中学1年生に正負の数を教える森澤さん

「教師ほど素晴らしい職業はない」。この言葉をどう受け止めるだろうか。連載最終回を迎える今回は、子どもの学習を支援する団体Teach for Japan(以下TFJ)を取材した。

 

貧困の再生産から子どもを救う
TFJは、大学生向けプログラム「Learning for All」を実施している団体である。大学生が教師として学習指導を行い、子どもの学力と学習意欲の向上を目指す。充実した研修とフィードバックのもと、自己分析やグループディスカッションを通じて、社会人基礎力を身につけることができるのが特色だ。今夏も8月19日~23日の5日間、50名の教師を募集し短期プログラムを開催する予定である。また、春、秋、冬には週1回の長期プログラムも行っている。
今春からスタッフとして活動し、副現場管理者を務める森澤美央子さん(経2)は、子どもの変容には、教師の変容が必要と語る。自分が理解させようと必死になれば、最初は勉強に全く関心がない子どもでも、集中して勉強に取り組むようになり、100点を取りたいと言ってくれるようになった。子どもの素直さに触れて自身も成長でき、教師という仕事は素晴らしいと森澤さんは感じたそうだ。
森澤さんはまた、「教育は生存に関わっている」と話す。TFJが指導する対象は、経済的な理由で学習に困難を抱える子どもたちだ。家庭の経済状況により、教育を受ける機会が左右され、次の世代にも連鎖は続く。どこで貧困の再生産を止められるかが、社会の課題だ。 教師だけでなく、教育に関心を持ち、民間企業で働く人材も数多く輩出しているTFJ。今後も、貧しさゆえに学習が困難な子どもたちの可能性を広げるとともに、未来の教育現場や社会でリーダーシップを発揮できる人材を育成し続けていく。

高い問題意識で課題解消に挑む
これまで3回にわたりNPOで活躍する塾生を取材してきたが、何が彼らの活動の原動力となっているのか。今年4月からTFJの長期プログラムに参加し、他のNPOでも活躍している塾生、佐藤史紹さん(理3)にNPOの魅力を伺った。 まずは、高い問題意識を持つ人々が集まる刺激的な環境であること。 もう一つは、「社会」という目線を持てること。どうして教育格差という社会の不均衡が現状として存在するのか、社会の構造や背景にまで目を向けて考える時間は、サークルやバイトだけでは決して得られない。 「現状を知ったからには責任がある」。教育現場の現状を目撃した森澤さん、佐藤さんはそう語った。これまで取材に応じてくださった4人とも、現状を的確に認識し、どう解決すべきかという明確なビジョンをはっきりと語っていたのが印象的だった。この高い問題意識のもと、NPOで活躍する塾生たちの目は輝いている。非営利ではあるが、活動を通じて得る財産は大きい。NPOの活動は今後ますます発展し、塾生と社会をつないで、確実に社会を変えていくだろう。      (岡庭佑華)