慶應義塾大学経済学部卒業後、1983年に日本IBM株式会社に入社。2006年に執行役員となる。また、IBMアジア統括部署であるIBMアジア・パシフィックや、IBMチャイナへ出向し、グローバルな環境で女性管理職として活躍。2011年には日本マイクロソフト株式会社へ転職し、現在は執行役エンタープライズサービスゼネラルマネージャーを務める。

今年4月、安倍政権は女性の活用を日本の成長戦略の中核とした。しかし現在、日本企業の女性管理職数は海外と比較して少ない。そうした中、慶大出身で日本マイクロソフト株式会社執行役エンタープライズサービスゼネラルマネージャーの佐々木順子氏は女性管理職として大企業で活躍している。佐々木氏に自身の経験や、日本の女性活用の将来についてお話を伺った。(小町栄)

 

価値観にとらわれない女性リーダー
佐々木氏は、慶大卒業後に日本IBM株式会社に入社し、女性管理職として、外国人との協働や海外赴任などを経験。現在は日本マイクロソフト株式会社の執行役エンタープライズサービスゼネラルマネージャーを務める。世界的な大企業の第一線で、管理職として縦横無尽に活躍し続ける佐々木氏はまさに働く日本女性のロールモデル的存在だ。

しかし、当初は挫折を経験し、悩む時期もあったという。 35歳で初めてマネージャー(管理職)となった時、「肩に力が入り過ぎ、部下が全くついて来なかった。1年足らずで役職を辞めさせられてしまった」。当時は女性管理職のロールモデルが少なかったため、女性管理職は「厳しい雰囲気で、男性と議論しても勝てるような人でなければならない」と思い込んでいたという。「自分に管理職は向いてない、と5年くらいは悩みましたね」と振り返る。 しかし、40歳でIBMアジア・パシフィックに出向した際、転機が訪れた。たくさんの欧米の女性管理職の人々と会う機会を得て、「母親のような雰囲気の人、少しいい加減な人、すごく厳しい人」など日本人にはない幅広いロールモデル像を見た。そんな彼女らを見てあえて佐々木氏は、「自分は自分らしくやれば良いと思えた」と話す。そして「もう一度頑張ってみよう」と決意したのだという。

2004年にIBM理事に就任。2006年には、アジア全域の外国人技術者の部下を持った。国籍によって考え方や行動様式が異なる部下に衝撃を受けたという。 しかし、「自分の価値観で物事を決めつけず、彼らと話をして共有できる部分を伝え合うことが大切だった」と苦難な状況を乗り越えた。
また、IBM時代最後の仕事では中国に赴任。その際、「会社の肩書の有無に関わらず、人として組織をリードできる人間が日本人には少ない」と感じた。そこで、自身が中国で身に付けた、グローバルな環境での組織の管理能力を次世代に伝えることで、「日本人のグローバルリーダー育成に貢献したい」という思いから、日本マイクロソフト株式会社へ転職。現在に至る。




「空気を読まずに本を読め」

また佐々木氏は、日本で女性管理職が少ないことに関して、「企業の社員に対する評価基準が人間関係などに左右されがちで、曖昧な所が問題」だと指摘。日本企業では、仕事の客観的な成果よりも、上司の目に触れる頻度が多い人間が評価される傾向があり、長時間労働が難しい女性は不利になりがちなのだという。また、出産による女性の離職が多い事に関して、「社会全体で子育てをするという意識が必要だ」と語った。

最後に今後社会に出る塾生に対して、読書によって得た知識で周囲に流されずに物事を判断することが大事との思いから、「空気を読まずに本を読め」というメッセージを送ってくれた。 政府の思惑とは裏腹に、女性活用の基盤が盤石とはまだ言えない日本。社会の変革と、佐々木氏のような女性管理職や、グローバルリーダーの増加に期待したい。