[東京六大学野球レポート]東大戦・「勝って当たり前」の中で

10月3日 慶大18-0東大 ○
10月4日 慶大5-0東大 ○

前週の法大戦に連勝し、優勝への望みを繋いだ慶大。今週は取りこぼしが許されない東大戦。とはいえ、開幕戦で法大相手に延長戦まで持ち込むなど、4連敗はしているが僅差の試合が多く、決して侮れない相手だ。慶大は昨年の秋季リーグ戦で不覚を取っているだけに一抹の不安はあったが、結果は2試合とも完勝。点差もさることながら、チームの状態の良さを見せつける内容であった。

ベンチ入り全員で完封した投手陣
今��初登板した居村裕平
今季初登板した居村裕平

打っては23得点、守っては18イニング無失点と投打に圧倒した2試合であったが、まずは投手陣から振り返ってみる。
1戦目はエース・中林伸陽(4年)が先発。序盤から大量の援護を受けたということもあり、力を抜いたフォームからキレのある直球を投げ込み、7回で14の三振を奪う完璧な投球を披露して自己最高のシーズン4勝目。残りの2イニングは村山雄紀(4年)。最終回は無死満塁のピンチを招いたが、連続三振と一塁ファールフライで試合を締めた。
2戦目は今季初登板の4年生右腕・居村裕平が先発。居村は大きく落ちるカーブを有効に使う緩急をつけた投球で3回を無失点に抑える。ところが4回、1死から3番・鬼原に初安打を許すと続く内海には四球。一、二塁としたところで相場監督はすかさず村山に交代。早くも継投策に出た。村山はこのピンチを併殺打で断ち、次のイニングを三者凡退に抑える。3点を先制した直後の6回からは松尾拓実(4年)、7回と8回は福谷浩司(1年)、最終回は小室潤平(4年)と5投手を継ぎこみ完封した。
2試合でベンチ入りした6投手全員が登板して無失点と、それぞれが役割を果たした。法大戦の後、先発で連投ということもあって途中でマウンドを譲った中林が「先発する以上は完投したいですけど、他のピッチャーもみんな調子がいいので安心して任せられる」、捕手の長崎正弥(3年)が東大戦を終えて「ピッチャーはよく仕上がっている。今のところ不安はない」と話していたが、この試合の継投はそれを証明したと言っていい。

野手陣は先発全員に当たり
2試合ともに2安打、完封に導く好リード。攻守に活躍した長崎��弥
2試合ともに2安打、完封に導く好リード。攻守に活躍した長崎正弥

一方、野手も不調の選手が見当たらないほどの調子を維持している。
1戦目は2回、湯本達司(3年)からの3連打をきっかけに打者11人で5得点。4回までに8-0として大勢を決する。しかし、ここで攻撃の手を緩めず6回、9回にも打者を一巡させ、5点ずつ奪った。先発した全員が安打を放ち、合計20安打。伊藤隼太(2年)が5つの四球を選ぶなど、11四死球と好球必打に徹する文句のつけようのない攻撃だった。
大勝した次の試合は粗い打撃になりがちだとよく言われ、結果的には5得点であるから2戦目は大振りが目立ったのではないかと思われるかもしれない。だが、実際に慶大の打撃を見て、そのようなものは全く感じなかった。
アウトになったものの、左右どちらかに少しでもずれていればタイムリーになる不運な打球が多くあり、スコアとしては点差がつかなかったが、1戦目と変わらず、慶大の選手は鋭い当たりを連発していた。喫した三振もわずか2つ、手元の集計では東大投手陣に投げさせた104球のうち、空振りもたったの6球しかない(1戦目は197球のうち9球、慶大投手陣が奪った空振りは、1戦目は130球で20球、2戦目は104球で15球)。大振りせず、狙い球を絞った打撃が出来ているといえるだろう。

2試合とも快勝しただけあって試合後の選手たちの表情は一様に明るかった。特に、普段は淡々と取材に応じる漆畑哲也主将(4年)にこの2試合のインタビューでは笑顔が見られたのが印象的だった。その中で漆畑は「打線が好調なのでピッチャーのいい刺激になれば」と話した。長崎、伊藤は「(次の明治戦まで)1週間空くので今週の調子が維持できるか」を明大戦のポイントに挙げた。東大戦が終わってから明大戦まで、それから最後の早大戦までとそれぞれ10日以上の間隔がある。現在、ほぼ全員が好調であるだけに、最も恐れなければならないのは、調子の波が揃って下がることだ。後で振り返ってこのチームのピークは東大戦だったということがないよう、調整が上手くいくことを祈るのみである。

文:湯浅寛
写真:湯浅寛、岩佐友
取材:湯浅寛、岩佐友、飯田拓也、御園生成一