慶應義塾大学には、毎年2000人近くの内部生が入学する。内部生とは慶大の一貫教育校(塾高、志木高、女子高、SFC高、NY高の5校)から上がってくる学生のことを指す。一般受験者など、外部から慶應にやってきた学生(以下外部生と記載)の中には、内部生を特別な目で見る人も少なくないだろう。今回は、そんな彼らの素顔を知るため、数人の内部生に取材・アンケートを実施した。

 

まずは交友関係から聞いてみた。これまでのキャンパスライフで一番多くの時間を過ごした人は誰かと聞くと、「同じ内部生同士で過ごす」という回答が非常に多かった。入学式に同じ高校の友人と群がるのはわかるとして、新しい環境に移っても親交を深めている彼らを見ていると、内部生の団結力の強さを感じる。

 

しかし、内部生の中でも関係が変わることはあるという。「疎遠になった奴もいるし、大学に入ってから仲良くなった内部生もいる」と話すのは塾高出身のHくん。大学に入ると、内部生同士であっても学部が違うだけで関わりが少なくなることも多いという。内部進学とはいえ、大学に入ったということは彼らにとっても大きな転機であったようだ。

外部生との関係も聞くと、人にもよるが、「普通に接している」という声が多かった。外部生の友人も多く、彼らと接するときは内部生と接するときと変わらないという。

しかし、外部生からの接触について聞いてみると、女子高出身のFさんは「自分が内部生だと伝えると、相手が壁を作ってしまうことがある」と語る。内部生に対して閉鎖的な印象を持ってしまいがちだが、実は外部生の方から線引きされるということも例外ではない。

また「内部生は頭が悪い」と言う人もいるらしいが、これも憶測に過ぎない。ちなみに筆者のクラスの内部生は皆賢く、意識も高い。公認会計士や司法試験の勉強を1年の春から始める人も多く、受験で疲れ果て、ハメを外している人よりは真っ当であるのではないかと感じる。もちろん人によって違いはあるが、内部生だからと言って侮ることはお勧めしない。ちなみに外部生にはどう接してほしいかと聞くと、全員口を揃えて「普通に接してほしい」と答えた。

一方で、「内部生は群がる」という意見をよく聞くが、それについて聞いてみたところ、「確かにそうだ」という回答が多かった。「内部生はこたつと猫とみかんの関係」と話すのは、志木高出身のⅠ君。大学に入っても、高校の友人と一緒なら行動しやすいという。しかし、これは外部生も同じだと思う。内部生は単純に人数が多いだけであり、数的有利な立場にいる彼らを外部生が「群がっている」と捉えてしまうのもまた無理のない話だろう。

今回の取材を通して感じたことは、内部生も外部生も特徴としてそれほど大きな差はないということである。逆に、内部生に抱く印象の多くが「思い込み」や「偏見」で形作られたものが多い。今年の春から慶大に入学する新入生達には、大学生活を共にする友人を作る上で、外部生は偏見を捨て、内部生は内部に固執せず出会いを求めてほしいと思う。双方の思い込みと閉鎖感によって、生まれるはずの関係が消滅してしまうのが一番もったいないことである。

(石川智成)