三田祭3日目の11月25日。西校舎ホールでは、経済新人会の主催による第65回三田祭特別講演会が開催された。今回登壇したのは高島崚輔さん。今年5月から26歳と言う異例の若さで兵庫県芦谷市長を務める。灘中高、ハーバード大卒と、飛びぬけた学歴でも注目を集めている。

500人ほどの老若男女がホールに集まり、興味津々で講演を聞いた。

 

「若者よ、ともに行動しよう」のスローガンが掲げられた当講演。

高島氏は、市長の仕事内容や政策、大学時代の経験を朗らかに語った。時に客席に質問を飛ばしたり、冗談を交えたりする場面も見られ、「市民との対話」を重んじる高島氏らしさが滲んでいた。

 

市長のイメージについて「イベントばかりに登場して、遊んでいるように見えるかも」とした上で「イベントに出るのは大事な仕事。役所幹部からの二次情報でなく、一次情報としての市民の声が聴きたいからです」と熱く語った。

高島氏が最もこだわるのは教育だ。資源の少ない日本では、人に投資して行かなくてはならない。子供の可能性を信じることが大切だ。

市内の公立中学校に訪問した経験を語り、次のように述べた。「中学生に話を聞くと、なんと20個も校則の改正案を見せてくれたり、給食のフードロスを重く受け止めていたり、独自に問題意識を持っている。特に環境に関しては、自分の身近な課題と地球規模の課題の繋がりを感じてくれている。それが嬉しかったです」「でも『要望しさえすれば、あとは市長が何とかするだろう』これではいけません。私はあえて要望を受け取らず、子供たち自身が学校という社会を変えることを期待しました。するとその後、自分たちで校則を変えた、と報告してくれた。こうした成功体験こそ、将来の政治参加へのモチベーションを育てる」

 

また、役所のネガティブイメージの最たる例として、「新しいことをしない」を挙げた高島氏。この現状を打破するために「常識と法律を切り分ける」重要性を語った。「できないだろう」と諦めるのではなく、違法でない限りは常識から離れ、前向きなアイデアを伸ばしていくことがポイントだ。

芦屋市では、市民と市長が円状に椅子を並べて語り合う集会を開催している。そこでのルールは「批判ではなく提案、要望ではなくお誘いを」すなわち、何でも役所がやってくれるだろう、と言う受動的な姿勢ではなく、市民自らが能動的に姿勢に関わることを求めている。その上で、役所は市民の声の受け皿でなくてはならない。対話による行政こそ必要なのだ。

 

講演終盤ではハーバード大時代の経験を語った。高島さんは3年間の休学で、世界中の都市を視察したという。「大学だけではどうしても世界が狭くなりすぎる。キャンパス内ですべて完結してしまうからです。だから外に出るために休学しました。おかげで現場での経験と学問が繋がり、大学がますます楽しくなった」

その後の大学生活では、年齢も専門も異なる人々と共同で「アメリカの二酸化炭素排出量を2055年までに50%減らすには?」という課題に取り組んだ。答えのない問いにお互いの専門分野を持ち寄り、未来を作る。これこそが大学の醍醐味だと感じたそうだ。

 

講演会中繰り返し述べていたのは、市長は「この世界で最も楽しい仕事」ということだ。「経験、学びのアウトプット先として芦谷は最高の環境です。大きさも人口もちょうどいい。何より自分のような若者を選挙で選んでくれる、革新的な人が多い。芦屋を通じて、日本全体に新しい教育、行政モデルが広がるといいなと思います」

 

質疑応答の時間では、経済新人会の1年生4人が登壇。思い思いの問いを投げかけた。客席からも積極的に質問が上がり、時間いっぱいまで対応した。

 

最後に花束の贈呈と写真撮影を済ませると、大きな拍手に包まれて笑顔で退場した。

 

経済新人会・三田祭講演会総轄の大野さん(経2)は講演終了後、次のように語った。「77年前『戦後復興を若者の手で』との思いで立ち上げられたのが経済新人会です。現代社会は若者の主体性が欠けていると感じます。共通の課題意識を持つ高島市長にご講演いただけて非常に有意義でした」「これからも若者として積極的に活動したい。政治家の皆さんにも大学生の重要性を感じていただけたらと思います」

 

経済新人会では大手企業とのコラボ企画など、革新的なプロジェクトが行われている。意欲溢れる若者たちの牽引役と言えるサークルだ。

 

経済新人会・三田祭講演会総轄の大野さん(経2)から高島崚輔市長に花束が贈呈された

 

飯田七菜子