好投手の新たなスタート 体育会野球部 只野尚彦さん

来春は新たな一歩を踏み出す只野さん

神宮を大いに沸かせた4年生たちも春からは新しい一歩を踏み出す。中日ドラゴンズからドラフト1位指名を受けた福谷浩司投手(理4)を筆頭に前主将の山﨑錬内野手(商4)ら計8選手が社会人・プロの舞台で野球を続ける。その一方、大学で野球生活に終止符を打つ者もいる。彼らはほかの学生と同様に就職活動を経て、内定を勝ち取らなければならない。只野尚彦さん(商4)もその1人。春から東急電鉄に勤める。

長い苦悩の末に決断

慶應義塾高等学校時代は田村圭さん(商4)との左右二枚看板でチームを甲子園ベスト8まで導いた只野さん。当時は社会人・プロ野球も意識していたという。しかし3年生の春に就職を考え始めた。「野球の結果が自分の思っていた通りではなかった」と振り返る只野さん。社会人・プロを目指す上で3年生の春季リーグが勝負だと感じていたという。
自分が思い描いていた通りにはならず、ふと将来について悩むようになった。野球を続けるのか、それとも諦めて就職するのか。1週間眠れないこともあった。そんな時「まず野球を頑張りなさい。それで3年の秋がダメだったら考えればいいじゃない」という先輩の言葉に救われた。
吹っ切れた彼は秋の早慶戦までの半年間、必死に野球に取り組んだ。しかしそれと並行して、授業などを通じて少しずつ野球以外のフィールドにも興味が沸き、魅力を感じ始めた。そして早慶戦後に決断。「色んなことを知りたい」と就職を決意した。
慶大の野球部は広く世間に知られているが就職活動において特別扱いなどは存在しない。それどころか最後のシーズンへ向けて野球との両立の難しさもあり時間的、体力的な制約もあった。
そんな厳しい状況の中で生きたのが野球部での経験だった。徹底された礼儀や目上の人への接し方などは大きな強みとなり、またOBの全面的なサポートといった野球部内のつながりの強さも実感。そして何より野球という1つのことに真剣に向き合ったことが評価された。さまざまな制約条件がある中、逆境を乗り越え見事内定を勝ち取った。
最後に今後の目標を問うと、まだ明確ではないとしながらも「野球を始めたころのようにがむしゃらに」と語った只野さん。好投手がグラブを置き、人生の新たなステージへと踏み出した。      (上井颯斗)