[関東大学ジュニア選手権リーグ戦 詳報]一歩一歩、踏みしめるかのごとく~蹴球部・早稲田大学戦リポート

10/5(日) 慶應義塾大学・日吉グラウンド(神奈川県横浜市港北区)
14:00 Kick off ● 慶應義塾大学B 20-24 早稲田大学B (関東大学ジュニア選手権リーグ戦)
15:45 Kick off △ 慶應義塾大学C 26-26 早稲田大学C (練習試合)

「光陰矢の如し」

10/5。ジュニア選手権リーグ戦の試合開始1時間前に東急日吉駅に到着。薄日差し込む10月初旬、日曜日の朝。バイトの夜勤明けの体に鞭打ってゆっくりと歩を進めながら、「日吉グラウンドでの試合観戦はどのくらい振りなのだろう?」とふと考えた。日吉グラウンドが慶應義塾大学創立150年記念事業の一環として、全面人工芝へと様変わりしたのが2005年の夏。インフラ整備の最中で、当時はまだ仮設の蹴球部部室がグラウンド内にあり、そこで松永敏宏・慶應義塾大学蹴球部監督や竹本隼太郎主将(当時)などに話を伺ったものだ(今では、仮設の部室も取り壊され、体育会学生及び留学生のための「下田学生寮」と呼ばれる立派な複合寮施設が日吉グラウンドのすぐ近くに併設されている)。

時は過ぎ、人工芝のグラウンドもすっかり見慣れたものとなった。その間に、監督は松永敏宏氏から林雅人氏へと交代。竹本隼太郎主将は、戦いの場をトップリーグに移し(現・サントリーサンゴリアス所属)、彼の実弟・竜太郎(環境2)がこの日のジュニアの試合に先発で出場――。光陰矢の如し、とはこのことである。日吉グラウンドでの試合観戦が何時振りなのかすっかり失念したが、随分久々であることは間違いないだろう。

グレード違えど「早慶戦は早慶戦」

さて、日吉グラウンドに到着すると、予め設置された観客席は早くも満席状態であった。それもそのはず。この日の慶應義塾大学Bチームの相手は、早稲田大学Bチーム。グレードは違えど、「早慶戦は早慶戦」なのだ。先日トップリーグのコカ・コーラウエストへの入団が決まった早稲田大学キャプテン・豊田将万(FL/No.8、スポーツ科学部スポーツ文化学科4年)以下、早稲田のレギュラーメンバーたちが慶應側の観客席を横切る際の威圧感。分かってはいるが、やはりなかなかのものである(“ホーム”であるはずの慶應の選手たちが、幾分小さく見えたが…気のせいか)。そういった現役の選手ばかりでなく、両校OBも多数集結し見守る中での「早慶戦」に、取材する側も否が応にも期待が高まる。林監督が前節の明治大学B戦後「早稲田に勝てばチームが勢いづく」と語っていた通り、昨季に続き、ジュニア選手権連覇のかかる早稲田大学Bチームをここで倒すようなことがあれば、前節の明治大学B戦(9/28、○32-29)勝利で得た自信を一層深めることになるだろうし、チームのムードも最高潮に達する。慶應にとって、この早稲田大学Bチームとの試合は、ジュニア選手権リーグ戦最大の山場であるといっても過言ではないだろう。

毎年11/23、勤労感謝の日に秩父宮ラグビー場で行われる関東大学対抗戦「早慶戦」の前哨戦として位置づけられるこの一戦。試合直前、両校の現役選手が花道を作って、Bチームの選手たちを送り出す。

14時、いよいよもうひとつの「伝統の一戦」のキックオフ――。

完全に浮足立った前半、後半は一転慶應ペースに

試合開始すぐに、パスミスから相手にショートパントを上げられそのままトライを奪われると、前半16分にもラインアウトのミスから追加点を許し、早くも0-14と大きく突き放される。慶應も意地を見せ前半26分には、今季のジュニア選手権で好調を維持するWTB三木貴史(経済2)がラックから抜け出して1トライを返すも、またその5分後にラインアウトのミスからトライを奪われてしまう…。「ラインアウトのスローワーであるバイスキャプテンの小柳(貴裕、HO)が故障明けから1週間での試合出場、ジャンパーのLOの二人(三輪谷悟士・熊倉悠太)も1年生でまだ経験が浅い」(林監督)。それにしても、今季あれだけ注力して取り組んできたラインアウトだ。試合中のコーチングで幾分持ち直した、と言うが、マイボールラインアウトの確保が半分以下ではお話にならない。選手同士で意思疎通を図り状況を改善するなど、もう少しどうにかできなかったものかと悔やまれる。試合の入りの稚拙が招いた結果、5-19で終えた前半は、将来の高い授業料を払う形となった。

自分たちのラグビーが出来ていない――。FWに広くあててBKに素早く展開という、いつものペースを取り戻したい慶應。ただ、後半の入りにも失敗したらそれこそ“ジ・エンド”だぞ、と思っていたが、その心配は杞憂に終わる。後半開始すぐ、相手の反則からペナルティキックを選択し、FB仲宗根健太(総合1)がこれを落ち着いて決め、このあたりから遅ればせながら慶應が試合の主導権を握る。SO竹本竜太郎(環境2)を中心にエリアマネジメントに細心の注意を払い、セットプレーでは、この日調子の出なかったラインアウトを極力選択せず、スクラムの優位を存分に生かした。その調子で徐々に点差を詰めて、迎えた後半40分。敵陣でのマイボールラインアウトを今度はしっかり確保――。LO熊倉悠太(法1)が掴み、SH小斉平聖人(商2)が大事に繋いだボールをSO竹本竜太郎が受けると、最後は見事なステップで走り抜け、渾身のトライを決めた。20-24。1トライ差。まだいける。観客席からも、怒号のような歓声が響く中、慶應の選手たちも最後の力を振り絞って前に出る。だがここで無情にもノーサイドの笛。すべてを出し切った選手たちは、直後グラウンドにへたり込んだ。

