
連載『こころの相談室』。第四回となる五月号では、五月病がテーマだ。学生相談室のカウンセラー菊住彰さんに話を聞いた。
五月病を放っておくとうつ病になる可能性も
まず、五月病とはなんだろうか。五月病は正式な病名ではなく、俗称だ。新しい環境の変化により、ゴールデンウイーク明け頃に体調不良になったり、気分が落ち込んだりすることを一般的に五月病という。
四月に入り、一年生は大学生になるという大きな環境の変化がある。また、二年生以上の学生も新年度の環境の変化は大きい。自分の見られ方が変わり、気を張ったまま周囲を意識することでストレスが溜まっていき、環境に慣れてきたはずの五、六月頃にうつ病に近い状態になることがある。五月病の症状は、放置しておくと長期のうつ病につながることもあるという。
完璧主義の人にリスク
完璧主義で頑張りすぎてしまう性格の人が5月病になりやすいという。理想の自分と現実の自分とのギャップから、自分に対して否定的な感情を抱き、思考が悪循環に陥ってしまうことがある。「今までどうにかやってこられた経験から、再学生活で頑張りすぎていることに気が付かない人がいる」と菊住さんは語る。
まずは誰かに相談
それでは、五月病になったとき、再び立ち上がるにはどうすればいいのだろうか。その方法の一つとして挙げられるのが、誰かに話すということだ。身近に相談できる人がいればその人でも良い。
ただ、相談しづらい場合も多いだろう。その場合にはカウンセラーに話すというのも手だ。人に話すことで、自分では気づかない理想の高さに気付くなど、自己分析をすることができる。そのうえでプライベートな趣味へ使う時間を増やすことが、五月病への対策の一つになるという。
睡眠不足は避け、食事でセロトニン生成を
五月病の予防になる生活習慣もある。睡眠不足はストレス耐性を下げるため、悲観的な思考に陥らないために、自分にとって必要なある程度の睡眠時間を確保することが大切だ。また、体を動かし、日にあたることも対策になる。
食事においても対策が可能だ。脳内ホルモンのセロトニンが減ると五月病になると言われている。バナナ、乳製品、ナッツ類、大豆食品、赤身の魚などを食べることでセロトニンの生成を高めることができる。
「気軽に相談室利用して」
五月病は対策も予防も可能なものだ。「自分にはできることがあるとまずは知ってほしい。そのうえで、困った際には気軽に学生相談室を訪れてほしい」と菊住さんは話す。一方、学生相談室では前向きな相談も受け付けているという。人に話すことで、自身の夢が少し現実的に感じられる。苦しいときだけでなく、長所や特技を伸ばしたいとき、将来について考えたいときなどにも気軽に学生相談室を訪れてみてほしい。
(関彩華)