DPの考案者、フィシュキン教授
DPの考案者、フィシュキン教授

国際シンポジウム「討論型世論調査による熟議民主主義―世代を超える問題を解決できるか」が先月20日、三田キャンパス北館ホールにて開催された。主催は慶大DP研究センター。討論型世論調査(DP)の考案者、米スタンフォード大学・ジェイムズ・フィシュキン教授、テキサス大学のロバート・ラスキン准教授らが招かれた。

シンポジウムの初めに米スタンフォード大学のアリス・シュー氏が「討論型世論調査とは何か」と題した講演を行い、「討論のための十分な知識を与えられた上で、小グループでの会議、全体での会議を通して意見の変化を観察する社会実験である」と説明。さらに討論の司会進行役であるモデレーターについて「専門の訓練を受けていて、討論に私見を挟まない」とし、その重要性を強調した。

それを受け、日本初の討論型世論調査として昨年5月に三田キャンパスでDP研究センターが行った「年金をどうする~世代の選択」の調査結果を慶大DP研究センター事務局長の柳瀬昇氏が報告した。調査では、基礎年金改革、所得比例年金改革、年金の支給開始年齢がテーマとして設定され、討論型世論調査の結果、世代間の回答結果のばらつきが小さくなる傾向にあったことが指摘された。フィシュキン教授とともに討論型世論調査の理論を打ち出したラスキン准教授からは「調査は成功に終わり、高く評価している」との講評が寄せられた。

その後、フィシュキン教授が「熟議民主主義の理論について」講演を行った。フィシュキン教授は現在の有権者らの決定が将来の世代において大きな力を持つ可能性について触れた上で、討論型世論調査で扱うべき問題として年金問題、環境問題、憲法の改変を挙げた。討論型世論調査によって、世代間のギャップが少なくなっていくことについて述べ、「討論型世論調査は代表制民主主義の質を向上させる」とした。

シンポジウムの結びにはフィシュキン教授、ラスキン准教授、シュー氏、田村哲樹名古屋大学大学院法学研究科教授、三上直之北海道大学高等教育推進機構准教授、曽根泰教慶大DP研究センター所長によるパネル・ディスカッションが行われ、聴衆との質疑応答の場面も見られた。