慶大生が代表を務める学生団体ReCropは8月31日(火)、神奈川県横須賀市の横須賀芸術劇場小ホールでLGBTQファッションショーを開催した。全国各地から集まった14名のLGBTQが個性豊かな服を着て、ランウェイを歩いた。新型コロナ対策を実施しながら、70名ほどの観客を迎え開催した。

地方創生×SDGs

ReCropは上智大学・慶應義塾大学・青山学院大学・玉川大学の学生中心に設立された、「地方創生×SDGs」をテーマに活動する任意学生団体だ。
「若者が日本のスタンダードを作る時代」をミッションとし、地方創生の実現と日本のSDGs達成度の向上を目指す。
地方創生の点で今回は、横須賀市で開催し、市を盛り上げられるようなイベントを企画した。
SDGsでは、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」を念頭に、ReCropは誰もが無意識に自分の性を表現できる社会を理想としている。代表の清水一紀さん(法2年)は、開催の意義について、「いろいろなグラデーションのなかで性が存在する。今回はそれを知るきっかけになってほしい」とイベントの最初の挨拶で話した。

横須賀×LGBTQ

なぜ、横須賀でLGBTQファッションショーを開催するのか。横須賀市は「守る、支える、育む、繋げる」の方針のもと、LGBTQ向けの政策が充実している。横須賀市では異性のパートナーシップ制度に加え、「横須賀市パートナーシップ宣誓証明制度を導入するなど、他の自治体にはない先進的な取り組みを行っている。今回のファッションショーは、横須賀市の魅力を知ると同時に、LGBTQへの理解を深めることのできるイベントだ。

「当たり前」をなくす!

ファッションショーに登場した方々の共通の思いは「当たり前や普通をなくし、ありのままの自分を表現すること」であった。今回出演したLGBTQのバックグラウンドはさまざまだ。元なでしこリーグの女子サッカー選手で、現在は男性として生きるトランスジェンダー3人組のユーチューバーの「ミュータントウェーブ」。同性カップルのありのままの日常を配信する「ぴたちゃんねる」。元水泳女子日本代表で、現在は男性として新宿歌舞伎町で人気ホストとして活動中の成宮涼さん。など、個性豊かな方々が集まった。

それぞれの自分らしさを表現したファッションでランウェイを歩いた。

ファッションショーのあとは、自己紹介があり、それぞれの個性を明るく、ポジティブに語るともに、「どこでどうやって生きてもいい」「自分は何にでもなれる」など、観客にLGBTQとして生きる自らの思いを伝えた。

「僕の性別はジョン」

この日ランウェイを歩いた「ジェンダーレス女子」のジョンさんにイベント終了後、話を聞いた。

「ジョンさん」=提供

ジョンさんは「自分の性別はジョンです」と語っている。

自分のことをLGBTだと公言するのはわかりやすい。その反面、当事者とそうでない人を無意識に区別または差別することに繋がり、違いが誇張されてしまう。「男でも女でもない。それ以前に自分」。その考えから性別はジョンと言うようにしている。

ジョンさんは明るく、天真爛漫な性格だ。ユーチューブやティックトックでは、多くのファンを魅了している。そんなジョンさんも親に対するコンプレックスを抱え、とことん落ち込んだ時期もあったという。親が何を望むか客観的に考えてみたとき、親は子供の幸せを望むと仮説を立て、「だったら自分で自分を幸せにしてみよう」と、物事の捉え方を変えることができたという。

今回のファッションショーでジョンさんは「自分は何者にでもなれる」ことを伝えるために、服装をガラッと変えた。一回目のランウェイでは、カッコよさを見せるために和服を、二回目では、犬のような人懐っこい性格を表現するためにサロペットの服で可愛い男の子になった。「僕はどっちにもなれる。なろうと思ったらなれるものだよってことを見せたかった」と話した。

粕谷健翔