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【バスケWebレポート】関東トーナメントvs大東文化大~敗戦から見えたチームの現実~

 5月4日。第60回関東大学バスケットボール選手権大会(関東トーナメント)の開幕とともに、2011年度の大学バスケットボールシーズンが本格的にスタートを切った。
 第2シードの慶大は初戦の玉川大戦を110―97で切り抜けるも、続く大東文化大戦で72―78と敗北。前々回王者、前回準優勝の慶大が、今大会はベスト16で早々と姿を消すこととなった。

チームの現状を知る

<5月11日 vs大東文化大 ●72―78>
 「最後まで自分たちのペースを取れませんでしたね。大事な所でオフェンスもディフェンスも決め切れない。決められないのが今のチームの欠点かな」。
 敗戦後のインタビューで、佐々木ヘッドコーチは開口一番こう話した。この試合、勝負の明暗を分けた局面があった。第4Q終盤。5点ビハインドの慶大がタイムアウトを取りゾーンを仕掛けると、大東文化大が3連続でミスプレイ。ところが慶大はこのチャンスをゴールに繋げることができず、そのままタイムアップ。重要な局面で試合を“決め切る”ことができなかった。
 今季主将を務める家治(4年・春風南海・188cm)は、チームの現状について次のように語る。
 「若いチームなので良い流れの時は皆も集中力をもってやれるんですけど、こういう競った試合だったり相手に流れが行きそうになったりした時に、まだ自分のことで精いっぱいという感じ」。
 4年生・3年生の上級生がチームの中心となって戦うのは、慶大バスケの伝統的なスタイルである。しかし、今季の慶大は違う。大東文化大戦に出場したスタメンのうち、家治以外の4人全員が2年生以下だ。試合を通してチームバスケットを展開することができず、若さが裏目に出た。佐々木ヘッドコーチも「スキル不足。技術が劣っている。ディフェンスにしてもオフェンスにしても、何の意味があってゾーンプレスをやるかゾーンをやるか、サインプレイをやるかのポイントが絞れていない」と、チームの未熟さを指摘。かくあるチームの現状は、大東文化大との試合で随所に“決定力の無さ”として浮き彫りとなる形で現れた。

主将の苦悩

「力みすぎた」と家治。��軍奮闘の��ャプテンが、下級生とのギャップを埋めることができるか
「力みすぎた」と家治。孤軍奮闘のキャプテンが、下級生とのギャップを埋めることができるか

 前述にもあるように、2011年度の慶大キャプテンは、2年生の頃からチームを支えてきた4年生の家治が務める。昨年度からはエースとして頭角を現し、毎試合コンスタントに20点~30点を叩き出していた家治だが、大東文化大との試合では17得点、シュート成功率は29%(24本中7本成功)と精彩を欠いた。大東文化大戦での自身のプレイについて、家治は次のように省みる。
 「去年までは自分が調子悪くてもリバウンド取ってくれる人、岩下さん(岩下達郎・昨年度#7)だったり祐典さん(酒井祐典・昨年度#5)だったりっていう人がいたんですけど。(今年は)やっぱりオフェンスリバウンドがなかなか取れないんで、(シュートを)絶対決めなきゃいけないという気持ちは去年より強く持っていて。それがちょっと今日は裏目に出ちゃって、力みすぎちゃったかな、という風に思います」。
 去季までは二ノ宮(昨年度主将)・酒井・岩下の最上級生がゲームメイク・リバウンドの大部分を賄っていたため、家治は点を取ることに思う存分集中することができていた。しかし、現在のスタメンのうち4年生は主将の家治1人だけ。家治にはエースとしてチームを牽引することに加え、コート内外でのキャプテンシーも求められてくる。「チームをしっかりとまとめなきゃいけなかったんですけど。僕もキャプテンとしてまだまだダメだなという風に思います」(家治)。若いチームを得点以外の面でも牽引しなければならないというプレッシャーが、主将を務めて間もない家治の両肩に重くのしかかっているようだ。

鍵を握る下級生

 「家治が30点取っても試合には勝てないんですよ。我々は80点以上の試合を頭に置いて、できれば100点取りたいと思っているから。彼が30点取っても、じゃああとの70点は誰が取るんだって話だよね。20点とる選手が3人いないとダメ。そうするとそこに(得点が)バラけて、狭間に居る選手が15点ずつぐらい稼ぐ」(佐々木ヘッドコーチ)。コートに立つ上級生が少ない以上、慶大の理想とするチームバスケットには下級生の成長が必須となる。去季はベンチメンバーの育成に四苦八苦した慶大だが、今季は正スタメン

流血のアクシデントにより、ヘッドバンドを着用しながらコートに立った蛯名。攻守そつなくこなす安定感が最大の持ち味だが、今後は積極的なゲームメイクも要求されてくる
流血のアクシデントにより、ヘッドバンドを着用しながらコートに立った蛯名。攻守そつなくこなす安定感が最大の持ち味だが、今後は積極的なゲームメイクも要求されてくる

すら定まっていない状態。中でも佐々木ヘッドコーチが目下の目標として挙げたのが、「ポイントガードとペイント内の4番5番の選手の育成」だ。ゲームを作る絶対的なポイントガードを据えることと、速攻のスタート地点となるリバウンド選手は、慶大のお家芸であるトランジションバスケット(攻守の切り替えが速いバスケット)には欠かせない二大要素。去季までは二ノ宮と、酒井、岩下がその役を担っていたが、彼らの抜けた穴を下級生組がいかにカバーするかが今後課題となってくる。
 「先輩たちが引っ張ってくれる部分が大きいんでそんなに意識することなく、やっぱり1年生なんで、がむしゃらに少しでもチームのプラス要因になれれば」――昨年度の関東トーナメント。ルーキーながらスタメンデビューを果たし、このように語ったのが印象的だった蛯名(2年・洛南・180cm)。1年後の今、チームのメインガードとしてコートに立つ蛯名は、大東文化大戦での敗北を振り返って次のように話す。「先輩にも助けてもらっているんですけど、やっぱり2年生4人、僕と中島と矢嶋と本橋がもっと個々でレベルを上げていかないとちょっと勝てないなと。元々わかってたんですけど、今日でやっぱり痛感したと思うんで。新人戦早慶戦あるので、秋に向けて悪い所は言い合って2年生で底上げできればなと思っています。負けた時がチャンス。今回の負けをちゃんと次に繋げられるように。2年生が中核にならないとまずいんで」。
 蛯名、矢嶋(2年・福岡大濠・187cm)、中島(2年・魚津・193cm)、本橋(2年・佼成学園・195cm)ら4人の2年生は、1年時から試合に出場してきた選手たちだ。去季は上級生に“支えてもらっていた”彼らだが、今回の敗北から彼ら自身がチームの中枢となる必要があるということを自覚させられたようだ。

 5月28日から始まる新人戦は、1・2年生による大会である。ここで下級生組がどれだけの経験を積み、チーム再興のヒントを得ることができるか。今季の新人戦はチームの真価が問われるという意味でも、例年以上に慶大にとって重要な大会となるであろう。

<2011年5月17日更新>

文 井熊里木
写真 井熊里木
取材 井熊里木、池尻由貴子、岡田美也子、小林知弘、劉一慧