エース達の誓い。 ~バスケ部 小林大祐君

 決勝進出をかけた11月のインカレ準決勝第一試合。二年ぶりの頂点を目指す慶大バスケ部は、日大と対戦していた。慶大が10点以上のリードをつけるも、粘りを見せる日大と点の取り合いの展開となった3Q。慶大の小林大祐(総1)はこの重要な場面で連続3Pシュートを決めてみせた。

 思わずカメラマン席から驚きの声が上がった。「あいつ、本当に一年生か?」。

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 小林がルーキー離れした『勝負強さ』を発揮した場面は数多く、慶大は今季、小林の活躍で何度も勝ちを拾ってきた。当の本人には『勝負強さ』がどうして発揮できるのか、正確には分かっていない様子だが。「(勝負強さを発揮できる)理由はなんだろう……。自分で言うのも変だけど、発揮できる場面は結構無心でプレーしてますね。そういう時に何故だか知らないけどシュートが入っている。とりあえず言えるのは、(竹内)公輔さんがリバウンドを取ってくれるし、落ちても(酒井)泰滋さん達がカバーしてくれるっていう安心感もある。だから上手くいってるのかな、とも思うんですけどね」。

 『勝負強さ』の影にはある苦い経験がある。05年インターハイ決勝で、小林の福大大濠(福岡)は宮崎の延岡学園と対戦していた。残り4秒を残し、大濠は3点ビハインド。フリーで放った小林の3Pシュートは、リングに嫌われ、大濠は優勝を逃している。だがこの時から、「何故か分からないがいい場面で決められるようになった」というのだ。

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 まさに、一年前の夏と同じだった。インカレ決勝、残り30秒を切り、東海大を3点差で追う慶大はボールを酒井に託す。しかし酒井は、相手の激しいディフェンスを前にシュートできない。ヘルプに飛んだのは、小林だった。苦しい体勢ながら放ったシュートは、無情にもリングに弾かれた。

 終了後、彼はコートにうずくまった。竹内公輔に助け起こされ、その腕の中で、彼は泣いていた。

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 こみ上げてきたものには色々な意味があった。優勝を逃した悔しさとインターハイとインカレとのシンクロ。そして、チームを牽引してきた四年生への思いだ。「優勝するという目標の土台を築き上げてきたのは四年生でした。自分たちがそれに対して出来る恩返しは優勝しかない。そうした中での自分の不甲斐なさに泣いてしまいました」。

 そうした中で、小林の今季の成長には目を見張るものがあった。インカレ決勝後、優勝した東海大の陸川監督は『慶應で一番成長を感じた選手は?』の問いに真っ先に、「小林君。彼の成長で慶應が強くなり、(慶應のバスケは)鋭いものになったと思う」。もともとはディフェンスに難があり、『退場王』と言われるほどファウルも多かった。だが、「インカレの頃になると駆け引きとかが、すごく上手くなったなと自分でも思います」。オフェンスにはもともと定評があった分、ディフェンスが身につけば『鬼に金棒』だ。

 来季の慶大は苦しい。インサイドの竹内・酒井が卒業し、状況によっては小林がコート上の5人の中で一番上背がある、ということもあろう。「一年生である今季は、責任を感じずにプレーしてることもありました。来年は二年生なので、責任あるプレーをやっていくべきなのかな、と思います」。

 最後に、今年の意気込みを聞いた。「学生生活が終わったときに、『この試合楽しかったな』っていう充実感が味わえるような、そんなバスケ生活にしていきたいです。そして、チームとして一つでも多くのタイトルを取ります」。プレーの幅を増やし、小林はまた成長する。  

(羽原隆森)