原因は人それぞれ

「自律訓練法」が有効

いよいよ慶大にも受験シーズンが到来した。試験を前に緊張しながらこの新聞を読んでいる人も多いかもしれない。受験生に限らず、私たちにとって身近な存在である緊張に迫った。
慶大保健管理センター精神科の西村由貴准教授は、「緊張の原因はバックグラウンドによって人それぞれ異なる」と言う。とはいえ、この時期少しでも緊張を和らげる一つの方法として「自律訓練法」がある。
緊張時には自律神経の作用によってアドレナリンが分泌され、心拍数の増加などの生態反応が起こる。人によっては呼吸が速くなり、酸素の取り込み過ぎによって頭がまっ白になることもある。自律訓練法は、そういった状況に陥る前に自律神経機能を整える一種の瞑想に似た方法だ。
まず「気持ちが落ち着いている」と唱えながら、リラックスできるイメージを頭の中に描く。それができたら「右手が重たい→左手→両手、右足→左足→両足、両手両足」を順に行っていく。初歩は重感覚で止め、繰り返し練習する。こういった一連のリラクゼーションイメージを普段から身につけておくと、いざ緊張しそうな時にも、いつものイメージから自分自身を落ち着かせることができる。
西村准教授によると「普通、大抵の人は結局どうやって緊張を克服していくかというと、経験による学習の力が大きい」とのことである。例えば受験生なら何回も模試を受けるだろうし、就職活動生なら本命の会社の面接の前に練習として別の会社も多く受けるだろう。状況に慣れていくと共に不安感が薄れ、繰り返し経験を積むこと自体が緊張に対する自己トレーニングになるという。
一方で、「緊張=悪影響」と決めつけてしまうのも考えものだ。「適度な緊張ならば脳に酸素が行き渡り活性化するということになる。リラックスしすぎて緊張感まで失ってしまうと、かえって力が出せないこともある」と西村准教授は言う。実際にプロのスポーツ選手や俳優などには、緊張しながらも周りに見られることによって自分を高めていく人も多い。緊張を一概に悪いものと思い込まず、自分を高めるものとして肯定的にとらえることも大切なのだ。
受験生の皆さんが緊張と上手に付き合い、実力を発揮できることを心より祈っている。
(陶川紗貴子)