられるってことを証明したいって言ってて。それを、トップリーグで慶應の選手が活躍することで、日本のバスケが変えられたらそれはすごい良いことだと思いますけどね」
小林「なになに(笑)」
田上「そこは大祐さんにね(笑)」
―来年のオールジャパンでテレビで試合に出てるところとか想像しちゃうんですけど。
小林「いやぁ~……慶應とかと当たったらめんどくせぇなぁ」
一同「(笑)」
小林「いやぁめんどくせぇなぁ。強気できますからねぇ」
田上「まぁ観客となる側の人間としては(笑)、外国人とか出てくる中で大祐は一体どうなるのかなって。めっちゃ楽しみ」

【後輩、ファンに向けて】

 最後に、共に汗を流した慶大バスケ部の後輩たち、喜びも苦しみもわかちあったファンへ向けての、二人からのメッセージ。

―卒業するに当たって後輩に伝えたいことってありますか?
田上「けっこう難しいなぁ。伝えたいことね」
小林「僕は、やっぱりバスケットだけっていうのは絶対やめた方がいいなと。就活できるなら絶対就活した方がいいと思うし、ちゃんとどっちも経験して、最終的には自分なりの道というものを決めてほしいですよね。バスケだけすればうまくなるっていう考えじゃなくて、バスケのためならバスケを捨てるくらいのスタンスでやっていかないと、これからほんと狭い人間になっていくのかなぁとすごい僕は感じたんで。バスケットだけで終わってほしくないなぁって。良い素材をもっている彼らだからこそ。就活もやってっていうスタンスで最終的には自分の道を決めればいいと思うんですけど」

二人のバスケットは、後輩たちにも受け継がれているはずだ。
二人のバスケットは、後輩たちにも受け継がれているはずだ。

田上「う~ん……そうですねぇ。まぁこれ結構佐々木先生が言ってたことなんですけれど、『決して評論家になるな』と。人生でもそうだと思うんですけど、バスケットをしていく上でチームのこととかを考えたときに、本当にいろんな問題が出てきて。例えば、チームの外の人だったり入りたての下級生だったりっていうのは、『アレが悪いよね~』、『こうすりゃいいじゃ~ん』って言うと思うんですけど、それを変えられる人間、変えようとする人間になってほしいなぁって。実はそれは一番難しいところだったりして。評論家になることはたやすいんですけど、それを変えようとするっていう気持ちをもって、闘ってほしいと思います。引退した今、よく後悔はあるのかみたいなことをきかれるんですけど、この一年間いろんな問題がある中で、自分なりにあがいたというか、頑張って問題を解決しようと動いてきたと思うので後悔っていう感じはないんですけど、なにぶん結果が出てないので。その、やってきたことが正しいのかどうかっていうことがわからないってところで、結構いまモヤモヤしてたりするんですよね。後悔はないけど、結構そういった面でモヤモヤしてるっていう、煮え切らない気持ちがあるっていう。いろんな問題に直面して、闘いつつ、まぁ欲を言えば、結果でそれは正解だっていうのを後輩たちには証明してほしいなって思います」
―4年間応援してきたファンに向けて、何かメッセージをいただければ。
小林「慶應のファンってすごい熱烈じゃないですか」
田上「今年特に、結果とか出ずにヘコんだこととか多かったんですけど、やっぱり慶應のひたむきさとか、頑張りとかそういうところを信じて応援してくれる方が多くて。ヘコんでるときとか、ファンの方から受けた声援に何度も背中を押されたので、本当に感謝しています。後輩たちを、応援してあげてほしいです」
小林「僕もほとんど同じなんですけど。誰かを信じて応援するって、たとえば慶應の選手を応援するとかいうことって、ファンの方ってすごいなぁって思うんですよ。ある意味見ず知らずの他人のことを応援して、負けてもそれでもついてきてくれるっていうその思いが。僕がやれって言われても、なかなかできることじゃないなって思ってて。でも、そうやって応援し続けてくれたってことはもしかしたら、自意識過剰かもしれないですけど、僕らのやってきたことも少しは意味があったんじゃないかと思ったりもしちゃうんで。なんていうのかなぁ。本当に一緒に過ごせた4年間楽しかったです。そして、これからもよろしくお願いします(笑)」

 キャプテン#4田上、エース#5小林。1年時から試合に出場してきたこの名コンビは、幾度となく代々木第二体育館を歓声でわかせてくれた。プレイを間近で見てきた記者の身としても、この場を借りて二人に感謝の気持ちを表したい。
 前述した通りではあるが、大学を卒業後、小林は日立サンロッカーズに入団、田上は一般企業への就職が決まっている。ミニバス時代から共にプレイし続けてきた二人が、いま、別々の道へと踏み出していく。進む道は違えど、それぞれのフィールドで、二人はこれからも走り続けていくことであろう。

(2010年3月20日更新)


文 井熊里木
写真 阪本梨紗子
取材 阪本梨紗子、金武幸宏、井熊里木