評論

映画評 「ファイト・クラブ」(1999)

「ファイト・クラブ」(1999)は、物質社会に生きながら病む若者を描き切った傑作だ。

エドワート・ノートン演じる主人公は自動車会社に勤務し、リコールの調査をしてまわる平凡な男性会社員。毎日の単調な生活に嫌気がさし不眠症で精神不安定な彼は、ブランド品を買い集めることで自分を満たす。また、偽患者として末期癌のグループカウンセリングに通い、死に際の患者を見ることで、生きている実感を得ていた。彼は、同じように偽患者としてカウンセリングに通う孤独な女、マーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)と知り合った。

ある日ブラッド・ピット演じるユーモアある危険な男、タイラー・ダーデンと出会う。しだいに彼は自らと対照的に自信に満ち溢れたタイラーの姿に憧れを抱く様になっていく。

「俺を一発殴ってくれ」というタイラーの一言から、彼らは殴り合い、痛みによって生を実感することを覚える。その行為は周りにいた男も巻き込んでいき、タイラーは公平に殴りあうことを目的とした秘密結社「ファイト・クラブ」を立ち上げる。その後テロ組織へと拡大してしまうファイト・クラブに主人公は煩悶を抱く。主人公の理想像であるタイラーと、自己の嫌な部分を表象化したマーラ、2人の存在を軸に物語は進み、衝撃的なラストシーンを迎える。公開当初暴力的だと物議を醸し、多くの若者に影響を与えた。

ファイト・クラブを真似た殴り合い集団ができたという社会現象が、その実態を物語る。

「例え敵でも嫌いな奴でも/ひとりより まだマシだった/孤独がいちばんの敵だった…」

人気バンドグループMr.Childrenの「FIGHT CLUB」(作詞作曲・KAZUTO
SHI SAKURAI)は映画の中の主人公の葛藤に孤独と向き合う姿が描かれる。

「持っている物が自分を束縛する」「今すぐ死ぬとしたら今までの人生をどう思うんだ」

タイラーが発する言葉は現代社会に生きる自分にも強く響く。この作品では、主人公の名前、具体的な都市名が最後まで明かされない。孤独という敵とファイトする主人公に、自然と自分を見てしまう。  (笠原健生)

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