後ろ倒しとなった今年度の就職活動。3月の解禁まで残りあと2ヶ月だが、それまでに万全な下準備を整えたいところだ。

今回本紙では、「海運」「出版」業界を代表する2社に業界の特徴などについて話を聞いた。自分の将来を見据え、適職・適社を知るきっかけとなれば幸いである。

「出版」→「株式会社小学館」

12月号の業界研究特集はこちら→「食品」「金融」「不動産」

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人事部の黒田賢太さん
人事部の黒田賢太さん

【海運】
株式会社商船三井 国際貿易の大動脈を担う

―業界の特徴
現在世界の貿易は重量ベースで9割超を海上輸送が占めており、海運業は国際貿易の大動脈を担っています。特に日本は島国かつ資源に乏しい国なので、原料や資源を輸入して製品を輸出する仕組みが必要です。日本の海運業はその環境に適応するため、輸送する貨物特性や輸送量等お客様のニーズに応じた多種多様な海上輸送サービスを提供しています。

一般的に「日本の船会社だから日本発着の貨物しか取り扱わない」と誤解されることもあるのですが、日本発着はもちろん、アジアから欧州、南米から欧州といった日本を介さず世界各国の港と港を直接結ぶ国際的な輸送サービスも提供しています。

―仕事内容
海運業では海上職・技術職・事務職の3つに分かれます。

海上職は船乗りとして、船を安全かつ効率よく操船することはもちろん、航海中の貨物のケアもしています。また定期的な陸上勤務を通じて、海上で得た知見を陸上社員にフィードバックし輸送サービスの品質向上にも貢献しています。

技術職は、運搬する貨物特性に応じた最適な船型開発や燃費の向上等、お客様や現場の船員の要望を反映させた船を造船所やメーカーと協力しながら造り上げています。

事務職は管理部門と営業部門に分かれ、営業部門はさらに運ぶ荷物に応じて部署が分かれます。営業部門の主な業務としてはお客様から貨物を集める集荷営業、商売道具である船の建造や傭船(レンタル)によって調達する船隊整備、そして船を動かす管制塔の様な役割を果たす運航管理の3つに分類できます。運航管理は船長と相談しながら航路や速力、寄港地等を採算も考慮しつつ最適な航海計画を立案したり、本船のコンディションを整備したりと船に近い仕事です。

―やりがい
モノを運ぶ仕事は単に右から左に動かすだけではなく、モノの価値を引き出す仕事だと考えています。例えば、どんなに鉄鉱石が豊富に産出されても、そのままでは石の塊です。これが日本に輸送され高度な製鉄技術と結びつくことで1トン100ドルの鉄鉱石が1000ドルの鉄板に生まれ変わり、さらにその鉄板が自動車メーカーに使用されることで1万ドルの車に生まれ変わる――。このようにモノはそれを必要とする人の手に届いて初めてモノが本来持つ価値が引き出されるのだと思います。この連鎖が国や国際経済の発展に貢献します。その大動脈を担っているのが海運業であり世界地図を見ながら働くことができることが一つのやりがいだと思います。

―社会貢献活動
当社ではアジア・アフリカを中心に必要物資を無償で海上輸送したり、貧困に伴う海賊行為が問題とされているソマリアでの国連開発計画の支援プロジェクトにも参加しています。

また本業を通じての活動では、船員研修所を運営し、教育への貢献と同時に世界各地で優秀な船乗りの育成も進めています。

海運はもともと環境に優しい輸送モードですが、業界全体が自主的に統一された国際ルールを策定し環境問題に取り組んでいます。

―塾生ヘのメッセージ
我々は日常的に膨大な量の情報に晒されていますが、時には周りの情報を遮断し自分自身に向き合ってみることが大事だと思います。特に就職活動は自分自身の内なる声に耳を傾け、本当にやりたいことは何かを熟考する良い機会になると思います。大学生活という豊かな時間の中で自身と真摯に向き合い勉強、課外活動でも遊びでも何でも良いので全力を尽くしてください。  (聞き手=坪崎駿悟)