東急電鉄は現在、日吉駅のリニューアル工事を進めている。先月号では、東急電鉄の新線である新空港線について取り上げたが、今月号は日吉駅にフォーカスし、駅舎改修に加え、乗り入れている東横線・目黒線・東急新横浜線の車両リニューアルについて取材を行った。
日吉駅を利用する際、工事中の看板を目にした塾生は多いだろう。今回の工事では、駅と日吉東急アベニュー間の自由通路、および駅コンコースの天井を改修する。新たな天井のデザインは日吉キャンパスの銀杏並木をコンセプトとしており、アルミパネルに銀杏並木や人の往来を映しこむよう工夫を凝らす。また、素材に神奈川県産の木材も使用されている。東急電鉄は近年の駅舎改修において木材を積極的に活用してきたが、日吉駅でもそれが取り入れられる格好だ。
日吉駅は1926年、東京横浜電鉄の駅として開業。当時は地面の上に駅舎が建っている地上駅だった[亮猪1] 。1934年には、東京横浜電鉄から譲渡された日吉の丘にキャンパスが開設され、ここから慶大と東急の関係が始まる。それから長らく大きな変化はなかったが、1991年に東横線複々線化工事に伴い地下化。その4年後に駅ビルも完成し、現在の日吉駅が完成した。今回の改装工事は経年に伴いさらなる安全・安心を目指すため行われ、日吉駅にとって久々の変化となる。竣工予定は来年の春である。
加えて、日吉駅利用者にとってもう一つの大きな変化が予定されている。それが、東横線5050系(8両)および目黒線・東急新横浜線3000系のリニューアルである。現在はシルバーメタリックの車体に、東横線では赤の、目黒線では赤と紺のラインが入った車両が使用されている。しかしこれらは導入から約20年が経過しているため、大幅なリニューアルを行うことで車両に新しさや美しさを与える狙いだ。新たなデザインは「INCUBATION WHITE」(美しい時代へ孵化する色)を基調としながら、それぞれのラインカラーである赤と水色青のグラデーションで路線を表現している。また車内は沿線風景をイメージした落ち着きのある色合いとすることで親しみやすさと心地よさを感じられるものとし、すべてのお客さまが利用しやすいようにフリースペースを増設している[永大2] 。3000系におけるリニューアル車両が今年秋から順次導入されている。
ふだん鉄道を利用するとき、駅や電車のデザインを気に留める人は多くはないだろう。しかしその裏には多くの歴史と意図がある。気が向いたときに、少し立ち止まって眺めてみてはいかがだろうか。
[亮猪1]1926年に撮影された写真を見る限り、駅舎が掘り下げた位置に立っていたかは断定できませんが地上駅だったことは確かです。
[永大2]フリースペースを増設することで親しみやすさを感じられる、という表現になっていましたので、リリース文案と表現を統一しました。
(山田裕介)