プライベートな空間も充実

毎年、全国各地から集まる慶大の新入生には、自宅を離れて一人暮らしをする人も多い。学生や保護者の不安軽減のため、大学側はいくつかの宿舎を提供している。その一つが大森学生寮である。この寮は慶大が提携する塾生専用の寮であり、去年の4月にオープンしたばかり。ワンルームタイプのアパートやマンションが主流となる中で、時代と共に学生寮の様子が変わってきている。
JR蒲田駅から徒歩15分の所に大森学生寮はある。現在、約90名の塾生が入寮している。その内、留学生は20名にも及び、計10ヵ国出身の塾生が共同生活している。寮長の南條豊さんが寮内を案内してくれた。
南條さんは「食堂や談話室、ミニキッチンなどの共有スペースが充実し、コミュニケーションの場となっています」と話す。みんなが気持ち良く利用するために「使用前の状態に戻すこと」が規則だそうだ。また、全室個室となっているので、プライベートな空間も確保されている。「インターネットも利用可能で、すべての個室に避難経路が設置されています」と利便性や安全性にも南條さんは自信を持つ。

共同生活で視野・見聞を広める

大森学生寮で生活する小川達也さん(政1)は「入寮者の全員が塾生なので情報交換ができ、とても助かっています。寮の友達といる時間が長いので、一つのサークルみたいです」と話す。小川さんは寮内の留学生をサポートするレジデント・アシスタントに任命されている。日本語の読めない留学生のために英語で掲示を書いたり、奈良や京都へ一緒に旅行したりと様々な活動をしているそうだ。
また、田村優吉さん(政1)はこの寮に決めた理由について「食事の面を考慮して、学生寮を選択しました。一人で健康的な食生活を送るのは大変だと思います」と言う。
現在、学生マンションと呼ばれる住宅が登場し、その中でも大学生同士の交流が可能となっている。学生マンションと学生寮の相違点について、大森学生寮を運営する共立メンテナンス社の伊藤進一さんは「学生寮では、寮長夫妻が住みこみで常駐していることと朝夕の食事提供しているのが強みです。また、大学からの要望もあり、寮では多くの留学生が生活しているので、国際交流の場としても機能しています」と説明する。
取材中、食堂では自然に日本語と英語が行き交っていることに驚いた。従来の学生寮は、国際色豊かな「交流寮」へと進化している。
(横山太一)