コラム

 ある双子のバスケットボールプレーヤーがいる。慶應義塾大学4年の兄・竹内公輔(写真奥)と、東海大学4年の弟・竹内譲次(同手前)。両者とも洛南高校時代に全国制覇を経験。進学した大学では、公輔が2年次に関東リーグ、インカレの『二冠』を、譲次は3年次にインカレ制覇をそれぞれ経験。身長は公輔も譲次も2mを越え、キャリアも体格も日本では最高レベル。将来はNBAでのプレーも期待される。

 そんな二人が満を持して出場した今夏の日本での世界選手権。日本は世界の強豪を相手に力なく黒星を重ねた。結局1勝4敗でB組5位。目標の決勝トーナメント進出は叶わなかった。

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 九月九日、青山学院大学相模原キャンパスアリーナ。この日、関東大学バスケットボール1部リーグ戦が開幕。竹内兄弟がそれぞれ所属する慶大と東海大はいきなり初戦から激突した。接戦の展開で迎えた4Q終盤、譲次が動きの緩慢な公輔のパスをスティール。そのまま独走しワンハンドダンクを決めた。これで譲次が勢いに乗った。結局東海大はこのプレーの後慶大に得点を許さず、開幕戦を飾った。

 「前半不調だったけれど、後半は流れるようにプレーが出来ました」。譲次はいつに無く饒舌だった。当然だが、世界バスケの話題も出る。「大会では動きの量が少なかった。東海大でのインサイドのプレーでも、動きの量は大切になってくるから……。でも逆に良かった点は外からのドライブが有効だと分かった事。外での動きも良かったと思います」。表情は引き締まっていた。

 一方の公輔は、世界バスケの話題を出すと、どこか怒っている様子。質問すると、「いや、世界バスケと大学バスケは関係ないですよ」。いつも試合後インタビューはぶっきらぼうな感じで答える公輔だが、この日はいつにも増してそれが感じられた。負けたせいもあるのだろうが、まるでこのコメントでは世界選手権の記憶を消し去りたいように思えてしまう。

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 翌日の試合、公輔の動きは前日とはまるで違っていた。前日同様に接戦となったせいもあるのだろう、気迫を漲らせてプレーしていた。終了間際、公輔は譲次のインサイドでのシュートを何度もブロック。勝利への執念、そして世界選手権での悔恨の思いを感じた。試合は慶大が前日の雪辱を果たした。

 試合後の公輔の口から、前日聞けなかった世界選手権の話題が出た。「3年間全日本で大会のためだけに練習してきましたが、その大会が終わってしまい切り替えが出来ていません。とりあえず、もう一回大会を戦いたいという気持ちがあります。北京五輪もありますが、日本でこんなに大きな大会は滅多に無いので」。

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 世界選手権を終えての収穫や課題も聞きたかった。だが私は、それには触れてはいけない気がした。大会を通じて彼の心中に芽生えた悔しさというのが、痛いほど伝わってきたのだ。こちらからの問いかけは何の意味も成さないだろう。世界選手権はもう終わったこと。振り返っていても仕方無い。公輔にも譲次にも、究極の目標にはNBAがある。将来のためにも、ここで立ち止まっている場合ではない。譲次は既に先を見据えているようだ。ならば公輔も、前を向くしかない。

 私は一人のファンとして、全日本の健闘も見たい。だが、竹内兄弟の夢の実現も見てみたい。

(羽原隆森)