【映画評論】『マンデラの名もなき看守』~ネルソン・マンデラ生誕90周年


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ネルソン・マンデラ。アパルトヘイト撤廃を訴え、1994年に南アフリカ共和国の大統領に就任。1991年にノーベル平和賞を受賞。現ユネスコ親善大使。

 人々がネルソン・マンデラについて語るとき、多くは彼の功績を褒め称えるだろう。しかし、この映画で描かれているのは、我々が知るネルソン・マンデラではない。彼が南アフリカの表舞台に立つ以前、27年に渡って収監されていたときに出会った、ある看守との交流の物語である。この映画は、マンデラが初めて自身の人生の映画化を許可した作品だ。

 人種隔離政策下で白人は黒人を下等な人間として差別し、参政権を始めとした多くの権利と自由を黒人から奪っていた。そんな中起こったのが反アパルトヘイト運動だ。指導者であるマンデラ(デニス・ヘイスバート)は反逆者としてロベン島の刑務所に収監されていた。そこに看守として赴任したのがジェームズ・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)だった。グレゴリーはマンデラの故郷の近くで生まれ育ち、彼らの言葉が理解できた。マンデラ達のコーサ語での会話を報告するようグレゴリーは命令され、彼はマンデラの担当に抜擢された。

 始めは任務に忠実に従っていたグレゴリーだったが、マンデラの人間性に触れ、もっと彼の思想を知りたいと熱望するようになる。同時に、自分の報告が黒人たちを殺しているという罪悪感に苛まれ始める。命令に逆らえば自分の首が飛ぶ。そうなれば子供や妻を養っていけない。ジレンマを抱えたグレゴリーはある日、マンデラのささやかな願いを叶えたことで責任を問われ、一家はロベン島で孤立、最終的には転属することになる。平穏な日々を送っていたグレゴリーだったが、ポールスムーア刑務所で再びマンデラを担当することになる——。

 歴史について詳しくないからといって、この映画を敬遠しないで欲しい。これはネルソン・マンデラとその看守の心の交流の物語なのだ。ごく一般的な歴史の知識で映画を鑑賞した筆者だが、当時の時代背景もストーリーも、混乱することなく理解することができた。

 マンデラの輝かしい功績は人々によって語り継がれる。しかし、彼の功績以上に大切なこともある。27年間も囚われ、不自由な生活を送りながらも、自由を求めることを決して諦めなかったマンデラの過ごした時間、そしてそこにある物語に目を向けることも、歴史を知ることになるのではないだろうか。

 歴史が変わる瞬間に自分が立ち会えるとしたら、あなたはどんな決心をするだろうか。「傍観者にはなりたくない。歴史の一コマになりたい」。そう思う勇気があるだろうか。

(島津しず香)

◆マンデラの名もなき看守 5月17日(土)
シネカノン有楽町1丁目、渋谷シネマGAGA!他、全国順次ロードショー!