多くの教職員や塾生が出入りする慶大三田キャンパスの西校舎。そこにはお昼時になると塾生で溢れかえる場所がある。こだわりの食材から生まれる手作りメニューが魅力の、学生食堂「山食」だ。

「学生に安くお腹いっぱいになってもらいたい。そういう思いで日々営業しています」。そう笑顔で語ってくれたのは山食三代目社長の谷村忠雄さんだ。

山食は1937(昭和12)年の創業以降、多くの塾生・塾員に愛され続けてきた。数あるメニューの中でも多くのファンを魅了する山食の看板メニューといえば「山食カレー」だ。三田キャンパスで授業を受けたことのある塾生で、山食カレーを食べたことがない人はいないと言っても過言ではないであろう。

「山食カレーは他の食堂には真似できない、ここでしか食べられない昔ながらのカレー。ふとした時に無性に食べたくなる」と商学部3年の男子学生は山食の魅力を語る。

山食3代目社長の谷村忠雄さん

しかし、そんな山食に今、異変が起きている。新型コロナウイルスの影響で、全国の飲食店が経営面で大きな影響を受けたが、山食もその例外ではない。ゼミやサークル、三田会の打ち上げパーティーがことごとく中止となり、お昼時の時間帯であっても学生の入りがまばらな日々が続く。

「創業以来の83年間で、ここまで深刻な経営難に陥ったのは今回が初めて。山食の存続が危うい段階まで来ている」と谷村さんは眉をひそめる。

緊急事態宣言下での3か月間の休業と、パーティーが開催できないこと、さらに塾生の来客が激減したことで、収入は昨年の同じ時期と比べて80%以上減少したという。対面授業が再開され、学生の足取りは回復傾向にあるとはいえ、原価率が破格の50%というランチ営業では、ほとんど収益がとれないというのが現状だ。

特に収入の40%以上を占めるパーティーが開催できないことが、大幅な赤字の要因として大きいと谷村さんは顔を曇らせる。

「銀行から500万円ほど借り入れるなど、経営状況の改善に向けてできることは全てやってきた。しかし、毎月100万円の赤字を出している現在の状況下では、数か月先の経営状況も見えないというのが現状です」

ウイルスの主たる活動時期である冬を迎える中、新型コロナウイルスの感染拡大は収束のめどが立たず、全国の飲食店の経営は先行きが不透明だ。山食は、「来年の夏ごろまでには経営を元通りの軌道に乗せる」ということを長期的な目標としているが、変わらず猛威をふるい続ける新型コロナウイルスを前に、目標達成までの道のりは険しいというのが実態だ。

12時台にもかかわらず、人の入りはまばらだ(2020年12月5日撮影)

そんな前代未聞の経営難から脱却すべく、山食はクラウドファンディングを立ち上げる。事業の「起案者」を誰でも「支援者」として手軽に支援できるのがクラウドファンディングの大きな特徴だ。

今回の山食のクラウドファンディングは、一口500円から行うことができる。返礼品もレトルトカレーや食券クーポンをはじめ、山食カレーの食器や、山食と體育會野球部のコラボタオルなど、さまざまリターンを用意している。

また、支援者からの資金は、返礼品の発送料や手数料を差し引き、残りの全額を山食存続のための運転資金に充てると谷村さんは説明する。

「山食はいま、存続の危機という大きな山場を迎えています。クラウドファンディングを通じたどんな小さな支援でも、私たちにとっては大きな励みになります。山食が誇る長い歴史と伝統を絶やさないためにも、ぜひとも塾生、塾員のみなさまのお力添えをいただけないでしょうか」

支援は12月14日から来年の1月25日まで受け付けている。特設サイトから誰でも気軽に山食を支援することができるので、要確認だ。

 

特設サイトはこちらから→https://camp-fire.jp/projects/view/359922

 

このような状況下でも谷村さんは「今後、メニューをさらに値上げする予定はない」と断言する。安くお腹いっぱいになってもらいたいという谷村さんの思いはいつでも変わることはない。

「山食は塾生にとって第二の家庭でありたいというのが僕の願い。今後も塾生のどんなわがままでも優しく受け止めてあげられたらと思います」

三田キャンパス西校舎の一角で、どんなときでも暖かく塾生を迎え入れ、たくさんの思い出を作り出してくれた山食。クラウドファンディングを通じて今度は私たちが恩返しをする番ではないだろうか。

 

(水口侑)