CDアルバムデビュー

文学部2年、伊藤証さん

「今みたいになるとは思わなかった」
今年1月にファーストアルバムを発売したSilber Style。文学部2年の伊藤証さんが属するバンドだ。
中学3年のある日、「なんか楽しいことないかな」というリーダーの一声でバンド結成。
とりわけ音楽に精通している訳でなく、楽器をちょっとかじった経験がある程度。それでもバンド活動を支えてきたのは、自分の中にある想いを歌で表現することへの確固たるこだわりだった。
「誰かのコピーとかではなく、自分たちの中にある想いを伝えたい」
「プロと比べれば、完成度は確実に負けるけど、『楽曲の良さ』は負けたくない」
あくまでオリジナル曲に徹し、プロの曲とはまた違う良さを活かす。
高校生活を送りながら「自分達の想いを一番伝えられる場所」と語るライブ活動に勤しんだ。今思えば「カスカスな音」に「パッとしないジャケット」の自作デモCD。手探りながら奮闘する姿は、あるインディーズ支援関係者の目に留まる。
「名古屋の高校生バンドならお前らだろう」
ファーストシングル発売の話が持ち上がり、2007年にCDデビュー。
だがその一方で、進路決定を目前に控え、今後の方向性に迷いが生じた。

「打ち込めることを見つけてほしい」

東京の大学進学を希望する自分と地元で就職希望のメンバー達。物理的な面から、皆で活動していく事の難しさを感じ、バンド解散を決定する。
そして解散から2年の歳月が過ぎようとしていた頃、メンバー各々に込み上げていたのはある強い想いだった。
「何か形に残したい」
解散前には、プロになることへの思い入れが強かったが、解散後に想うのは、「プロじゃなくてもいい。単純に自分達の想いを形に出来ればそれで十分」という気持ち。バンド復活を目指すというより「心の中の想いを形にする」が為に、未だレコーディングしていなかった曲を形にし始める。
するとその最中、あるインディーズレーベルからアルバム発売の話を受け、今年1月5日にアルバムを発売。これを機にバンドは復活を遂げ、今に至る。
「現実的に生きることは大切だけど、だからといって現実に縛られるのでなく、夢みること、打ち込めることを見つけてほしい」受験生に対するメッセージである。
学業とバンド活動。二足のわらじをまっとうする難しさはあるが、それは自分にとって大切な事への執念で覆されてしまう。そんな強い想いが伊藤さんから感じられる。
(曽塚円)