第111代、3つの頂点へ 竹本率いる黒黄軍団 「視界は開けてきている」

竹本の持ち味は恐怖心のないプレー
竹本の持ち味は恐怖心のないプレー

日本ラグビーのルーツ校である慶大。黒黄(こっこう)軍団と呼ばれる彼らの歴史は110年を経た。
 第111代主将に任命された竹本竜太郎(環4)率いる慶大蹴球部が2月から本格始動した。111代にちなみ、トリプルワン(全国大学選手権・関東大学対抗戦A・ジュニア選手権での優勝)を目標として掲げる。
蹴球部の理念

2007年から指揮を執る林雅人監督の下、「ナチュラルラグビー」を提唱し、実践してきた蹴球部。これは、瞬間の判断やひらめきを大切にして、ある種「無心」でプレーするラグビーのことだ。
 ここで言うひらめきは、練習によって裏付けられたひらめきを指す。「試合では普段やっていることしか出来ないので。日吉の練習場でどれだけ出来たかが勝敗を左右する」と竹本は言う。
 新たな要素であるナチュラルラグビーに加えて、「ボールを動かすこと」や、伝統の「魂のタックル(低く鋭いタックル)」が慶大ラグビーの特徴と言える。「目指すのは、どんな所からも攻撃できるラグビー。単純なことだが、その実現のためには寸分の狂いもないパスやタックルなどいろいろな要素を積み重ねて、差を生むしかない」
 そんな慶大の昨シーズンは飛躍の1年となったが、選手権の決勝に進出した帝京大と東海大の両校のFWが誇るパワーに対抗しきれなかった1年でもあった。
 対抗戦Aでは開幕から5連勝し早大とも引き分けるなど優勝まであと一歩と迫ったものの、最終節の帝京大戦に破れ、早大に次ぐ2位。1月2日、選手権の準決勝東海大戦でも接戦の末惜敗した。
 ここで第110代のシーズンは幕を閉じ、今シーズンへと全国制覇の夢は持ち越されたが、FW陣の軸であった旧4年生の重量級PRの2人が引退。懸念材料と見られるこの点について竹本は、「突出した能力を持った先輩方が抜けたことは一番のマイナス。でも、逆に言えば誰にでもチャンスがある」。本音を漏らすも、新戦力の成長への期待感ものぞかせた。
飛躍の予感

今季には大いなる強みもある。エース三木(経4)やラインアウトを仕切る村田(環4)をはじめ、去年のチームの主力が多く残るからだ。今年はさらなる飛躍の1年となるかもしれない。
 「僕が1年生だった頃よりも視界は開けてきている」と語る竹本に、昨シーズン足りなかった何かをどう補うのかを聞くと、「今までやってきたことの精度を上げる。それが出来た時は絶対に勝てるという自信がある。単純なことだけど」と即答。自身はCTBとして多くの試合を経験し、ケガに泣いたこともあった昨シーズン、「やれる」との実感が湧いたようだ。
 「慶大が目指し実践している『ナチュラルラグビー』は日本が目指さなきゃいけないラグビーだと思っている。帝京大にも東海大にも外国人選手がいたが、本当にそれを言い訳にしたくない。パワーで押し切るのではなく、正確で速いパスを展開するラグビーで日本一になることでそれを体現し、日本全国に慶大ラグビーを見せたい」と悔しさの中に秘めた闘志をさらけ出した。
 「主将として、プレーや姿勢で示すのは当たり前。でも、僕は背中で語るタイプというよりはコミュニケーションを大切にするタイプ」。魂のタックルの象徴的存在であると同時に、グラウンドでは特に声を出すという竹本らしい主将像だ。
 公式戦は9月の対抗戦で幕を開ける。「勝つことが全て。そのためなら何でもする。どんな状況になっても全力を尽くせるように、仲間を鼓舞していきたい。見に来てくれた方には、僕たちの何かを伝えるプレーを肌で感じてほしい」
 黒黄ジャージの戦士達が、3つの頂点に向けて加速する。
(井上史隆・劉広耀)

 

 

編集後記…

 
 
下田のラグビー部宿舎にお邪魔した。部室も兼ねているのだが、そこのテレビでは
慶大のラグビーの試合が流れていた。
 宿舎の食堂でのインタビュー。食堂もトイレもきれいだった。
 昨年の6月に膝のケガをした竹本主将だが、最後の大会でも膝を痛めて、現在はリハビリ中だ。
 昨シーズン、「竹本のDNAには恐怖心がない」と林監督の口から3回聞いたように、
彼は魂のタックルの体現者である。竹本も、そのプレースタイルが自身のケガの多さに関
係がないことはないと言う。
 しかし、「受け身になっていたら、チームメイトも自分も嫌と感じる。そう考えると、
体を張ったタックルをついしてしまう」と頼もしく語った。
 そんな竹本は昨シーズン途中にSOからCTBへとポジションを移した。今シーズンは
再びSOに戻るそうだ。また、昨シーズンはSOだった和田拓(法4)はFBをつとめる
予定だ。
 話は変わるが、慶大のラグビーをサッカーに例えると、正確なパスで崩すスペイン代表
に似ている。プレミアリーグのフィジカル重視のサッカーは、言ってみれば帝京大や東海
大のラグビーと言えるだろうか。
 最近の世界のサッカー界では、フィジカル重視のスタイルが隆盛を極めてきた。しかし、
EURO2008でスペインが優勝。さらに昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグでは、
パスや連携が持ち味のバルセロナがトロフィーを手にした。
 「柔よく剛を制す」。慶大蹴球部が極めた「柔」が、同じく極められた「剛」を破る瞬
間が待ち遠しい。