【書評】福澤諭吉が生きていたら―諭吉インサイドプロジェクト出版委員会編(扶桑社)

 幕末から明治維新へ。激変に揺れ動く日本、人々の中で確固たる信念を持って国を想った一人の日本人がいる。

 『福澤諭吉が生きていたら―』今の日本をどう導くか。当本では、茂木健一郎氏、向井千秋氏、千住博氏など現代をときめく17人の著名人がこの一つの質問に答えていく。

 彼等の答えには、福澤先生が日本の現状を嘆き、叱咤もしくは激励することを予想するものが目立つ。慶應義塾大学卒業後、記者を経て政界へ進出し、現在政治に限らず多分野で活躍する石原伸晃氏は、福澤先生の立国への想いに則してこう述べる。「今の日本は私欲に支配されすぎていて、各人が国を思うことの大切さを忘れてしまっている」

 しかし、なかには明治以降の社会の成長そのものを評価し、福澤先生による賞賛を期待する者もいる。社会学者として多くの著書を残し、地球温暖化など様々な環境問題の対策に取り組んでいる橋爪大三郎氏はこう語る。「社会全体から見れば、明治時代とは比べものにならないくらいの水準が今の日本だ。これを見れば福澤諭吉は、よくやった、と褒めるであろう」

 このように様々な視点から多くの回答がなされている。ただ共通してみられたのは、福澤先生の思想は今の世の中にあってもなお色褪せることなく生きる、という見解だった。

 さらに、彼等によって紹介される福澤先生の数々の言葉には、心を打たれるものがある。

 慶應義塾の理念ともなっている「独立自尊」。我々の内、幾人がこの言葉の真意を理解しているだろうか。福澤先生の多くの言葉を耳にしていく度に、この独立自尊の精神があらゆる分野においても根底になくてはならないことがわかってくる。

 この本を読むことで、「福澤諭吉の生きた時代からは良くも悪くも大きく変わった現代において、我々には何が出来るのか、そして何をすべきなのかを今一度考える必要性がある」ということを感じてほしい。それは、何にも依ることのない一人の独立した人間として。国及び地球を構成する一人の独立した人間として。

 幸いにして我々塾生はいつも福澤先生の視線に見守られている。福沢諭吉が生きていたら―我々の「今」を前にして、どんな言葉を発するだろうか。

(有賀真吾)