平成23年度義塾収支予算が3月18日の評議員会で可決された。収入の増加を見込んだことと、各部門における経費の削減努力により、帰属収支差額(帰属収入―消費支出)は約40億円の収入超過となり、平成21年度、22年度予算と比較して大幅に改善された。しかし、東日本大震災の影響に伴う支出が予算化されていないなど、決算時において予算どおりに収入超過が達成できるかどうかは、現段階では判断が難しい。                                    (天野葉子)

 義塾の平成23年度予算編成方針は、未来への持続可能性に貢献する人材育成、研究の促進を目指し、教育・研究・医療の質を向上させるために財政基盤を充実させることとし、主に以下の①、②の施策を講じた。
 ①帰属収支において収支均衡にすることを目標とする。②教育研究経費および管理経費のうち、補助金収入、事業収入などの特定の資金源泉以外の事業において、前年度予算と比べて原則として5㌫以上の削減を実施する。
 平成21年度、22年度予算では、国の政策や経済情勢が不透明で収入の増加が見込みにくい中で、教育研究活動や医療活動を安定して遂行させるために帰属収支差額で支出超過となったが、平成23年度は、予算編成時に帰属収支差額を均衡にすることを目標に掲げ、予算の段階で約40億円の収入超過を達成した。
 その主な要因としては、方針②により支出の増加を抑えたことに加え、収入の増加が挙げられる。特に前年度予算と比較し、大学学部の学費改定などの効果により学生生徒等納付金が約18億9000万円の増加、国の補助金による大型研究資金を獲得するなど、補助金が約27億9000万円の増加、診療報酬の改定により医療収入が35億3000万円の増加となった。
 また、創立150年記念事業に関しては、本年度実施の大きな事業として、信濃町3号館南棟の建設、矢上テクノロジーセンター(仮称)の建設、湘南藤沢中・高等部の教室棟の増築などが予定されている。
 東日本大震災の影響については、慶應病院などの早急な耐震補強対策、被災した学生に対する学費減免の支援など、すでに決定された予算には盛り込まれていない支出が想定されている。経理部課長の大古殿憲治氏は「創立150年記念事業と同じ優先順位で、学生・生徒・患者の安全確保や環境に配慮した省エネ事業も進めなければならないだろう」とし、「学校の財政は、長い目で継続して改善していく必要がある」と語った。
 また、清家篤塾長も、平成23年5月20日朝日新聞の記事において、「東日本大震災の影響で不透明な面もあるが、今年度は黒字に転換させる。優秀な教員の確保や教育研究環境の向上などのためにも財政基礎の強化は不可欠だ」と話している。