こういった試合を見ていると、セットプレーの安定こそがラグビーの生命線であることを痛感させられる。(今季のシニア・ジュニアの試合含め)ここ5年近くでかなりの数の試合を見てきて、分かったつもりではいたが、改めて眼前に突きつけられた思いだ。早稲田B戦も、ラインアウトさえ安定していれば・・・の類の試合である。あれだけ気持ちよく、“FWのワセダ”にスクラムで押し勝てたのだから、あとはフェーズを重ねて、という展開に持ち込めたはず。前回の明治B戦はプレースキックの精度、前々回の帝京B戦はセットプレーの安定・試合のマネジメントの部分と、毎回課題噴出のBチーム。ただ、林監督も語る通り、歩みは遅くとも、確実に成長の階段は上っている。このチームは「グレード1」(リーグ戦終了時に4位以内であれば進出可能な決勝トーナメント)で化けるんじゃないか、そんな期待を抱かせてくれる。

あとは、こういった貴重な機会を無駄にすることなく、今回の試合で見えてきた早稲田の戦法・戦術を十分研究し、上手くフィードバックして、Aの試合に繋げて欲しいと思う。そこは、監督含めスタッフの腕の見せ所である。

After Recording 取材を終えて・・・


ジュニアの試合。20-24。早稲田大学B相手に4点差の敗戦で“勝ち点1”獲得。この敗戦を林雅人監督はどのように捉えているのだろうか――。「何点差だろうと、負けは負け」。試合後、指揮官の話を訊きながら、先日の帝京大学B戦(9/13、●25-33)後の、彼へのインタビューを思い出していた。

あの時林監督は、同じ負けるにしても、最低限やるべきことがあった(最後のワンプレーで4つ目のトライを決め、慶應は“勝ち点1”を獲得した。だが、勝ち点をもう1点プラスする為にもトライ直後のコンバージョンキックをしっかり決めて、7点差以内の敗戦にするべきだった)旨の発言をした。「スタッフとも最後の方はそのように(4トライ奪取・7点差以内の敗戦で試合をクローズしよう)話していた」と。勝ち点を1点でも多く、という指揮官の認識自体間違ってはいないし、確かにその通りではあるのだが、少なくとも試合終盤で監督含め慶應のスタッフは“敗戦”を意識したことになる。だが、今回は違った。「早稲田には勝ちたかったし、最後まで勝てると信じていた」(林監督)。負けはしたが、その言葉を訊くことができただけで、取材の甲斐があったというものだ。例えば、終盤の竹本竜太郎のトライも、4点差で試合をクローズするためのトライではなかった。あくまで、もう1つトライを取りきって、逆転で勝利(+4トライ目で勝ち点1のボーナス点も獲得)というイメージを選手・スタッフ全員がノーサイドの瞬間まで共有していたのである。残念ながら、選手たちには、相手をいなすだけの精神面での余裕が今はまだ備わっていないのかもしれない。ただ、計算抜きの真剣勝負は、必ず次に繋がる。その一端を垣間見ることができただけでも有意義であった。

計算抜きの真剣勝負、という意味では、Bチームの試合もさることながら、両大学Cチーム同士の練習試合についても明記しておかねばならないだろう。練習試合ということで多少オープンな打ち合いになった面も否定できないが、日も傾き、途中から照明が灯ったグラウンドには慶應の選手たちの“熱”が最大限充満していた。タックルの瞬間、「どりゃー」と大声を挙げて幾度となく相手に身体をぶつけていった慶應の選手。密集から相手の選手が飛び出し、彼の視界には最早インゴールのみ、絶体絶命、あぁ早稲田のトライか…と思いきや、背後から相手を猛然と追随、見事捕まえ強引にタッチに追い出した選手もいた。彼らのプレーを「気迫のこもった」と形容せずして何と表現するか。直近の数試合、消化不良の内容を続けていたチームとは見違える程の出来。早稲田との大一番で見せた彼らのチャレンジングな姿勢が、Bチーム、はたまたAチームにも伝播することを切に望む。

これで、慶應Bチームは帝京B・明治B・早稲田Bとの3試合を1勝2敗の勝ち点7(内訳:帝京B戦1、明治B戦5、早稲田B戦1)で終えた。ジュニア選手権のリーグ戦も残すところあと2試合。慶應の次の相手は流通経済大学である。ここでしっかり相手を叩いた上で、リーグ戦最終節の東海大学戦を迎えたい。今季初め、監督は「ジュニア選手権でも優勝したい」と語っていたが、星取表を見る限り、上位での「グレード1」(決勝トーナメント)への進出は厳しくなった。ただ、ここはしっかり目標をリーグ戦4位以内(→「グレード1」進出)に切り替えて、残り2試合を戦い抜きたい。リーグ戦4位以内を確保する上でも、これ以上の敗戦は許されない。今節、早稲田相手に抱いた“悔しさ”を持続し、次回以降に繋げることができれば間違いないと筆者は見るが、果たして結果や如何に――。

(2008年10月8日更新)

写真・文 安藤 貴文
取材 安藤 貴文